対鹿島戦(14−17)。

立ち上がりの時間帯から感じられた,ちょっとした違和感。


 と言っても,浦和から違和感を感じた,というのではなくて,対戦相手から感じたものです。自分たちの持っている強みを表現するために,相手の持っている強みをどう抑え込み,相手を自分たちが狙う戦い方へと引き込んでいくか。なかなか,かつての対戦相手からは感じることのできなかった方法論を,今節はごく立ち上がりの時間帯から感じられたように思うのです。


 相変わらずの遅筆堂で申し訳ありません,と言いますか,超低空飛行状態な更新頻度を継続させてしまっておりまして,こちらも含めまして申し訳ない限りです,の鹿島戦であります。のちほどしっかりと業務連絡,と言いますか,ごあいさつを,と思いますが,更新に向けた時間がいささか不足しておりますので,ちょっとばかりお休みをいただこうかな,と思っております。


 それはまた別の話として,今回はまず,相手の戦い方をチェックするところから話をはじめてみよう,と思います。


 立ち上がりの時間帯,相手は浦和のビルドアップ初期段階,つまりは高い位置からボール奪取を狙ったアプローチを積極的に仕掛ける,という姿勢を見せてはいなかったように思います。むしろ,パッケージとしてのバランスに意識を傾けた立ち上がりをしてきている,と受け取れたのです。また,守備ブロックに意識を振り向けて相手の戦い方を見てみると,かなり緻密な「浦和対策」を組み立てていたように感じます。相手の基本的なパッケージは4−4−2,中盤の構成で見るとボックスとウィングとの中間形態なパッケージであるように思います。「基本的には」このパッケージを維持しているのですが,浦和が攻撃を仕掛けてきている局面ではこのパッケージに微調整を施していました。浦和のアタッキング・ミッドフィールド(つまりは,柏木選手であり,梅崎選手でありますが。)があるエリアよりも深いエリアへと入り込むと,相手のセントラル・ミッドフィールドがマークに付いてきます。あるエリアから,ゾーンを意識した守備応対からひとに付く守備応対へと切り替えていく,というわけです。


 この相手の守備応対面での戦い方が,今節の鍵のひとつであったように感じます。


 ビルドアップ初期段階であったり,攻撃リズムを引き上げる前段階までを考えるならば,今節は一定程度,浦和が狙う戦い方を表現できていたものと思います。たとえば,アタッキング・ミッドフィールドの一方が高い位置を取り,もう一方がちょっとだけ低めの位置を取っている局面をイメージすると,センターでの主導権を掌握しやすい形ができるわけです。反面で,中盤から攻撃リズムを引き上げる,という段階からフィニッシュへ,という局面を考えると,相手が仕掛けてきた浦和対策に引っかかる局面が多かったようにも感じます。相手が仕掛けてきた浦和対策,エリア限定のマンマークによって,1トップとアタッキング・ミッドフィールドとの距離感をなかなか浦和が狙う距離感に持ち込むことができず,結果として攻撃リズムを引き上げられない,という循環になっていたように感じるのです。


 このような循環に嵌り込んだときに,どのような対応をするか。


 恐らく昨季は,「ひとを掛ける」という判断へと傾いていたのではないかな,と思います。戦術交代を含めて,攻撃面へとより強くウェイトを傾けることで局面を打開し「勝ち点3」奪取を狙う,という戦い方を選択していたのではないかな,と。攻撃的なフットボールを表現し,勝ち点を積み上げていくという戦い方を指向しているのだから,確かにあり得る選択肢かも知れませんが,反面で相手が狙う戦い方へとより深く嵌り込んでいく,その危険性を孕む戦い方だったことも確かです。今節の相手もある意味,同じような「罠」を用意していたように思いますし,浦和が「ひとを掛けて攻撃を仕掛けてくる」タイミングを狙っていたようにも感じます。実際,後半はカウンターからゴール奪取を狙う,という姿勢がより明確に表現されていたようにも感じます。であれば,戦い方のバランスを攻撃面へと強く傾けるわけにはいかない。守備応対面にも意識を振り向けながら,攻撃面でのアクセントを意識したギアチェンジ,アウトサイドからのギアチェンジを仕掛けていく。今節,ダッグアウトが仕掛けてきた戦術交代には,「縦方向の循環(意図的なポジション・ブレイク)」から相手のマークを外して攻撃面でのギアチェンジを仕掛ける,という意図も含まれていたのかな,と感じます。青木選手の投入,であります。青木選手が仕掛ける,と言いますか,青木選手に限らず,セントラルや最終ラインなど,低めにポジションを取っている選手が仕掛ける積極的なポジション・ブレイクは,相手が仕掛けてくる「浦和対策」に対する処方箋,そのひとつになり得るものではないかな,と感じますし,チームが「意図して」縦方向での循環を仕掛けられるようになると,攻撃面での有力なオプションとなっていくように思います。


 さてさて。試合全体を振り返ってみますに。「勝ち点3」を積み上げることができなかったという意味で“Best”な戦い方の選択ではなかった,という見方も決してアンフェアではないと思うけれど,相手が仕掛けてきた「罠」を的確に理解し,“Better”な戦い方を選択することで「勝ち点1」を着実に積み上げることができた,という見方もまた,必ずしもアンフェアではないように思います。むしろ,この勝ち点1を生かすこと,この試合で見えた課題をチームとしてしっかりとクリアして,再び勝ち点3を積み上げていく循環を作り上げていくことが重要だろう,と思っています。