対マレーシア戦(U−23・ロンドン五輪最終予選)。

大量得点差での勝ち点3奪取が必要,というお話でありましたが。


 短期決戦とは言いながら,あくまでもリーグ戦ですよ,と思っておりました。


 もちろん,首位との勝ち点差が動かないというケースはあり得る話ですし,そのときに順位を動かすためには(得失点差で首位を上回るために)ゴールを積み重ねる必要がある,というのも指摘通り,です。でも,マレーシアでのアウェイ・マッチで短期決戦のリーグ戦も最終節,というわけではありません。他力の要素が作用することにはなりますが,勝ち点差を動かす,その可能性はまだまだ残されている,と見るべきです(実際,動きましたけど)。であれば,得点差「だけ」に意識を振り向けるのではなくて,勝ち点3奪取に向けたアプローチを徹底することにこそ,意識が振り向けられるべきではなかろうかな,と。大量得点差はあくまでも結果論であって,まずは勝ち点3を奪うこと,と冷静にコメントしていた健太さん,その冷静さが大事だな,と思っていたわけです。


 要は,メディア方面なアウトサイドが喧しいな,と思っていたのですが,チームは外野に揺さぶられることもなく,「冷静に」勝ち点3を奪うことを意識していたような,そんな感じがします。マレーシア戦であります。


 勝ち点3を奪取できたこと,それも,4−0というファイナル・スコアで勝ち点を積み重ねたことが最も大きな収穫でありまして,内容面に踏み込むのもどうなのかな,と思いますが,ちょっとだけ踏み込んで書いてみよう,と思います。


 ヨルダンでのゲームを振り返ってみると,無意識なのか何なのか,結果として相手に合わせるようにロングレンジ・パスを繰り出す局面が積み上がってしまっていました。物理的なコンディションに対して,意識が強く傾き過ぎていたのかな,と思いますが,リズムをコントロールする,という側面が相当程度落ちてしまったな,と感じます。


 では,マレーシアのアウェイ・マッチはどうだったかな,と思いますに。


 ヨルダンでの印象とは違って,中盤がしっかりと機能している時間帯が圧倒的に増えていたな,と思います。ボールをどのエリアで奪うのか,という部分で戦術的な約束事が確認された,と言いますか。低い位置で相手を受け止めるような守備応対,と言うよりは,しっかりと中盤がボール・ホルダーを追い込むような形でディフェンスを仕掛け,ボール奪取を仕掛けるエリアにしても必要以上に低くセットしないようにする,と。距離感,という部分で見ても守備ブロックが潰れている,という感じはそれほどしなかったですし,中盤の機動性が維持されていたことで,攻撃面,そして守備応対面で自分たちの狙うフットボールへと持ち込める,そんな局面が増えていたな,と思うわけです。


 先制点を奪った局面を振り返ってみると,組織的な局面打開,と言うよりは,「個」の局面打開によって組織が機能する隙間を広げた,という印象もありますが,追加点奪取の局面,特に後半に入ってからの追加点奪取の局面を考えてみると,組織的な約束事と,個の持っている能力がしっかりとバランスしながらゴールを奪う,という形が表現できているように感じます。そんな形をピッチに表現できたことは,このゲームで最も大きな要素になるかな,と思います。


 とは言いながら,であります。


 まだ,リズムを積極的に(と言いますか,自分たちが主導権を握って)コントロールする,という印象は強くないかな,と思います。ボールを積極的に動かす,という意識は徹底されているな,と思うのですが,攻撃面では縦への「速さ」だけがピッチに表現されているように感じます。ボール・コントロールを奪ってからの仕掛け方が,まだまだ分かりやすい,と言いますか。もうちょっと,相手を引きずり出すようなスローさがあってもいいかな,と思いますし,縦に仕掛けるタイミングを「狙って」いいように思うわけです。


 ともかくも。リーグ戦は自力のみならず,他力も作用しながら戦っていくものであります。そして,他力を自分たちのチカラにするためには,まずは「勝ち点」(最大の勝ち点3が最も理想的なのは,言うまでもありませんが。)を奪うことであります。ちょっとリズムが悪くなってしまうかも,なんて状態から,しっかりと戦える状態に戻ってきたこと,さらに,次につながる形を示せたことは,大きな意味があるな,と思います。