GS F。

搭載されるエンジンを基準にして選びたいレクサス。


 そんな見方もできるかな,と思います。


 環境性能面での要求基準が高まっている現代にあっては,なかなか真正面から「走ってナンボ」を訴求するのは難しいものがありますし,高性能な部分を強調するとしても,環境性能との折り合いをどのようにつけるのか,がより強く問われていくはずです。であれば恐らく,レクサス・ディビジョンも中長期的にはFレンジにもダウンサイジングという発想を落とし込んでいくのではないか,と推理していますが,レクサス・ディビジョンの主要なマーケットである北米市場の嗜好を思えば,“V型8気筒”というエンジン形式は「高性能」という部分を訴求するにあたって大きな意味を持っているはずです。


 トータル・バランスでクルマを選ぶ,という見方をするならば,ともすれば違う解が導かれる(個人的にも,直列4気筒エンジンとハイブリッド・システムを組み合わせたGS300hを「理」で考えるならば選ぶ)かも知れませんが,「エンジンを買う」という見方でクルマを選ぶとすれば,かなり有力な選択肢になるのではないかな,と思うわけです。



 今回は,フットボールを離れましてひさびさにクルマ方面の話をこちらの記事をもとにちょっと短めの方向で書いていこう,と思います。


 デトロイト・モーターショーに出展される,“GS F”であります。このGS Fでありますが,どのような位置付けなのか,この記事だけでは正確に理解することが難しいものがありまして,レクサスからのリリースも読んでみたのでありますが,少なくともコンセプト・モデルというわけではないようですし,デザイン・スタディという表現もリリースには使われていません。であれば,導入時期こそ明確なアナウンスがなされていないものの,Fレンジへの「実質的な」追加モデルである,と理解していいようです。


 では,エンジンの話に戻ろう,と思います。


 こちらの記事をまとめたエディターさんによれば,搭載されるエンジンは5000?・V型8気筒エンジンである,とのことです。であれば,恐らく搭載されているエンジンはIS FやRC Fに搭載されている2UR−GSE型であることが推察されます。「源流対策」という言葉とともに欧州メーカに大きなインパクトを与えたUZ型エンジン,その後継機種であるUR型をベースとする高性能エンジンであります。ここで注目したいのは,トヨタ(レクサス・ディビジョン)は「ターボ過給」という選択肢を採用していないこと,です。欧州各メーカはセグメントを問わず“ダウンサイジング・コンセプト”を導入,ターボ・エンジンを搭載しています。排気量を従来車種よりも引き下げる反面で,絶対的な性能を確保するためにターボ過給を掛ける(であれば,基本的にはパワーを引き出すことだけを意識したセッティングではなく,低回転域から過給がかかる,実質的に排気量を落としていないようなトルク感を与えるセッティングへと変化しています)。対してトヨタは,ダウンサイジングという発想ではなくて,ハイブリッド・システムを基盤とする“パワープラント”を採用することで環境性能面での独自性(そして,欧州メーカに対する優位性)を訴求する,という立ち位置を取っているように思われます。この立ち位置の「例外」がこの2UR−GSE型ではないかな,と思うわけです。この推察通りであるとすれば,レクサス・ディビジョンはセグメントEのスポーツ・セダンに搭載する,という部分を意識してでしょう,(基本的にはディチューンを施す方向で)再調律を施しているようです。


 個人的には,「トヨタが考えるダウンサイジング・エンジン」にも興味がありますし,より小さな排気量でも魅力的なスポーツ・エンジンができるのではないか(たとえば,セグメントDであるISにGR型をベースとするV型6気筒・ツインターボを搭載する,新たな“IS F”を用意してほしい),という期待を持っているのは確かです。と同時に,ターボ過給を掛けない,自然吸気エンジンの楽しさを真正面から訴求する車種を大事に育て続けてほしい,とも思っています。


 ハイブリッド・システムを搭載するクルマもいいし,ディーゼルを搭載するクルマもいい。ダウンサイジング・ターボも悪くない。そして,高性能なエンジンを搭載するクルマもまた,あっていいはずです。いろいろなエンジンをそれぞれの顧客が自分のライフスタイル,使用環境や好みなどによって「選べること」に価値がある,と私は思っていますが,同時にエンジンを買う,という意識を持てる,そんなエンジンが存在し続けていることもまた,大きな価値であるように私には思えるのです。