跳からデミオへ。

セグメントBでは選べなかったものが,選べるようになる。


 欧州市場であれば,ごく当然に選ぶことのできる組み合わせ,でありますが,日本市場ではなかなか選ぶことができなかった,そんな組み合わせです。2000ccよりも大きな排気量であればすでに導入されていますし,急速に日本市場での存在感を高めている,という印象もあります。BMWが展開する,積極的なプロモーションも大きな要素でありましょう。けれど,2000cc以下の排気量,となると導入へと踏み込まない可能性も高いのではないか,という観測があったのも確かです。そんな小排気量の領域に,マツダは踏み込んできました。欧州における販売戦略,という部分を考えると,現状において有力なパートナーを欧州に持っていないマツダとして,小排気量ディーゼルを自社開発する必要性に迫られていた,という事情もあるかも知れませんが,経済紙的な見方はさておき,ガソリン・エンジンを搭載するクルマとは違う魅力を持つセグメントBが実際に選べるようになる,というのが最も大きな意味であるように思うのです。


 冒頭からまとめにかかったようなことを書いておりますが,今回はフットボールを離れまして,こちらの記事をもとに,新型デミオについて書いていこう,と思います。



 さて。まずはデザイン面の話からはじめよう,と思います。端的に書けば,「マツダとしての個性」が着実に浸透してきているな,という印象であります。と,ここでディテールな話,ではなくて,経済紙的な見方もしつつデザインの話をしてみよう,と思います。


 OE供給を外してみると,セグメントB,CとセグメントDにそれぞれ商品を持ち,スポーツカーも展開する。マツダの商品展開でありますが,欧州メーカにも似たような商品展開をしていたメーカがあることにお気付きでしょうか。ちょっと前までのBMW,であります。となると,マツダがどのような位置取りをすべきか,マーケットでのBMWのポジショニングから推理できるように思うのです。と同時に,これまでのマツダに何が決定的に欠けていたのか,ということも。


 ちょっとばかり歴史の針を巻き戻してみましょう。欧州市場で,マツダの評価は決して低くはなかった,と言いますか,かなりの高評価を得ていた車種もあったように記憶しています。いますが,デザイン面から振り返ってみると,マツダの個性とは何だろうか,と疑問が残るのもまた確かであるように思うのです。かつてのマツダの主力車種であるファミリアであったり欧州で高評価を得ていたカペラ,当時としてはなかなかにエレガントなデザインを採用していたコスモ,これらの車種に共通する,マツダとしてのデザイン要素が落とし込まれていたか,というと,決して落とし込まれていたとは言えない。むしろ,「無色透明」な印象を受けていたように思います。すべての商品を貫く,デザイン面での「軸」がなかった状態が継続していたように思えるのです。この「軸」が「魂動」であり,導入初期と比較すると,よりメッセージの落とし込み方が洗練されてきた(主張すべき部分をしっかりと主張してくるようになった)ように感じられます。加えて書くと,先代デミオのデザイン要素を「魂動」に織り込んできているように感じます。ロードスターにも同じような印象を受けるのですが,「魂動」だけにこだわるのではなくて,これまでの歴史をどこかに感じさせるデザイン要素を落とし込み,継続性を表現しようともしている。なかなかいいデザインのまとめ方なのではないかな,と思うのです。


 で,個人的に最も注目している,小排気量ディーゼルであります。



 個人的には,小排気量ディーゼルの魅力を引き出す大きな鍵は,ギアボックスにあると思っています。この記事をまとめたエディターさんによると,新型デミオディーゼル・モデル)に用意されるギアボックスは,6段マニュアル・トランスミッションと同じく6段オートマチック・トランスミッションである,とのことです。この,多段化されたギアボックスが,ディーゼルを「らしく(スポーティに,と言い換えることもできると思います。)」走らせるための大きな要素となっている,と思うわけです。このエンジンの最高出力を見ると,77kW(105ps)/4000rpm,最大トルクは220Nm(22.4kgm)/1400〜3200rpm,とのことです。この数字のうち,4000ではなくて,1400〜3200,という数字がディーゼルをスポーティに走らせるための大きな要素だ,と思うのです。トルクバンドを外さずにエンジンを動かすことができれば,ディーゼルが苦手とする(のみならず,ネガティブが明確になりやすい)高回転域までエンジンを回すことなく,クルマを高い速度域にまで持っていくことができる,はずです。となると,このトルクバンドを最大限に生かすためのギアリングが必要になってくるはずです。多段化されたギアボックスは,これまでなかなか小排気量車に設定されることはありませんでしたが,この設定によって,小排気量ディーゼルを投入するための条件が整った,とも言えるように思うわけです。


 最後に,この1500cc・ディーゼルターボはデミオ以外の車種にも展開される,とのアナウンスがあったようです。ひょっとすればアクセラに搭載されて,ディーゼルのラインアップが拡充される,かも知れませんし,個人的な期待を込めてマツダさんへのリクエストをさせてもらえば,ライトSUV的なセグメントC,あるいはセグメントBも用意してもらえると,さらにマツダの欧州車メーカ化が明確になるのかな,などと思います。