対大宮戦(14−22)。

どのように試合を動かすか。


 自分たちが狙う戦い方にしっかりと軸足を乗せ,具体的なイメージを描き出すことができているチームと,自分たちの戦い方をなかなか明確なものとすることができず,曖昧なイメージしか描き出すことができなかったチームと。


 厳しい書き方ですが,今節のファイナル・スコアは2つのチームがどれだけしっかりとした「準備」をできているのか,基盤の構築に始まり,戦術的な熟成,これまでの実戦で明確なものとなった課題にしっかりと向き合い,解決策を見出して新たな実戦に臨めているか,などという要素を浮き彫りにするものではなかったか,と思うのです。


 お休みをいただく前にはごあいさつを,と書いておきながら,ごあいさつをすることもなく長いお休みをいただくことになってしまいました。予想外の繁忙期到来に対して対応しきれない,店主の処理能力の低さが主因でございまして,申し訳ありません。さらに,やっと再始動できる環境になってきたにもかかわらず相変わらずの遅筆堂状態で,こちらについても申し訳ありません,な大宮戦であります。


 さて。今回は敢えて対戦相手の戦い方を考えるところからはじめてみよう,と思います。


 今節の対戦相手は,「浦和の強みを徹底して抑え込む」ための戦術的な調整を施し,徹底してくる,というアプローチをこれまでの対戦ではしてきていたように思います。自分たちが狙う戦い方,という方向性から戦い方を組み立てるのではなくて,浦和の持つ強みを抑え込む,という方向性から戦い方を組み立てる。であれば,浦和に対してフルコート・マンマークを仕掛け続ける(1on1での勝負に持ち込むことで,浦和の攻撃面での連動性、機動性を断ち切る,という判断でしょう。)など,徹底した戦い方を見せてきたように思うわけです。というような過去の戦い方を思えば,恐らく今節にあっても「浦和対策」を明確に押し出してくるのではないか,と見ていたのですが,今節の対戦相手は,「徹底度が低い」印象が残っています。


 端的に書いてしまえば,ひとつの戦術的なイメージを共有することができていないように映るのです。


 たとえば,ボールをどのエリアで奪いに行くのか,というイメージがチームで束ねきれていないように受け取れます。攻撃ユニットは高いエリアから浦和に対してプレッシャーを掛け与えていきたい,という意識をどこかに持っている(トランジションフットボール的なイメージを描いている)ように感じられる反面で,守備ブロック方向から戦い方を眺めてみると,浦和の攻撃ユニットに対してセントラル・ミッドフィールドが最終ラインに下がって守備応対をする,というイメージを持っているように受け取れるのです。となれば,マンマークがどの程度徹底されているのだろうか,と見てみても,アウトサイドから見る限り,必ずしも明確な約束事が落とし込まれているようには感じられませんでした。エリアにかかわらず,ストリクト・マンマークを仕掛ける,というわけでもないように感じられるのですが,であればどのようにしてマークを受け渡すのか,という部分が明確に表現されているわけでもない。ひとを掛けて守備応対を仕掛けている,ようには感じられるのだけれど,実際には約束事がかなり脆弱な状態、厳しく書いてしまえば軸足を置くべき場所,微調整を施すための基礎となるはずの戦術的な約束事が抜け落ちているように映るのです。


 このことを浦和目線で見ると,(中途半端な形にとどまっていたとしても)相手がストリクト・マンマークを仕掛けてきたことが,浦和の機動力を引き出す要因になったように感じます。相手が連動性を強く意識したストリクト・マンマークを仕掛けていないがために,ポジション・チェンジを仕掛けて相手マーカーを引っ張り出す,という動きが攻撃面を機能させるにあたって大きな鍵となったように思うわけです。また今節は,サイドでの主導権を早い時間帯で掌握し、攻撃面でのポイントとすることができていました。先制点を奪った時間帯で見ると,決して早めの時間帯とは言えませんが,攻撃面で浦和がどのようなイメージを描いているのか,相手に対してどのような攻略法を意識しているのか,という部分は立ち上がりの時間帯から相当程度に描き出すことができていたように感じます。ここ数節を振り返るに,先制点を奪ってからの戦い方が課題となっていたように思うのですが,今節は先制点を奪ってから時間を置くことなく,追加点を奪うことができています。相手が見せた明確な隙,トランジットのルーズさを的確に突き,縦に鋭い攻撃を仕掛けゴールを奪う,という形を描き出せている。トランジットのルーズさを突く,という意味で見れば,60分の宇賀神選手のゴールへと結びついた,興梠選手の仕掛けも同じ文脈で説明できるはずです。


 と,攻撃面では描き出すべき要素をしっかりと描き出せていた,と思いますが,守備応対面では課題となる要素も見えていたように感じます。相手に押し込まれた時間帯,守備ブロックが最終ラインを高めにセットし直そう(ラインを引き上げて,相手がボールを収める位置をゴールから遠い位置へと押し返そう)という意識は確かに受け取れるのですが,この時間帯の守備応対が「逆襲を仕掛ける」ための守備応対ではなくて,相手の攻撃を跳ね返す,という守備応対にとどまってしまったことがもったいないように思うのです。ポジショニング・バランスをちょっと見直す(たとえば,パスを引き出すべく,ボールホルダーの視界に入るためのワンアクションを織り込む),であるとか,パス・レンジ(距離感)の微調整を施す,など「微調整」の範疇に入る課題かな,と思いますが,的確に潰しておくべき要素でもあるように感じるところです。


 さてさて。チーム・コンディションを思えば「勝ち点3」を奪うべき相手に対し,しっかりと勝ち点3を奪い,積み上げることができたことは大きな収穫だろう,と思います。また,ある程度差し引くべき部分はあるとしても,浦和対策を描き出してきた相手に対して明確な対処法を示せたこと(攻撃面での解を示したこと)も大きな要素ではないか,と思います。今節の勝ち点3を,ナビスコカップの2連戦,そしてリーグ戦へと結びつけていってほしい,と思います。