東芝ブレイブルーパス対三洋電機ワイルドナイツ戦(TL最終節・#2)。

ちょっと,懐かしい表現をしたくなりました。


 東芝府中と。


 薫田監督が構築したチームは,守備面と攻撃面がかなりの高みでバランスした,何とも凄みを感じるチームでした。
 どの時間帯でも,ブロックがなかなか崩れない。「壁」が押し寄せるように攻撃が仕掛けられ,守備をしている。
 そこまでの凄みを感じたわけではないけれど,部分的に「戻ってきた」と感じさせるには十分な試合だったように思います。


 ・・・ほぼ1週間遅れでございます。申し遅れましたが,かなりの遅筆堂でございます。ということで,秩父宮,その2であります。


 第1試合から,すでにワイルドナイツ関係なひとや,ブレイブルーパス関係なひとがスタンドには多く見かけられましたし,実際にインターバルを経過してもクラブハウス方向からの人波が途切れることはありませんでした。それだけ注目を集めていた試合,ということになりましょう。


 さて。予想通りだったか,それとも予想を大きく裏切るものだったか。それは視点によって大きく異なるかも知れません。


 まず,予想通り,と言いますか,プラン通りに運べただろうブレイブルーパスから。


 最も目を引いたのは,接点での鋭さでしたね。ラグビー用語で“ジャッカル”などという言葉がありますが,その説明をするのに好適なボール奪取でありました。
 まずは,ボール・キャリアに対するタックルが低く,鋭く繰り出されます。ここで,しっかりと仕掛けを止めないと,ジャッカルどころではありません。そして,ポイントへのサポートが速い。そのために,グラウンディングしたボールへのアプローチで,先手を打つことができるわけです。また,相手のファウルを誘うこともできます。
 そんな状態でしたから,ワイルドナイツがコントロールしている状態でのブレイクダウンでも,それほど時間を掛けることなくボール・コントロールを奪っています。ワイルドナイツがいい形で攻撃を仕掛けられなかった大きな要因として,ブレイブルーパス


 「攻撃的な守備」


が関わっているように,個人的には感じられます。


 仕掛け,という要素だけを取り出してみれば,恐らくブレイブルーパスワイルドナイツとの間にある差は,「僅差」というレベルにあるものと思います。実際,BKにいい形でボールが収まれば,「縦」へのスピードを武器とした仕掛けを繰り出すこともできるし,鋭さもある。ただ,仕掛けを「継続」させることができなかった。ファースト・ディフェンスでしっかりとワイルドナイツの攻撃を抑え込み,ボール・コントロールを奪い取ると,エリアを再び奪いにかかる。そのときにチームが前掛かりになっていれば,シンプルなカウンター・アタックを仕掛け,BKが構えているならばそのBKを動かすキックを繰り出したり,タッチを狙うキックを繰り出す。


 守備が高い安定性を持っているから,仕掛けも安定する。ポジティブな循環が作用していたな,と思います。


 一方,ワイルドナイツですけれど。


 課題が最終節に集中してしまったかのような,そんな試合でした。
 特に悪かったのがセットピース,なかでもラインアウトでありました。
 マイボール・ラインアウトでボール・コントロールを維持することができず,相手に仕掛けの起点を提供してしまっていましたから,当然相手ボールのラインアウトでボールを奪うこともできず,ほぼ受身の状態でありました。
 また,コンタクトで後手を踏んでいたようにも感じます。
 ここ数季を思えば,コンタクトでリズムを作るのはワイルドナイツであったかと思うのですが,このゲームではそのリズムをブレイブルーパスに作られてしまったな,と思います。ボール・キャリアへのアプローチ,そのちょっとした遅れがディフェンスから鋭さを奪い,結果としてゲームを支配するリズムを相手に握らせてしまう大きな要因になってしまう。


 組織のバランスが,決して良くはない。


 時間帯限定ではあっても,仕掛けの鋭さはある。「個」の高さは,確かにあるわけです。でも,その個を「チームとして」どう生かすか,というピクチャーがこの試合を戦うチームからはなかなか感じ取れなかったのも確かです。


 ・・・「結果」で何かを表現しなければならない。


 そんな状態に追い込まれていたのは,恐らくブレイブルーパスだったでしょう。対して,ワイルドナイツは2季連続で全勝通過,という意識がどこかにあったと思いますし,その意識がネガティブな方向に作用してしまったかも知れません。


 「負けられない(ミスはできない)」


という意識で,自分たちから自分たちを縛ってしまわなかったか,と。そんな意識が,試合に入る姿勢へと投影されて,結果的にはゲームを貫くリズムにまで影響してしまったのではないかな,と感じます。


 はっきりと「受けた」つもりはないだろうけれど,実際には「受ける」姿勢でしかなかった。最終節時点でのパワー・バランスは明らかに,ブレイブルーパスに傾いていた,ということになるでしょうか。


 ワイルドナイツにとっては,決して繰り返してはならないゲーム。対するブレイブルーパスからすれば,徹底してイメージに落とし込むべきゲーム。想像していた以上に,明確なコントラストを描いてしまったゲームだったと思います。