パナソニック・ワイルドナイツ対東芝ブレイブルーパス戦(12〜13TL・POT)。

守備応対が崩れなかったチームと,綻びを見せたチームと。


 攻撃的な要素がどれだけ表現できたか,と言うよりも,守備応対をどれだけ組織的に,そして徹底して繰り返すことができたか,という部分で決勝戦への切符が奪えるかどうかが決まったような印象を持ちます。


 さて。今回も楕円球方面のフットボールプレーオフ・トーナメントのお話を書いていこう,と思います。クラブ大会の段階でも時折,強い季節風が吹きつける状態だったのですが,14:00近くの段階になると,風が複雑に巻いてきていたように思います。基本的には,神宮方向から吹き抜けているようなのですが,バックスタンド方向からメインスタンド方向へと吹いている風もある。この時期,風を計算してエンドを取る必要がある秩父宮ですが,この日について言うならば,風が絶対的なアドバンテージ,あるいはデメリットとは言いにくい,いささか難しいコンディションであったように思います。


 それだけに,というわけでもないのでしょうが,エリアを奪うためにキックを狙う,と言うよりはパスによってボールを動かしながら相手守備ブロックの隙を狙う,という攻撃をワイルドナイツブレイブルーパスともに狙っている時間帯が多かったように感じます。であれば,ノーファウルで厳しい守備応対を繰り返すことができるか,が問われていたように思いますし,前半段階でのロースコア(3−3)は,双方ともに相手が狙う攻撃を抑え込めていたことを示すものではないかな,と思います。


 後半,この試合のファースト・トライを奪取するのはワイルドナイツだったのですが,このトライ奪取以降の時間帯,ワイルドナイツブレイブルーパスの後手を踏んでいたように思います。ロースコアなゲームでファースト・トライを奪えたことが,むしろブレイブルーパスの仕掛けを受け始めるきっかけになってしまったように感じるわけです。過去数季を振り返ってみるに,ワイルドナイツの大きな強みは接点での強さ,ボール・コントロールを奪う守備応対にあったように思うのですが,そんな強みがこの日の秩父宮からはなかなか感じ取れなかった。また,相手FWの圧力を意識し過ぎていたのか,スクラムのエンゲージが神経質になっているようにも感じましたし,コラプシングを取られる局面も比較的多かった。イーブンな状態から,試合を再び動かしたはずなのだけれど,その動かした流れを自分たちに引き寄せきれないで,むしろ相手の流れに嵌り込んでいったように思います。


 対してブレイブルーパスは,トライを奪われた直後の時間帯からリズムがよくなってきたな,と思います。微妙にズレを生じ始めた相手の守備応対,その隙を的確に突くことができるようになってきたように感じますし,守備応対では前半段階のようなタイトさを維持し続けることができた。ワイルドナイツとしては,ファースト・トライ以外にBKをうまく活かす攻撃が仕掛けられなかったように感じる一方で,ブレイブルーパスはらしい攻撃を仕掛けられる時間帯が見えていた。前半段階だけで試合を判断するならば,確かにどちらが決勝戦への切符を奪っても不思議はないかな,と思わせるものがありましたが,後半12分以降の時間帯を含めてみれば,相手の攻撃を抑え込むこと,そして自分たちの攻撃の形を表現することに対してより集中できていたブレイブルーパスが決勝戦への切符をつかんだのは,フェアな結果であるように感じます。


 さてさて。リーグ・スタンディングから考えても,むしろ当然と言うべきチームが決勝戦へと上がってきました。となると,どんな戦いぶりになるのだろうか,と思うところですが,やはりサンゴリアスの攻撃力はブレイブルーパスにとって大きな脅威であろう,と思います。相手守備ブロックを斜めに断ち割っていく鋭さ,であります。この鋭さをどれだけコントロールできるか。決して簡単なタスクではないと思いますが,ブレイブルーパスには決勝戦を面白くしてほしい,と思います。