跳からデミオへ。

セグメントBでは選べなかったものが,選べるようになる。


 欧州市場であれば,ごく当然に選ぶことのできる組み合わせ,でありますが,日本市場ではなかなか選ぶことができなかった,そんな組み合わせです。2000ccよりも大きな排気量であればすでに導入されていますし,急速に日本市場での存在感を高めている,という印象もあります。BMWが展開する,積極的なプロモーションも大きな要素でありましょう。けれど,2000cc以下の排気量,となると導入へと踏み込まない可能性も高いのではないか,という観測があったのも確かです。そんな小排気量の領域に,マツダは踏み込んできました。欧州における販売戦略,という部分を考えると,現状において有力なパートナーを欧州に持っていないマツダとして,小排気量ディーゼルを自社開発する必要性に迫られていた,という事情もあるかも知れませんが,経済紙的な見方はさておき,ガソリン・エンジンを搭載するクルマとは違う魅力を持つセグメントBが実際に選べるようになる,というのが最も大きな意味であるように思うのです。


 冒頭からまとめにかかったようなことを書いておりますが,今回はフットボールを離れまして,こちらの記事をもとに,新型デミオについて書いていこう,と思います。



 さて。まずはデザイン面の話からはじめよう,と思います。端的に書けば,「マツダとしての個性」が着実に浸透してきているな,という印象であります。と,ここでディテールな話,ではなくて,経済紙的な見方もしつつデザインの話をしてみよう,と思います。


 OE供給を外してみると,セグメントB,CとセグメントDにそれぞれ商品を持ち,スポーツカーも展開する。マツダの商品展開でありますが,欧州メーカにも似たような商品展開をしていたメーカがあることにお気付きでしょうか。ちょっと前までのBMW,であります。となると,マツダがどのような位置取りをすべきか,マーケットでのBMWのポジショニングから推理できるように思うのです。と同時に,これまでのマツダに何が決定的に欠けていたのか,ということも。


 ちょっとばかり歴史の針を巻き戻してみましょう。欧州市場で,マツダの評価は決して低くはなかった,と言いますか,かなりの高評価を得ていた車種もあったように記憶しています。いますが,デザイン面から振り返ってみると,マツダの個性とは何だろうか,と疑問が残るのもまた確かであるように思うのです。かつてのマツダの主力車種であるファミリアであったり欧州で高評価を得ていたカペラ,当時としてはなかなかにエレガントなデザインを採用していたコスモ,これらの車種に共通する,マツダとしてのデザイン要素が落とし込まれていたか,というと,決して落とし込まれていたとは言えない。むしろ,「無色透明」な印象を受けていたように思います。すべての商品を貫く,デザイン面での「軸」がなかった状態が継続していたように思えるのです。この「軸」が「魂動」であり,導入初期と比較すると,よりメッセージの落とし込み方が洗練されてきた(主張すべき部分をしっかりと主張してくるようになった)ように感じられます。加えて書くと,先代デミオのデザイン要素を「魂動」に織り込んできているように感じます。ロードスターにも同じような印象を受けるのですが,「魂動」だけにこだわるのではなくて,これまでの歴史をどこかに感じさせるデザイン要素を落とし込み,継続性を表現しようともしている。なかなかいいデザインのまとめ方なのではないかな,と思うのです。


 で,個人的に最も注目している,小排気量ディーゼルであります。



 個人的には,小排気量ディーゼルの魅力を引き出す大きな鍵は,ギアボックスにあると思っています。この記事をまとめたエディターさんによると,新型デミオディーゼル・モデル)に用意されるギアボックスは,6段マニュアル・トランスミッションと同じく6段オートマチック・トランスミッションである,とのことです。この,多段化されたギアボックスが,ディーゼルを「らしく(スポーティに,と言い換えることもできると思います。)」走らせるための大きな要素となっている,と思うわけです。このエンジンの最高出力を見ると,77kW(105ps)/4000rpm,最大トルクは220Nm(22.4kgm)/1400〜3200rpm,とのことです。この数字のうち,4000ではなくて,1400〜3200,という数字がディーゼルをスポーティに走らせるための大きな要素だ,と思うのです。トルクバンドを外さずにエンジンを動かすことができれば,ディーゼルが苦手とする(のみならず,ネガティブが明確になりやすい)高回転域までエンジンを回すことなく,クルマを高い速度域にまで持っていくことができる,はずです。となると,このトルクバンドを最大限に生かすためのギアリングが必要になってくるはずです。多段化されたギアボックスは,これまでなかなか小排気量車に設定されることはありませんでしたが,この設定によって,小排気量ディーゼルを投入するための条件が整った,とも言えるように思うわけです。


 最後に,この1500cc・ディーゼルターボはデミオ以外の車種にも展開される,とのアナウンスがあったようです。ひょっとすればアクセラに搭載されて,ディーゼルのラインアップが拡充される,かも知れませんし,個人的な期待を込めてマツダさんへのリクエストをさせてもらえば,ライトSUV的なセグメントC,あるいはセグメントBも用意してもらえると,さらにマツダの欧州車メーカ化が明確になるのかな,などと思います。

対広島戦(14−QF#2)。

準決勝への指定席切符を獲り逃した要因。


 端的に指摘すれば,アウェイゴールでありますが,その背後にあるものがチームにとって大きな課題であるように感じます。後半立ち上がり直後の時間帯での失点,という部分から見るならば,昨季にあっては明確に見て取ることのできた課題,今季にあってもちょっと見え隠れする課題との共通性を感じますし,1−0と試合を動かした直後の失点にしても,一定程度の共通項を見て取ることができるように思うわけです。


 中野田での準々決勝第2戦,であります。試合内容に踏み込んで,というよりも試合の鍵かな,と思う部分に焦点を絞って思うところを書いていこう,と思います。


 準々決勝第1戦の結果を受けて,第2戦を戦うにあたってチームに課せられた課題はシンプルなものでした。「第2戦を制する」こと,です。でありますが,このカップ戦の特性を思えば単純に攻撃的な姿勢を強めること「だけ」が求められている,とは言えないはずです。“アウェイゴール”の存在です。第1戦,確かに無失点で折り返すことができていますが,反面でアウェイゴールを奪えていないのも事実です。相手にプレッシャーを掛け与え,相手が狙ってくるだろう戦い方,その自由を奪うためのゴールが奪えていない。このことで,第2戦の戦い方は「バランス感覚」が必要になった,とも言えるはずです。攻撃的に試合を動かし,先制点を奪っていくことが重要なのは当然として,相手の攻撃をどのようにして抑え込むか,という部分にも意識をしっかりと振り向ける必要がある,とも言えるように思うわけです。


 その意味で,先制点を奪うまでの戦い方は決して悪いものではなかった,と思っています。


 一定程度,攻撃面にウェイトを傾けるためにリスクを背負いつつ,同時に相手の攻撃に対しての意識を失ってはいない。このバランスが,先制点を奪った直後の時間帯は崩れてしまったように感じます。追加点を奪いに行くためにギアを上げる,という印象でもないし,守備応対面での安定性を重視し,ポゼッションへの意識を引き上げるためのギアを入れる,という印象でもない。どのギアにチームとしてシフトしたのか,曖昧な時間帯になってしまって,試合をグリップするチカラが相当程度に落ちてしまった(ギア,という言葉を使うならば,ギア抜けを起こして駆動力が伝わらなくなった)ような印象を受けるのです。結果として,ファースト・ディフェンスの緩さであったり,ファースト・ディフェンスが機能しないことで相手の攻撃をディレイさせ,ブロックを引き直すための時間が不足する,加えてポジショニング面での問題を引き起こすなど,戦術的な課題を連鎖的に露呈し,相手にアウェイゴールを奪われる結果となった。


 加えて,後半開始直後の時間帯,です。


 この時間帯は,昨季において大きな課題となっていた時間帯ですし,今季にあっても潜在的には課題となっているように感じられる時間帯です。この時間帯を,この試合では潰すことができなかった。


 個人的に思うこと,ですが,試合のリズムに「波」を意図的につくってほしい,その波にしっかりとした落差を用意してほしい,と思います。たとえば,攻撃面へとギアチェンジをする,だけでなく,守備応対面でポゼッションを生かし,チームとしてのコンディションを整える時間帯として位置付けるのであれば,もっと明確に守備応対面へと軸足を置く必要があるはずですし,そのためのイメージを束ね直す必要があるはずです。戦い方の根幹を攻撃面に置く,という「軸」は重要ですし,この軸を揺るがす必要などないと思っています。いますが,もっと戦い方に「落差」がほしい。フォルカーさん時代の浦和にも感じた(そして,エントリにも書いた)ことですが,ハイビートのリズムだけに頼っているように感じられます。もともとのリズムがハイビートなのに,攻撃面でのギアアップだけを意識し,さらにビートを引き上げようととすれば,戦い方をそれまでの時間帯でグリップしていたとしても,いつしか戦い方のグリップを自分たちから手放すことになりかねない。機動性をより強く相手に印象づける,必要な時間帯にしっかりと機動力を表現するための落差,リズムのコントロールであったりテンポのコントロール,という要素にも意識を振り向けてほしい。


 相手に膝を屈する形で準決勝への切符を落としたわけではないのだから,戦い方の軸そのもの,ではなくてディテールな要素の話,ではあります。けれど,浦和が狙う戦い方をより強く相手へと印象付け,相手を狙う戦い方へと嵌め込み,グリップするためのディテールである,と思っています。それだけに,攻撃面でのギアだけでなく,守備応対面でのギア,あるいは試合を自分たちのリズムでコントロールするためのギアをどのようにして用意し,浦和が狙う戦い方へと組み込むか。ディテールではあるにせよ,重要なディテールについての課題が,ナビスコカップ準々決勝では提示されたものと思います。

対広島戦(14−QF#1)。

相手からすれば,先手を取りたかったはずです。


 ちょっとだけ,相手目線で第1戦の戦い方を推理すれば,第1戦で優位に立つ,という意識を持っていたのではないか,と考えています。第2戦の中野田で,自分たちはなかなか狙う戦い方を表現できていない。のみならず,なかなか結果を引き出すことができていない。それだけに,第1戦で心理的な優位性を構築しておきたい。ゴールを奪い,第2戦において浦和が攻撃的に仕掛けて来ざるを得ない,そんな状況を構築したい,という意識を強く持っていたのではないか,と思うわけです。そんな意識が表現されていたのが,守備応対での仕掛け方のシフトではなかったか,と思うのですが,相手が狙う形に陥ることがなかったのは,ポジティブに捉えていいはずです。確かにアウェイ・ゴールを奪うことができなかったという意味で,理想的な第1戦とは言えないですが,「悪いなり」の戦い方ができたこと,相手に戦い方のフリーハンドを与えることがなかった(ゴールを許し,第2戦において攻撃的に出ざるを得ない状況に追い込まれることがなかった)ことはポジティブに捉えてもいいのではないかな,と思うわけです。


 いつものように1日遅れ,のアウェイな準々決勝第1戦,広島戦であります。今回は短めに思うところを書いておこう,と思います。


 さて。この試合での対戦相手は,「引いて構える」守備応対ではなくて,自分たちから積極的にボールを「奪いに行く」守備応対へと意識を切り替えてきていたように思います。中野田での前回対戦時を思えば,この試合で対戦相手が表現してきた守備応対は,浦和としても「望むところ」ではなかったか,と思うのですが,実際には相手が仕掛ける守備応対に対して後手を踏まされていたように受け取れます。チームとしてのコンディション,と言いますか,(フィジカル面,メンタル面を含めての)スターターのフィットネスが100%から遠い状態にあった,ということも作用しているように思うのですが,自分たちが狙う戦い方に相手を嵌め込むのではなく,むしろ相手が狙う戦い方に嵌り込み,相手のリズムから抜け出すことができなかったように感じます。


 攻撃面でリズムをなかなか取り戻せない(つかめない)なりに,守備応対面での安定性を失わないように意識する。


 勝ち点を積み上げることが最優先項目であるリーグ戦とは違って,カップ戦は「勝ち上がること」そのものが最優先項目です。最小得点差であろうが,最優先項目をクリアすることが求められるわけです。その意味で,守備応対面での安定性は,攻撃面と並んで重要な要素となってくるはずです。この試合を見る限り,守備応対面では求められる要素をしっかりとチームは表現してくれたのではないか,と思います。第2戦,ゴールを奪った方が準決勝への指定席切符をつかむ,という意味では「すべきこと」は明確,かつシンプルですが,攻撃面「だけ」に意識が強く傾き過ぎてしまえば,相手が狙う形へと嵌り込みかねない,とも言えるはずです。冷静に,相手が見せた「隙」を冷静に突いてゴールを奪う。最小得点差であろうと,最少得点での勝利であろうと,切符がつかめるならば効果は同じ,というような心理面での「余裕(いい意味での)」が第2戦の鍵になるのかな,と見ています。

対大宮戦(14−22)。

どのように試合を動かすか。


 自分たちが狙う戦い方にしっかりと軸足を乗せ,具体的なイメージを描き出すことができているチームと,自分たちの戦い方をなかなか明確なものとすることができず,曖昧なイメージしか描き出すことができなかったチームと。


 厳しい書き方ですが,今節のファイナル・スコアは2つのチームがどれだけしっかりとした「準備」をできているのか,基盤の構築に始まり,戦術的な熟成,これまでの実戦で明確なものとなった課題にしっかりと向き合い,解決策を見出して新たな実戦に臨めているか,などという要素を浮き彫りにするものではなかったか,と思うのです。


 お休みをいただく前にはごあいさつを,と書いておきながら,ごあいさつをすることもなく長いお休みをいただくことになってしまいました。予想外の繁忙期到来に対して対応しきれない,店主の処理能力の低さが主因でございまして,申し訳ありません。さらに,やっと再始動できる環境になってきたにもかかわらず相変わらずの遅筆堂状態で,こちらについても申し訳ありません,な大宮戦であります。


 さて。今回は敢えて対戦相手の戦い方を考えるところからはじめてみよう,と思います。


 今節の対戦相手は,「浦和の強みを徹底して抑え込む」ための戦術的な調整を施し,徹底してくる,というアプローチをこれまでの対戦ではしてきていたように思います。自分たちが狙う戦い方,という方向性から戦い方を組み立てるのではなくて,浦和の持つ強みを抑え込む,という方向性から戦い方を組み立てる。であれば,浦和に対してフルコート・マンマークを仕掛け続ける(1on1での勝負に持ち込むことで,浦和の攻撃面での連動性、機動性を断ち切る,という判断でしょう。)など,徹底した戦い方を見せてきたように思うわけです。というような過去の戦い方を思えば,恐らく今節にあっても「浦和対策」を明確に押し出してくるのではないか,と見ていたのですが,今節の対戦相手は,「徹底度が低い」印象が残っています。


 端的に書いてしまえば,ひとつの戦術的なイメージを共有することができていないように映るのです。


 たとえば,ボールをどのエリアで奪いに行くのか,というイメージがチームで束ねきれていないように受け取れます。攻撃ユニットは高いエリアから浦和に対してプレッシャーを掛け与えていきたい,という意識をどこかに持っている(トランジションフットボール的なイメージを描いている)ように感じられる反面で,守備ブロック方向から戦い方を眺めてみると,浦和の攻撃ユニットに対してセントラル・ミッドフィールドが最終ラインに下がって守備応対をする,というイメージを持っているように受け取れるのです。となれば,マンマークがどの程度徹底されているのだろうか,と見てみても,アウトサイドから見る限り,必ずしも明確な約束事が落とし込まれているようには感じられませんでした。エリアにかかわらず,ストリクト・マンマークを仕掛ける,というわけでもないように感じられるのですが,であればどのようにしてマークを受け渡すのか,という部分が明確に表現されているわけでもない。ひとを掛けて守備応対を仕掛けている,ようには感じられるのだけれど,実際には約束事がかなり脆弱な状態、厳しく書いてしまえば軸足を置くべき場所,微調整を施すための基礎となるはずの戦術的な約束事が抜け落ちているように映るのです。


 このことを浦和目線で見ると,(中途半端な形にとどまっていたとしても)相手がストリクト・マンマークを仕掛けてきたことが,浦和の機動力を引き出す要因になったように感じます。相手が連動性を強く意識したストリクト・マンマークを仕掛けていないがために,ポジション・チェンジを仕掛けて相手マーカーを引っ張り出す,という動きが攻撃面を機能させるにあたって大きな鍵となったように思うわけです。また今節は,サイドでの主導権を早い時間帯で掌握し、攻撃面でのポイントとすることができていました。先制点を奪った時間帯で見ると,決して早めの時間帯とは言えませんが,攻撃面で浦和がどのようなイメージを描いているのか,相手に対してどのような攻略法を意識しているのか,という部分は立ち上がりの時間帯から相当程度に描き出すことができていたように感じます。ここ数節を振り返るに,先制点を奪ってからの戦い方が課題となっていたように思うのですが,今節は先制点を奪ってから時間を置くことなく,追加点を奪うことができています。相手が見せた明確な隙,トランジットのルーズさを的確に突き,縦に鋭い攻撃を仕掛けゴールを奪う,という形を描き出せている。トランジットのルーズさを突く,という意味で見れば,60分の宇賀神選手のゴールへと結びついた,興梠選手の仕掛けも同じ文脈で説明できるはずです。


 と,攻撃面では描き出すべき要素をしっかりと描き出せていた,と思いますが,守備応対面では課題となる要素も見えていたように感じます。相手に押し込まれた時間帯,守備ブロックが最終ラインを高めにセットし直そう(ラインを引き上げて,相手がボールを収める位置をゴールから遠い位置へと押し返そう)という意識は確かに受け取れるのですが,この時間帯の守備応対が「逆襲を仕掛ける」ための守備応対ではなくて,相手の攻撃を跳ね返す,という守備応対にとどまってしまったことがもったいないように思うのです。ポジショニング・バランスをちょっと見直す(たとえば,パスを引き出すべく,ボールホルダーの視界に入るためのワンアクションを織り込む),であるとか,パス・レンジ(距離感)の微調整を施す,など「微調整」の範疇に入る課題かな,と思いますが,的確に潰しておくべき要素でもあるように感じるところです。


 さてさて。チーム・コンディションを思えば「勝ち点3」を奪うべき相手に対し,しっかりと勝ち点3を奪い,積み上げることができたことは大きな収穫だろう,と思います。また,ある程度差し引くべき部分はあるとしても,浦和対策を描き出してきた相手に対して明確な対処法を示せたこと(攻撃面での解を示したこと)も大きな要素ではないか,と思います。今節の勝ち点3を,ナビスコカップの2連戦,そしてリーグ戦へと結びつけていってほしい,と思います。

対鹿島戦(14−17)。

立ち上がりの時間帯から感じられた,ちょっとした違和感。


 と言っても,浦和から違和感を感じた,というのではなくて,対戦相手から感じたものです。自分たちの持っている強みを表現するために,相手の持っている強みをどう抑え込み,相手を自分たちが狙う戦い方へと引き込んでいくか。なかなか,かつての対戦相手からは感じることのできなかった方法論を,今節はごく立ち上がりの時間帯から感じられたように思うのです。


 相変わらずの遅筆堂で申し訳ありません,と言いますか,超低空飛行状態な更新頻度を継続させてしまっておりまして,こちらも含めまして申し訳ない限りです,の鹿島戦であります。のちほどしっかりと業務連絡,と言いますか,ごあいさつを,と思いますが,更新に向けた時間がいささか不足しておりますので,ちょっとばかりお休みをいただこうかな,と思っております。


 それはまた別の話として,今回はまず,相手の戦い方をチェックするところから話をはじめてみよう,と思います。


 立ち上がりの時間帯,相手は浦和のビルドアップ初期段階,つまりは高い位置からボール奪取を狙ったアプローチを積極的に仕掛ける,という姿勢を見せてはいなかったように思います。むしろ,パッケージとしてのバランスに意識を傾けた立ち上がりをしてきている,と受け取れたのです。また,守備ブロックに意識を振り向けて相手の戦い方を見てみると,かなり緻密な「浦和対策」を組み立てていたように感じます。相手の基本的なパッケージは4−4−2,中盤の構成で見るとボックスとウィングとの中間形態なパッケージであるように思います。「基本的には」このパッケージを維持しているのですが,浦和が攻撃を仕掛けてきている局面ではこのパッケージに微調整を施していました。浦和のアタッキング・ミッドフィールド(つまりは,柏木選手であり,梅崎選手でありますが。)があるエリアよりも深いエリアへと入り込むと,相手のセントラル・ミッドフィールドがマークに付いてきます。あるエリアから,ゾーンを意識した守備応対からひとに付く守備応対へと切り替えていく,というわけです。


 この相手の守備応対面での戦い方が,今節の鍵のひとつであったように感じます。


 ビルドアップ初期段階であったり,攻撃リズムを引き上げる前段階までを考えるならば,今節は一定程度,浦和が狙う戦い方を表現できていたものと思います。たとえば,アタッキング・ミッドフィールドの一方が高い位置を取り,もう一方がちょっとだけ低めの位置を取っている局面をイメージすると,センターでの主導権を掌握しやすい形ができるわけです。反面で,中盤から攻撃リズムを引き上げる,という段階からフィニッシュへ,という局面を考えると,相手が仕掛けてきた浦和対策に引っかかる局面が多かったようにも感じます。相手が仕掛けてきた浦和対策,エリア限定のマンマークによって,1トップとアタッキング・ミッドフィールドとの距離感をなかなか浦和が狙う距離感に持ち込むことができず,結果として攻撃リズムを引き上げられない,という循環になっていたように感じるのです。


 このような循環に嵌り込んだときに,どのような対応をするか。


 恐らく昨季は,「ひとを掛ける」という判断へと傾いていたのではないかな,と思います。戦術交代を含めて,攻撃面へとより強くウェイトを傾けることで局面を打開し「勝ち点3」奪取を狙う,という戦い方を選択していたのではないかな,と。攻撃的なフットボールを表現し,勝ち点を積み上げていくという戦い方を指向しているのだから,確かにあり得る選択肢かも知れませんが,反面で相手が狙う戦い方へとより深く嵌り込んでいく,その危険性を孕む戦い方だったことも確かです。今節の相手もある意味,同じような「罠」を用意していたように思いますし,浦和が「ひとを掛けて攻撃を仕掛けてくる」タイミングを狙っていたようにも感じます。実際,後半はカウンターからゴール奪取を狙う,という姿勢がより明確に表現されていたようにも感じます。であれば,戦い方のバランスを攻撃面へと強く傾けるわけにはいかない。守備応対面にも意識を振り向けながら,攻撃面でのアクセントを意識したギアチェンジ,アウトサイドからのギアチェンジを仕掛けていく。今節,ダッグアウトが仕掛けてきた戦術交代には,「縦方向の循環(意図的なポジション・ブレイク)」から相手のマークを外して攻撃面でのギアチェンジを仕掛ける,という意図も含まれていたのかな,と感じます。青木選手の投入,であります。青木選手が仕掛ける,と言いますか,青木選手に限らず,セントラルや最終ラインなど,低めにポジションを取っている選手が仕掛ける積極的なポジション・ブレイクは,相手が仕掛けてくる「浦和対策」に対する処方箋,そのひとつになり得るものではないかな,と感じますし,チームが「意図して」縦方向での循環を仕掛けられるようになると,攻撃面での有力なオプションとなっていくように思います。


 さてさて。試合全体を振り返ってみますに。「勝ち点3」を積み上げることができなかったという意味で“Best”な戦い方の選択ではなかった,という見方も決してアンフェアではないと思うけれど,相手が仕掛けてきた「罠」を的確に理解し,“Better”な戦い方を選択することで「勝ち点1」を着実に積み上げることができた,という見方もまた,必ずしもアンフェアではないように思います。むしろ,この勝ち点1を生かすこと,この試合で見えた課題をチームとしてしっかりとクリアして,再び勝ち点3を積み上げていく循環を作り上げていくことが重要だろう,と思っています。

対新潟戦(14−15)。

相手の強みを抑え込み,自分たちの形へと引き込むための戦術的な微調整を施す。


 この戦術的な微調整に対して,なかなか自分たちが狙う形を表現できなかった対戦相手は戦術的な再調整を施し,リズムを引き戻しにかかる。当然,この戦術的な再調整に対して,リズムを譲り渡さないために戦術的なギアチェンジを仕掛けていく。今節は対戦相手を含めて,指揮官の「知略」を強く感じられる試合ではなかったかな,と思います。


 遅筆堂状態にはまったくもって変化なし(ですので,ほぼ徳島戦のプレビューが相応しいタイミングになってのアップでございます。)で申し訳ございません,な新潟戦であります。


 さて。今節を前半と後半とで大きく2分割してみますに。立ち上がり早い時間帯に,興梠選手が負傷によって交代を余儀なくされた(コンディションが厳しい夏場の連戦,その初戦であること,加えてピッチ・コンディションがスリッピーな状態になっていることなどを考慮して,無理をさせずに早めに交代させたものと理解しています。)こと,また,興梠選手に代わって1トップの位置に入った忠成選手がトップ・フォームにはちょっとばかり距離がある状態だったことは大きな要素だったように感じます。厳しい体勢からであってもボールを収め,攻撃がギアチェンジを仕掛けていくための「タメ」をつくり,チームとしての攻撃リズムをコントロールする,という側面からも重要な役割を果たしているフットボーラーが抜けてしまったことで,縦へボールを繰り出して攻撃面でのギアチェンジを仕掛けるにしても,そのギアチェンジが必ずしもスムーズに行かなくなってしまった,という部分があるように思うのです。


 しかしながら,ビルドアップ面では相手の戦い方へと対応しての「戦術的な微調整」がしっかりと表現されていたように感じますし,リズムを掌握できていたようにも感じます。ここまでの戦い方を振り返るに,守備応対から攻撃へのトランジットではセントラル・ミッドフィールド,そのどちらかが最終ラインへと入っていく,というのが約束事になっていたように思います。3が4へと変化するようなパッケージの変化,であります。対して今節は3から4,だけでなく3から3という形も表現していたように感じます。セントラル・ミッドフィールドのどちらかが最終ラインに下がるのではなく,セントラル・ミッドフィールドと3のセンターで3を構成して,低い位置(相手にとっては,積極的にプレッシャーを掛け与えていきたい高いエリア)での数的優位を構築する,という意図を表現していたように思います。この戦術的な微調整によって,ベースのリズムが安定した,という印象があります。


 続いて後半であります。後半立ち上がりからゲーム・クロックが60:00前後を示すまでの時間帯が「危険な時間帯」だったように思いますが,今節にあっては決して相手にリズムを取られるような立ち上がりをしてはいなかった,ようには感じます。しかしながら,相手に主導権を掌握される局面が着実に増えてきた。ちょっとだけ対戦相手の狙いを推理してみると,前半の戦い方をもとに,相手指揮官は中盤での戦い方の再調整を意識したのではないか,と考えています。セントラルが1枚だけ最終ラインへと落ちるのではなく,2枚がともに落ちて3を維持するのであれば,中盤での機動性を引き上げることで中盤での主導権を奪い,リズムを浦和から引き戻すだけでなく,主導権を掌握できるのではないか,と。この戦術的な再調整に対して,浦和はちょっと後手を踏む部分があったように感じます。ボールをどの位置で奪うのか,という意識が(相対的に,ですが)曖昧になってしまったように感じますし,チームとしてのバランスも後傾気味になってしまったように感じます。加えて,縦をシンプルに相手に攻略される,そんな局面を作り出してしまった。というように,決してリズムを掌握しているとはいいがたい時間帯が後半は多かったように思うのですが,そんな時間帯を踏みとどまることができた。また,戦術交代によってセントラルを3枚にすることでボールをどのエリアで奪うか,ということを明確にしたことも鍵となったように思います。


 相手の強みを的確に抑え込み,相手を自分たちが狙う戦い方へと引き込む。引き込んだ相手を離すことなく,主導権を掌握した状態で試合を動かしていく。というような戦い方からはかなりの距離がある,そんな試合だったのは確かですが,そんな試合であっても着実に勝ち点を積み上げることができたこと,それも「勝ち点3」を積み上げられたことは大きな意味がある,と思っています。ある意味,「らしさ」を封じられる,そんな時間帯が長い試合でどれだけ勝ち点を積み上げられるか,が頂点への距離を着実に詰めていくために必要な要素だろう,と思うのです。当然ながら,課題は複数指摘できるかな,とは思いますが,収穫面もあったのが今節ではなかろうか,と思っています。

対浦安SC戦(2回戦)。

主戦場が異なるチームとの対戦は,やはり難しい。


 たとえば,立ち上がりの時間帯を取り出してみても,あるいは失点を喫した局面を含めた複数の局面を取り出してみても,実感できるのではないかな,と思います。浦和の強みを徹底的に抑え込む,そのためにスカウティングするのではなく,自分たちの狙うフットボールへ浦和を引き込むためにどのような方法論が必要なのか,という方向からスカウティングしてきただろうことがうかがえる。確かに,ファイナル・スコアから見れば違う印象もある,かも知れませんが,少なくとも個人的には好感の持てる対戦相手との天皇杯初戦だった,と思っています。


 相変わらずの遅筆堂でありますが,駒場での天皇杯初戦であります。


 さて。立ち上がりの時間帯であります。この試合ではCKから先制点を奪取,先手を打つことができていますが,それでもカテゴリが違うチームとのカップ戦初戦,その難しさを感じさせる時間帯だったように感じます。対戦相手である浦安SCは,浦和がどのように試合へと入ってくるのか,かなり具体的なイメージを描き出していたように感じます。と同時に,浦安は「浦和の強みを徹底的に抑え込む」戦い方ではなく,自分たちが狙う戦い方を基盤に,浦和をどう自分たちが狙う戦い方へと引き込んでいくのか,という方法論を持ち込んできたように感じます。カップ戦であることを考えれば,浦和の強みを徹底的に抑え込む,という方法論も決して否定されるものではない,と思いますし,「行けるところまで勝ち上がっていく」ことをファースト・プライオリティとするならば,浦和を徹底的に抑え込み,ワンチャンスを狙うという方向性を狙う方がむしろ自然かも知れません。けれど,浦安はあくまでも「自分たちが狙うフットボール」を基盤に据えていたように受け取れます。どこか,浦安SCから受ける印象は佐野さん(かつて草津や長崎で指揮を執り,今は福井で指揮を執られているようです。)が率いるチームから受ける印象に似ているように思います。対する浦和は,浦安がどのように試合を立ち上がってくるのか,どのような戦い方をしてくるのか,慎重に試合を動かしながら確認したい,という意識があったように感じられます。そのために,相手のモチベーションを「受け」かけているような印象へとつながったように感じます。


 浦安が,理詰めで「対浦和」の方法論を描き出していただろうことは,試合をイーブンな状態へと引き戻された局面であったり,ゲーム・クロックが60:00前後を表示していた時間帯の局面から感じ取れるのではないか,と思います。相手は浦和が持っている強みを的確に把握,浦和の強みを抑えるためにはどのような戦い方が必要か,を意識すると同時に,浦和がどのようなウィークポイントを持っているのか,的確に意識して攻撃を組み立てていたように思います。特に,60:00前後の時間帯に相手が描きだした攻撃は,ゴール・ネットを揺らされることはなかったものの,浦和がボールサイドを強く意識した戦い方をしてくることを意識し,逆サイドへとボールを展開することと同時に逆サイドで縦を積極的に狙う,という戦術的なイメージがしっかりと共有されていただろうことが強く感じられるものでした。この天皇杯初戦では,攻撃面と守備応対面でのバランスを慎重に取りながら,というよりも,どれだけ狙う攻撃を描き出せるか,という方向に意識が傾いていたように思いますが,相手はこの意識を「狙って」いたように映るのです。リーグ戦では攻撃面と守備応対面とのバランスがズレを生じてしまえば,クリティカルな局面を招きかねないように感じます。縦を鋭く狙う,という意味では,リーグ再開初戦の対戦相手も近い戦い方をしてくる相手,であるはずです。この天皇杯初戦で,戦術的な課題が明確になったことは,戦術的なバランスを整える,という意識を徹底するための時間が取れる,という意味から見てもポジティブに捉えるべきかも知れません。


 さてさて。浦和と浦安SCとの間に存在している差,というのは,高い機動性をどの段階まで維持できるか,という部分であったり,判断に必要とする速度をどれだけ早くできるか,そして判断速度が高い状態をどの段階まで維持できるか,という部分などにあるのかな,と感じます。


 この試合,確かに浦安SCから荒さを感じる,そんな局面があったのは確かです。浦和の「速さ」に対応しきれない局面が出てくると同時に,荒さを感じる局面が出てきた。この印象こそが,主戦場とする舞台,その違いなのだろう,と思うのです。トップ・カテゴリのリーグ戦で,判断速度の遅れであったり,機動性が落ちてしまうということはそのまま,リズムを失うことにつながっていくように思います。浦安SCとしては,トップ・カテゴリを戦うチームと実戦の舞台で速度の違いを体感できたことは大きな要素となっているのではないか,と思います。


 いつもならば,対戦相手については最低限,と言いますか,浦和の戦い方(戦術的な課題)を振り返るために敢えて見る,という形を取っていますが,今回はちょっとだけニュートラルな位置に軸足を近付けて,浦安SCの戦い方にも意識を振り向けてみました。局面ベースで難しさを感じさせてくれたことも含めて,いい対戦相手との天皇杯初戦であった,と思っています。