対ボスニア・ヘルツェゴビナ戦(KCC2008)。

ファイナル・スコアだけを取り出せば,仕上がっているようには見えるけれど。


 仕上がっていると言うよりは,少しだけ上昇曲線,という感じでしょうね。


 短期的なピークは予選初戦に置くべきで,そういう部分から言っても,課題があるくらいがいいだろう,と。・・・ちょっと,ポジティブにバイアスを掛けております。


 いつも以上に遅い,ボスニア戦であります。


 でありますれば,ゲームそのものを追うのではなく,岡田監督の記者会見コメント(スポーツナビ)をもとにしながら,感じるところを短めに書いていこうかと思います。


 さて。岡田監督も(かなり控えめに)触れていましたが,仕掛けのリズムという部分では初戦よりも明確に表現できる範囲が広がっていたように思います。思いますが,なかなか「縦方向」への加速が作り出せず,仕掛けが脅威に直結する時間帯が前半,特に立ち上がりには少なかったように思います。


 確かに,後半にあっては縦方向への鋭さであったり,流動性を感じさせる時間帯もありましたし,実際に追加点奪取は縦方向への突破から生まれてもいます。いますが,このゲームでは,ファイナル・スコアだけでチームの熟成度を測るよりも,時間帯限定でボスニアが仕掛けてきた攻撃を想定しておくことが意味があるか,と思うのです。


  ごく大ざっぱに言うならば,“アジア”での戦いを思うと「シャロー」の怖さも意識しておかないといけないかな,と思うのです。


 シャロー。


 「接近・展開・連続」に乗っかる形ですが,ラグビーフットボールの用語であります。守備面における「接近」とでも考えればいいでしょうか。ボール・キャリアー(ボール・ホルダー)への間合いを詰め,プレッシャーを掛け与えていくディフェンスであります。


 恐らく,岡田さんはこのディフェンス・イメージをフットボール的に表現しているはずです。確か,サッカー専門誌でのインタビューでもシャロー・ディフェンスのことを意識していたようなコメントを残していたように記憶しています。


 ボスニア戦での仕掛けでも,確かにシャローのエッセンスはあるな,と感じます。


 相手は当然,このプレッシングを回避する方策に出てくるはずです。カウンター・シャロー,とでも言いましょう。


 たとえばロングレンジ・パスによって,プレッシングを仕掛けてくる裏へボールを繰り出してくる。あるいは,ボールを狭いエリアでコントロールするのではなく,大きく展開することでプレッシャーを回避していく。


 そのときに,守備ラインがどれだけ押し込まれることなく,適切な距離感を維持しきれるか,も大きな要素になってくるだろう,と思うのです。


 このゲームでは時間帯限定であるにせよ,相手はロングレンジ・パスを基盤に据えながら仕掛けを組み立てていたように思います。そのときに,フィニッシュという部分では必ずしも精度を伴ったものではないにせよ,一定程度の脅威を作り出されていたように思います。


 カウンター・シャローへの対策を講じると同時に,自分たちの仕掛けを巧みに織り交ぜていく。前任指揮官もちょっと手を焼いたように思える,「アジア仕様へのアジャスト」がどこまでできるか。


 予選で,鋭いスタート・ダッシュを決められるかどうか,は,指向するフットボール・スタイルをアジア仕様のフットボールに対して微調整していくことができるか,にかかっているようにも感じます。


 カウンター・シャローへの対抗策のチェックが,ちょっと中途半端に終わってしまった。ゆえに,ファイナル・スコアだけでゲームを評価するのではなく,ちょっと割り引くべきかと感じるのです。