シボレー・カマロとGT3と。

アメリカンなクルマと,レーシングと。


 この2つがつながらないとしても仕方ないかな,とちょっと思います。アメリカンな自動車メーカは基本的にDOHCヘッドを採用する,どころか伝統的なプッシュロッドに徹底的なまでにこだわっているし,そのプッシュロッドの一般的なイメージはスポーツとは遠い位置にあるわけで。レーシングな環境に持ち込んで,果たして結果を引き寄せられるのだろうか,と思われても仕方ないかな,とは思うのです。


 しかし実際には,なのです。


 たとえば2012シーズン,トヨタのWECチャレンジのパートナーとなることがアナウンスされているフランスのレース屋さんは,かつてクライスラーとのパートナーシップを締結していました。彼らが武器として選んだのは,ダッジ・ヴァイパー(正確には,クローズド・ボディを持つGTS−R)であります。V10のプッシュロッドを搭載する,アメリカン・スポーツであります。このヴァイパーをGTS技術規定に合わせてサルテへと持ち込み,クラス優勝へと導いています。確かにプッシュロッドは古典的な技術かも知れませんが,古典的ゆえのアドバンテージ,というのも意外にあって,そのアドバンテージを生かしてきたというのも事実なのです。そんな先輩たちに続けるか,楽しみです。今回はフットボールを完全に離れまして,屋号に忠実な話をこちらのニュースを下敷きに書いていこう,と思います。



 さて。シボレーでレーシングで,となるとどうしてもコーヴェットをイメージします。ではあるのですが,YACO Racing社(ドイツ語)はコーヴェットではなく,カマロをFIA−GT3選手権へと持ち込むべく開発をスタートさせ,実際にマシンをロールアウトさせた,ということのようです。(残念ながら,ライター社とYACO社との関係性を確認することができなかったので推理すると,になってしまうですが)YACO社がADAC−GTマスターズに持ち込もうとしているマシンの開発を実際に担当しているのが,オートスポーツさんの記事にあるライター・エンジニアリング社で,シェイクダウン・テストに参加したのが澤選手,ということなのではないかな,と見ています。
 で,YACO社の話に戻しまして。
 ドイツ語のリリースを斜め読みすると,エンジンを担当するのはYACO社ではなく,アメリカに本拠を構えるKatech社(英語)だとのこと。レーシング・エンジンを仕立てる,特にプッシュロッドのレーシング・エンジンを仕立てるとなると,やはりアメリカのエンジニアリング会社とのパートナーシップは重要な意味を持つと思いますし,YACO社もそんな判断をしたのだろう,と思うところです。


 さてさて。オフィシャル・フォトを眺めてみますと。


 ライドハイトはかなり低めにセットされているようですが,タイア上部とフェンダーとの隙間を眺めてみると,レーシング・マシンとしては余裕が取られているように見て取れます。姿勢変化を徹底的に抑え込む,と言うよりは,タイア攻撃性をなるべく低めると同時にメカニカル・グリップを最大限に引き出す方向でのサスペンション・セットを狙う,そんな開発方向ではないかな,と。澤選手も「タイアに優しいジオメトリー」であるとのコメントをしていますが,外側から見る限りでも確かにそんな印象を持つところです。


 開発途中であることを強く感じさせる,カーボン・コンポジット(であると思われる)なボディ・シェルが示すように,まだまだカマロGT3の戦闘力をどうこう,という段階ではなさそうです。ではありますが,過去,ル・マンアメリカン・スポーツがどのような戦績を残してきたか,という部分を考えると,決してアメリカン・スポーツは戦闘力が低いわけではありません。ここからの開発によって,どれだけの戦闘力を見せてくれるのか,期待したいと思います。