1098F08。

さすがに強いですな。


 2008シーズンから新たにマシンを投入しているのですが,マイナー・トラブルの気配もない。ただ,「眼下の敵」であるスズキを,少なからず意識しているようでもあります。車両規定の問題を,意識せざるを得ないからでしょうか。
 まずは2ラウンドを終了しています。3ラウンドを終了して,圧倒的な強さを見せつけ続けているとすれば,彼らの懸念はともすれば現実のものとなるかも知れません。


 ということで,フットボールから離れましてスーパーバイク選手権の話などを。





 タイトルに掲げたコードは,今季ドゥカティが投入したレーシング・バイクのものです。


 “1098”というコードネームですから,いままでのドゥカティのように排気量は1098ccかと言えば,そうではありません。2008シーズンから,2気筒マシンの規定排気量は1000cc以下から1200cc以下へと引き上げられています。そのために,ベース車両である“1098R”の排気量は1198ccに設定されているわけです。


 ごくカンタンに言うならば,ドゥカティはかつてのグループAベース車両とまったく同じ開発手法を採用しているのです。


 FIMによる車両規定を読み込めば,“1000台限定のレーシング・プリペアード”を用意することができれば,チューニングが不可能な部分に対して,レーシングな環境での使用を想定した部品を組み込むことができる,ということが見えてきます。車両規定では,コネクティング・ロッドの材質変更は許されていません。レースに向けたチューニング,その範囲外となるわけです。そこで,ベース車両である“1098R”ではコネクティング・ロッドを“1098”に採用されているスティールからチタニウムへと変更,さらに専用設計されたピストン,シリンダーヘッドとともに,レーシング・フィールドを強く意識したエンジンを搭載しているのです。


 レーシングな要素を突き詰めるのであれば,ドゥカティのアプローチは「正攻法」です。
 そして,2008シーズンは,素晴らしいスタート・ダッシュを決めています。
 WSBKは1ラウンドで2レースを戦う形になっています。今季は,現段階で2ラウンドを終了,ドゥカティのエースであるトロイ・ベイリスが88ptsを獲得してライダース・ランキング首位,2位にはGSX−Rを駆るフォンシ・ニエトが27pts差で追っている,という形であります。


 ただ,彼らが懸念しているのは同じ「車両規定」なのです。


 今季のマニュファクチャラー・ポイントを考えると,2ラウンド終了時にして2位に対して32ptsの差を付けています。ここが,「もうひとつの車両規定」を意識せざるを得ない要素なのです。
 90ページにも及ぶPDFファイルですので,敢えてリンクは張りませんが,FIMの車両規定では2気筒マシンは対4気筒マシンで6Kg増の168Kgが最低重量とされます。この重量規定が成績によって見直される可能性があるのです。
 現状においては“ウェイト増”という方向性なのは間違いありません。もちろん,2気筒マシンが4気筒マシンに比較して成績が上がっていかない場合には,最低重量が軽くされるのですが,現状ではその心配はほぼあり得ません。3ラウンド終了時において,3Kgのバラストを積まされる可能性があり,このバラストは車両最低重量が171Kgに達するまで増加する可能性がある,というわけなのです。
 となると,JGTCのような「バラスト調整戦略」を組んでくる可能性もありますし,そもそもドゥカティ・ワークスが最低重量でマシン・バランスを取るのではなく,3Kg,あるいは6Kgのバラストを搭載した状態でマシン・バランスを最適に持っていくような方向性を意識しているかも知れません。


 となると,であります。


 第3戦(ヴァレンシア)であったり,第4戦(オランダ・アッセン)でのドゥカティの戦い方がかなり興味深いものになりそうです。真正面から「バラスト上等」な勝負を挑むのか,それともシーズンを意識した調整をかけてくるのか。エースであるベイリスのライディングだけでなく,ドゥカティ・ファクトリーがどのようなレース・マネージメントを見せるのか,という部分も今季のWSBKでは注目ポイントであるように思います。