再び、雌雄を(第45回ラグビー日本選手権)。

マイクロソフトカップ勝戦と,まったく同じカード。


 実力関係を思えば,ある意味当然かも知れません。いよいよ,決勝戦を残すのみ,となったラグビー日本選手権であります。


 決勝へと駆け上がってきたのは,三洋電機ワイルドナイツと,サントリー・サンゴリアスであります。トップリーグを思えば,ごく当然のように勝ち上がるべきクラブが勝ち上がってきた,という印象があります。では,ちょっと準決勝を振り返りながら決勝をイメージしてみましょうか。


 まずは,サンゴリアスであります。


 綿密なスカウティングを基盤に,相手のストロング・ポイントを徹底的に抑え込むと同時に自分たちのリズムへと引きずり込んでいく。清宮監督を中心とするコーチング・スタッフの確かな手腕も作用しているのでしょうが,選手たちの持っているパフォーマンスも重要な要素となっています。ひとりひとりの選手にあっては戦術的な部分での理解度が高く,しかも戦術的なピクチャーの描き方にブレがほとんどない。


 このバランスが,彼らの最大の強みではないか,と見ています。


 このことを裏側から見れば,スカウティングによって得られた特徴を超えるものを提示できなければ,相手を混乱に陥れることは難しい,ということになります。自分たちのラグビー,という部分では確かに抑え込む部分が出てくるのかも知れませんが,戦術的な柔軟性をどれだけ持っているか(=攻撃面でどれだけ多くのオプションを持っているか)が,対サンゴリアスでは厳しく問われることになるでしょう。


 準決勝で対戦したブレイブルーパスは,この部分においてサンゴリアスの想定を超えることができなかった,ということになるのではないでしょうか。サンゴリアスがゲームのリズムを掌握し,そのリズムの中でブレイブルーパスは自分たちの強みを抑え込まれる。先手を取られ,レフェリングに対する微調整に対して時間がかかってしまう。局面ベースではブレイブルーパスが「らしさ」を表現できた部分もあるかも知れないけれど,ゲーム全体を俯瞰するならば,サンゴリアスのリズムで戦わざるを得なかったように感じます。


 対して,ワイルドナイツです。


 彼らの強みは,厳しく鋭いファースト・ディフェンスでありましょう。攻撃面ではトニー・ブラウンの正確なキックに連動するハーフ団の仕掛けが効果的でありますが,この形に持ち込む直前の段階は,鋭いディフェンスからのボール奪取です。この強みは,ワイルドナイツを特徴付ける要素ではないか,と感じます。


 であればこそ,集中した守備応対が続けられるか,が鍵を握るものと見ています。準決勝では,トヨタ自動車ヴェルブリッツの仕掛けに対して,ディフェンスが緩む時間帯が存在しました。また,主導権を掌握しながら仕掛けている局面において,その仕掛けを相手に寸断されボール支配権を奪われた時に,どれだけ早いタイミングで展開を抑え込めるか(抑え込めないとしても,仕掛けをディレイさせられるか),も準決勝で表面化した課題ではないかな,と思います。


 また,相手の持つストロング・ポイントはラインアウトやモール。特にモールを構築されてしまうと,静的な状態では押されることのない状態であっても,弱い部分を的確に突かれながらモールをドライブされてしまうと簡単に止めることができない。であるならば,マイボール・ラインアウトで確実にボールを保持することは相手の仕掛けを封じるためには大きな意味を持つはず。どれだけ安定してラインアウトを獲得し,ボールをハーフ団へと供給できるか,が自分たちの持ち味を表現するためには大事になってくるに違いない。


 ・・・さてさて。


 清宮監督のことですから,隙なんぞは作らんでしょう。準決勝終了後の記者会見では,「勝ってもいるし,ワイルドナイツのことは確認していない」などとコメントしておりましたが,「あり得ない」でしょう。ヴェルブリッツの仕掛けも当然参考にしながら,再びワイルドナイツの仕掛けを抑え込もうとしてくるはずです。


 この相手に対して,宮本監督をはじめとするコーチング・スタッフが,戦術的な部分での柔軟性を持ち込めるか。ワイルドナイツの持っている「らしさ」を表現するためには,相手の強みを抑え込むという発想も必要となります。彼らの形に「持ち込ませない」という意識を,簡単な戦術的約束事へとまとめ上げていければ,「クリンチ」ばかり,という言葉は使わないで済むかも知れません。


 勝負であれば,「勝つこと」が最優先項目となるのは当然です。清宮監督は,この要素を絶対的な基盤として持っている。ならば,宮本監督もナイーブなことを言っている場合ではありません。勝って,2007〜08シーズンを主導してきたのがどのクラブか,ハッキリと証明しなければならないはずです。


 再び,雌雄を決する舞台に,同じ対戦相手と立つのです。同じミスを繰り返すわけにはいきません。勝負にこだわったゲームを見たい,と思うのです。