パナソニック・ワイルドナイツ対東芝ブレイブルーパス戦(11〜12TL・POT)。

厳しい試合ほど,小さなミスが勝負を分ける。


 この試合にあっても例外ではなかった,と思います。


 秩父宮でのプレーオフ・トーナメント,その第1試合であります。


 このカード,レギュラー・シーズン最終節のカードそのもの,なのであります。であれば,最終節での印象を織り交ぜながら書いていこう,と思います。


 まずは,ブレイブルーパスであります。


 リーグ最終節は,ワイルドナイツの守備ブロックを揺さぶりながらギャップを突く,そんな時間帯を積み上げることができていたな,と感じます。この試合においても,「部分的には」ブレイブルーパスが狙うラグビーを表現できていた,とは言えるように思うのです。ボールを積極的に展開して,相手守備ブロックにギャップをつくり出そうとする。この段階までを考えるならば,最終節との違いはそれほど感じられませんでした。しかしながら,ボール・ポゼッションという要素とトライ奪取とがこの試合ではつながらなかったな,とも感じます。ワイルドナイツ陣内,22mから5m、そしてゴールラインへというエリアで,ブレイブルーパスが狙うラグビーを表現できていたか,となると,答えは違ってくるように思うわけです。最終節との大きな違いは,このエリアでのアイディア,だったように思うのです。それだけ,ワイルドナイツの守備応対は最終節とは変化していました。アウトサイドから見ると,かなり低い位置での守備応対を余儀なくされているようにも受け取れるのですが,それでいて決定的な破綻を生じることがなかった。この試合での鍵,そのひとつだったかな,と思います。そして,このエリアでミス,この試合にあってはクリティカル,と言うべきだろうと思いますが,そんなミスを複数回誘発してしまう。接点での攻撃的な守備,という印象はそれほど強くはありませんが,ワイルドナイツは小さな隙を決して見逃すことはなかったし,そんな隙を生み出すような守備応対を繰り返していたのも確かです。その圧力に対して,ミスを誘発させられてしまった側面も,あるかも知れません。結果として,この小さなミスが得点差となっていくわけです。


 試合後の,「完敗」というコメントは,このエリアを実質的にコントロールされてしまった,という思いがあるのかな,と思います。


 後半28分以降,相手の相次ぐシンビンによって数的優位の時間帯となると,急激にゲームのリズムを取り戻していくのですが,自分たちのミスから相手にリズムを譲り渡してしまった時間帯,その影響を取り戻すまでには至りませんでした。局面ベースで見るならば,ワイルドナイツをコントロールしている部分もあっただけに,「もったいない」ゲームだったのではないかな,と思うところです。


 対して,ワイルドナイツであります。


 立ち上がりの時間帯からの印象は,思うよりも慎重にゲームを動かそうとしているのではないか,というものでした。トライ奪取を狙うのかな,と感じるエリアでも,PGを冷静に選択,得点差を積み上げるという戦い方をしていました。このときの得点差が,この試合の隠れた鍵になっていたな,と思います。後半,ショートハンドに陥ると,リズムを相手に引き戻されて,なかなかリズムを引き戻すきっかけをつかめなくなります。そんな状態に陥っても決勝へのきっぷを確保できた,その要因に前半のPGが効いているように思うわけです。そして,この試合ではポゼッション,であったり,接点での攻撃的な守備(高いエリアでボール・コントロールを奪い,攻撃を仕掛けていく)というよりも,比較的低いエリアで厳しい守備応対を繰り返し,このエリアからハーフ団の「縦への鋭さ」を生かす,という方向性で戦っていたように受け取れます。ちょっとだけフットボール的な表現をするならば,相手を網に追い込むような守備からカウンター・アタックを冷静に狙うような戦い方を狙っていたようにも感じるわけです。であれば,北川選手やフーリー選手が秩父宮のフィールドで表現した「縦」への鋭さは,ブレイブルーパスに対して用意していた,“タマ”のひとつかも知れない,と思うところです。


 ワイルドナイツは、この“リトリート”なラグビーを最終節では強く表現していませんでした。もちろん,部分的には「それらしい」姿が見えていたし,トライ奪取の局面はこの試合と近い姿でもあります。でも,彼らはあくまでも,短期決戦を意識した戦い方を徹底して,最終節の戦い方を決めた。エリア・マネージメント、という言葉であったり,攻撃的な守備という言葉が適切なラグビー,という姿からは変化をしてきているようではあるけれど,守備応対の厳しさであったりは相変わらずだな,と,「やっと」短期決戦で感じ取れたように思います。


 ファイナル・スコアから判断するならば,確かにワイルドナイツがコントロールした試合,という見方もできるかな,と思いますが,リーグ・チャンピオンを奪取するためには、さらに詰めておかないといけない要素があるラグビーかな,と感じるところです。


 たとえばラインアウト,特にマイボール・ラインアウトへの対応であります。


 ラインアウトでボール・コントロールを維持できると,その後の戦い方に幅を持たせることができるように思うのですが,この試合ではなかなか,ボール・コントロールを維持できなかった。そのために,トライ奪取を狙えるエリアにまで侵入していながら,このエリアを手放してしまう局面が多かったように感じます。より戦い方に幅を持たせるべく,この部分を詰めるのか,それともこの試合のように,「割り切り」をより徹底するか。そんな部分も含めて,サンゴリアスにどう対峙するのか,楽しみだったりします。