トレルイエ、契約満了。

契約満了,あるいは契約非更新。


 なかなか,好意的には受け取ることのできない言葉たちです。


 ではあるのですが,今回に関しては好意的に受け取るべき言葉かな,と感じます。再び世界選手権がかかるスポーツ・プロトタイプへと主戦場を移す、そのためのアシストを,日産がしていると理解できるからです。もちろん,違った見方もできるかな,とは思いますが,そのことはちょっと折りたたんでおく話かな,とも思いますし。


 今回もフットボールを離れまして,モータースポーツ方面な話を,こちらの記事をもとに書いていこう,と思います。


 チーム・インパルであったり,ニスモブノワ・トレルイエを世界選手権を戦うレーシング・ドライヴァへと押し上げた,と考えるならば,今回の契約非更新についてのリリースは,どこか誇らしさを感じるものかも知れない,と思います。星野さんのチームでの経験があってこそ,のニスモとの契約だったはずですし,インパルやニスモでの経験はどこか,ル・マンでの成績につながっている。そして,ル・マンでの実績,そして日本での実績がアウディ・ワークスへとつながっていったのかな,と思うわけです。


 そして,この記事にも指摘されるところですが,2012シーズンのスケジュールを見ると,日産とアウディを掛け持ちするのはかなり難しい部分があります。どちらか,を選択することが求められるわけですが,ひとつは世界選手権がかかった舞台,ひとつは国内戦で,と。ブノワとしても,世界選手権の舞台で戦いたいという思いはあるに違いないし,その思いは当然のものでもあるでしょう。そこで,ニスモとしてはブノワのチャレンジを後押しする形で,来季の契約はない,という判断を敢えてした,と。


 個人的にも,日本のレースで経験を積んだドライヴァが,世界選手権の舞台で存在感を示してほしい,と思っていますし,ブノワにもアウディで存在感を強く示してほしい,と思っています。


 では,ちょっと違った視点の話をちょっとだけ書いておくと。


 要は,グループC時代の日産に思い入れを持つモータースポーツ・フリークのホンネ,のようなものです。


 アウディへと送り出す,のではなくて,日産がWECのシートをブノワに,ということがあったならば,という“パラレル・ワールド”を思わず想像してしまった,というわけです。日産がWECへのチャレンジをアナウンスしていたならば,という仮定論を思い浮かべてしまった,のです。


 トヨタは,ハイブリッド・システムを持ち込む形でのWEC世界耐久選手権への参戦をアナウンスしていますし,そのときのパートナーとして,フランスのレース屋であるオレカが決定しています。対して日産は,(高島町が主導権を取って,という形ではなく,欧州日産が主導する形のようですが)プライベティアへの技術支援という形でスポーツ・プロトタイプにコミットしています。もちろん,すべてのメーカがファクトリー体制でLMP1に,というあり方には疑問を持つところがありますし,日産のアプローチは決して悪くない,むしろ好感を持っている部分があります。
 ただ同時に,日産は「忘れ物」をスポーツ・プロトタイプにはしているような,そんな印象を持っているのも確かなのです。ポリティクスによって,サルテでの勝負権を奪われることになったCPであったり,経営状態の悪化によって戦う場所自体を奪われることになるNP35であったり。これらの血統を継ぐスポーツ・プロトタイプ,日産内製のカーボン・モノコックを持つプロトタイプ・マシンをいつか見てみたいと思ってしまいますし,そのときにはやはり,GTの主戦ドライヴァにステアリングを,と思ってしまうのです。


 いつか,そう遠くないいつか,ブノワをアウディから「引き抜く」なんていうアナウンスメントがあったらいいな,などと思ったりもするのです。