シークエンスを断ち切る意識。

シークエンス。「順序」という意味よりも,「連続性」と取るべきでしょうか。


 ラグビーフットボールにおいても,仕掛けの連続性というのは大きな要素になっています。
 ベースとなるのは,縦へのスピード。そして,パス・スピードと正確性。素速いパス・ワークによってボールを大きく展開することで相手を揺さぶり,ディフェンス・ラインにクラックを生み出すことができるか。この仕掛けを徹底して連続させることで,トライを奪取しようという考え方という感じでしょう。


 トップリーグでは,ブレイブルーパスがシークエンスを強く意識した仕掛けを組み立てています。


 もともと東芝府中時代から,BKが持っているスピードという要素はかなりのストロング・ポイントでありました。このストロング・ポイントを仕掛けのスタイルへと結び付け,ラン・プレーを徹底して継続していくスタンディング・ラグビーが,ブレイブルーパスのスタイルへとつながっているわけです。
 しかし。ラグビーフットボールにおいても「ボールをどう奪取するか」という要素は大きいわけです。さらに,「どのようにしてエリアを回復するか,あるいは奪うか」という要素が絡んでいきます。


 群馬県・太田で開催されたトップリーグ第8節。


 ワイルドナイツサンゴリアス戦でありますが,そんな要素がハッキリと見えたように思うのです。


 サンゴリアスが主戦兵器としているのは,ノーム・ラグビー


 シークエンス(連続性)を意識したラグビーであることには違いないのですが,ひとりひとりの選手がどのようにしてコンビネーションを形成するか,という枠組みをシッカリと戦術的な意識として共有することを求めるラグビーです。でありますれば,自分たちのリズムに引き込むことが重要なのです。
 自分たちのリズムに引き込めれば,コンビネーションを安定して機能させることができる。逆に,リズムをつかみきれないようだと,ゲームを難しくしてしまう可能性もあるわけです。ボール奪取で後手を踏んでしまえば,リズムを生み出せなくなる。
 どうも,第8節はボール奪取勝負でイーブン,あるいはワイルドナイツに傾いた時間帯が多かったように思うのです。


 ワイルドナイツも基本的な方向性としては,シークエンス・ラグビーを志向しているはずです。


 ただ同時に,相手が築き上げようとしているシークエンスをどのようにして断ち切り,自分たちのリズムへと変えていくか,という部分も意識しているように見えました。ボール奪取,という部分でワイルドナイツの集中が高かった,という印象なのです。
 ラグビーフットボールでボール奪取,というと,ボール・キャリアーに対して低く鋭いタックルを仕掛けポイントを築く。そのポイントに素速く数的優位を構築して,ボールを奪取するというイメージが一般的にあろうか,と思います。ワイルドナイツは,この一般的なイメージでいうボール奪取だけでなく,相手のパス・コースに飛び出していく中からボールを奪取し,そのまま仕掛けへとつなげていくという意識もありました。ラグビーフットボールと言うよりは,フットボールであったりバスケットボール的なディフェンスの仕掛け方であり,ターンオーヴァの仕掛け方だったように思います。北川選手のインターセプトはまさしく,仕掛けのイメージから逆算したボール奪取だったわけです。


 ワイルドナイツは,首位のポジションを維持しました。だからと言って,ワイルドナイツラグビーが正解などということはなくて。


 要素のバランスが,この第8節ではワイルドナイツのほうがよかった,ということなのでしょう。サンゴリアスを率いる清宮さんが,記者会見で「三洋の方がいいラグビーを展開した」というニュアンスのコメントをしていますが,恐らくはボールへの鋭さ,厳しさを維持していたのがワイルドナイツ,という見方になるでしょう。


 スタンディング・ラグビーからシークエンス・ラグビーへ。
 そのクラックを突くためには,より鋭く厳しいディフェンスが求められるし,フラット・ディフェンスの裏に生じるスペースを積極的に狙う姿勢が求められる。


 シークエンスをどう断ち切るか。そして断ち切った先にリズムをつかむ。これらの要素をどのように戦術へと落とし込むか。そういう視点からトップリーグを見るのも,面白いかも知れません。