サントリー・サンゴリアス対NECグリーンロケッツ戦(11〜12TL・POT)。

もうちょっと,接近した展開を期待しておりましたが。


 そんな勝手な期待が付け入る隙などどこにもない,緻密なラグビーを存分に表現していたな,と感じます。プレーオフ・トーナメントの第2試合,サンゴリアスグリーンロケッツのゲームであります。


 では,グリーンロケッツの印象から書いていきますと。


 サンゴリアスの展開に対して,守備ブロックが揺さぶられる時間帯がかなり多かったな,と感じます。スティーラーズとのTL最終節の印象でもあるのですが,サンゴリアスはボールをシンプルにオープンサイドへと展開していくだけではありません。ちょっとフットボール的な表現をするならば,“シザース”によって相手守備ブロックのギャップを突く,そんな約束事を徹底しています。ラインは,相手守備ブロックに対して斜めに仕掛ける,そのタイミングを狙いながら,ボールを動かしているようです。縦への加速を引き出し,相手守備ブロックのマークを振り切り,数的優位な状態へと持ち込む。グリーンロケッツとしても,サンゴリアスがどのような約束事を持っているのか,スカウティングによって把握していると思いますが,このシザースに対する意識が強くなり過ぎているのか,守備応対が自分たちから仕掛けていくような形,と言うよりは,相手の攻撃に対して合わせていくような守備応対になってしまっていたように見えるわけです。


 サンゴリアスに傾いたリズムを,取り戻せずに前半終了のホーンを聞くことになる。のみならず,アディショナル・タイムには,相手の徹底した姿勢を見せ付けられることになる。厳しい見方かも知れませんが,前半終了の段階で,どちらのチームがリーグ・チャンプを争う立場に相応しいか,明確になってしまっていたように思うのです。


 対して,サンゴリアスでありますが。


 戦術的に徹底されている,とアウトサイドでも直感的に理解できるラグビーですし,その戦術的な約束事を表現しているひとりひとりの個,そのレベルが高いな,と感じます。


 かつて清宮さんがチームを預かっていたときは,対戦相手から逆算したゲーム・プランに相手を引っ張り込む,という意味で約束事を重要視するラグビー,という側面が強かったかな,と思いますが,エディーさんのラグビーはどちらかと言えば,あらかじめ自分たちが描こうとするラグビー・スタイルに相手を引っ張り込んでくる,というように,仕掛ける姿勢がより強いラグビーへと変化しているように感じます。そして,ボールを展開する,という姿勢が徹底されています。スティーラーズとの最終節でも強く感じたことですが,エリアはボールを自分たちで動かし,接点でコントロールをキープし続けることで奪っていく,という意思が強く感じられる,そんなラグビーでした。ポゼッションを強く意識しているラグビー,とも言えるかな,と思いますが,そのポゼッションがしっかりと,相手に対する脅威へと結び付いています。


 スティーラーズ,そしてグリーンロケッツを揺さぶった,斜めへの鋭さです。


 戦術的な熟成が深まっていること,そして「個」の強さが組み合わさったことで,表現しているラグビーからすれば,ある意味でアンバランス(エリアを奪う,のではなくボールを動かす,という要素に徹底してこだわっている)であるように思うのですが,チームとしてのバランスはかなり整っているように感じられます。数季前のブレイブルーパス,と言いますか,さらに数季前の東芝府中とどこか共通項を持つ,そんな印象を持っています。


 さて。決勝戦サンゴリアスと,ワイルドナイツで戦われることになります。FW戦と言うよりは,間違いなくBKの機動力が鍵を握るゲームでしょうし,反対側から言うならば,その機動性,あるいは鋭さをどう抑え込み,自分たちのリズムに引き込むか,が大きな意味を持つことになるかな,と思います。どちらが描く“ストーリー”がフィールドに実際に表現されることになるのか。楽しみであります。