対新潟戦(14−15)。

相手の強みを抑え込み,自分たちの形へと引き込むための戦術的な微調整を施す。


 この戦術的な微調整に対して,なかなか自分たちが狙う形を表現できなかった対戦相手は戦術的な再調整を施し,リズムを引き戻しにかかる。当然,この戦術的な再調整に対して,リズムを譲り渡さないために戦術的なギアチェンジを仕掛けていく。今節は対戦相手を含めて,指揮官の「知略」を強く感じられる試合ではなかったかな,と思います。


 遅筆堂状態にはまったくもって変化なし(ですので,ほぼ徳島戦のプレビューが相応しいタイミングになってのアップでございます。)で申し訳ございません,な新潟戦であります。


 さて。今節を前半と後半とで大きく2分割してみますに。立ち上がり早い時間帯に,興梠選手が負傷によって交代を余儀なくされた(コンディションが厳しい夏場の連戦,その初戦であること,加えてピッチ・コンディションがスリッピーな状態になっていることなどを考慮して,無理をさせずに早めに交代させたものと理解しています。)こと,また,興梠選手に代わって1トップの位置に入った忠成選手がトップ・フォームにはちょっとばかり距離がある状態だったことは大きな要素だったように感じます。厳しい体勢からであってもボールを収め,攻撃がギアチェンジを仕掛けていくための「タメ」をつくり,チームとしての攻撃リズムをコントロールする,という側面からも重要な役割を果たしているフットボーラーが抜けてしまったことで,縦へボールを繰り出して攻撃面でのギアチェンジを仕掛けるにしても,そのギアチェンジが必ずしもスムーズに行かなくなってしまった,という部分があるように思うのです。


 しかしながら,ビルドアップ面では相手の戦い方へと対応しての「戦術的な微調整」がしっかりと表現されていたように感じますし,リズムを掌握できていたようにも感じます。ここまでの戦い方を振り返るに,守備応対から攻撃へのトランジットではセントラル・ミッドフィールド,そのどちらかが最終ラインへと入っていく,というのが約束事になっていたように思います。3が4へと変化するようなパッケージの変化,であります。対して今節は3から4,だけでなく3から3という形も表現していたように感じます。セントラル・ミッドフィールドのどちらかが最終ラインに下がるのではなく,セントラル・ミッドフィールドと3のセンターで3を構成して,低い位置(相手にとっては,積極的にプレッシャーを掛け与えていきたい高いエリア)での数的優位を構築する,という意図を表現していたように思います。この戦術的な微調整によって,ベースのリズムが安定した,という印象があります。


 続いて後半であります。後半立ち上がりからゲーム・クロックが60:00前後を示すまでの時間帯が「危険な時間帯」だったように思いますが,今節にあっては決して相手にリズムを取られるような立ち上がりをしてはいなかった,ようには感じます。しかしながら,相手に主導権を掌握される局面が着実に増えてきた。ちょっとだけ対戦相手の狙いを推理してみると,前半の戦い方をもとに,相手指揮官は中盤での戦い方の再調整を意識したのではないか,と考えています。セントラルが1枚だけ最終ラインへと落ちるのではなく,2枚がともに落ちて3を維持するのであれば,中盤での機動性を引き上げることで中盤での主導権を奪い,リズムを浦和から引き戻すだけでなく,主導権を掌握できるのではないか,と。この戦術的な再調整に対して,浦和はちょっと後手を踏む部分があったように感じます。ボールをどの位置で奪うのか,という意識が(相対的に,ですが)曖昧になってしまったように感じますし,チームとしてのバランスも後傾気味になってしまったように感じます。加えて,縦をシンプルに相手に攻略される,そんな局面を作り出してしまった。というように,決してリズムを掌握しているとはいいがたい時間帯が後半は多かったように思うのですが,そんな時間帯を踏みとどまることができた。また,戦術交代によってセントラルを3枚にすることでボールをどのエリアで奪うか,ということを明確にしたことも鍵となったように思います。


 相手の強みを的確に抑え込み,相手を自分たちが狙う戦い方へと引き込む。引き込んだ相手を離すことなく,主導権を掌握した状態で試合を動かしていく。というような戦い方からはかなりの距離がある,そんな試合だったのは確かですが,そんな試合であっても着実に勝ち点を積み上げることができたこと,それも「勝ち点3」を積み上げられたことは大きな意味がある,と思っています。ある意味,「らしさ」を封じられる,そんな時間帯が長い試合でどれだけ勝ち点を積み上げられるか,が頂点への距離を着実に詰めていくために必要な要素だろう,と思うのです。当然ながら,課題は複数指摘できるかな,とは思いますが,収穫面もあったのが今節ではなかろうか,と思っています。