ストラッカ童夢、ル・マン参戦中止。

「部品単位のトラブル」とのことですが。


 ストラッカ・レーシングからのリリース(英語)を斜め読みする限りでは,単純な部品ではなさそうです。今回も引き続きフットボールから離れまして,童夢からのリリースをもとにちょっと短めに書いておこう,と思います。


 ストラッカからのリリースでは,ル・マン24時間耐久に向けたテストをスパ・フランコルシャンで実施していた,とのことですが,このテストの初日,オー・ルージュを走行中にコースオフを喫し,マシンにダメージを負った,とのことです。チーム監督によれば,テストを担当していたドライヴァは負傷などを負っているわけではないものの,トラブルが発生した原因を突き止めること,そしてコース・オフによって破損した部品(このリリースを読む限りでは,原因となる部品のダメージのみならず,コース・オフによってマシンの複数箇所にダメージが及んでいる可能性を見ておく必要性もありそうです。)を修復するとともに交換用部品を用意するための時間が不足していた,とのことです。


 このストラッカからのリリースを合わせて考えてみるに,です。


 個人的な推理,かつ一般論ですが,童夢がS103専用に設計し,製作した部品が何らかの原因によって破損,その原因が設計段階の問題に起因するものなのか,それともパーツ・サプライヤーによる製作段階での問題に起因するものなのか,確認するための時間が不足していた,ということをストラッカからのリリースは指摘しているのではないでしょうか。童夢からのリリースを読むに,マシン設計も遅れていたようです。であれば,パーツ・サプライヤーに対しても十分な時間が用意できなかったのではないか,と考えるわけです。また,今回のS103はマシン設計を童夢が担当,実際のマシン製作は欧州で,という作業分担がなされていたわけですが,部品製作段階でどれほどのコミットを童夢サイドができていたのか(あるいは,ストラッカがどれだけしっかりと童夢と連絡を取り,パーツ・サプライヤーに対してコミットする体制ができていたか),という部分も気になる部分です。建築用語になりますが,S103開発に際して「設計監理」が機能しているとは言いがたい状態だったのではないか,と思うのです。


 冒頭にも書きましたが,童夢は今回のトラブルを「部品単位が中心のトラブル」としていますし,間もなく収束するとの見通しを示しています。マシン設計の遅れが結果としてすべてのスケジュールをタイトなものとしてしまったがために,トラブル・シュートに使える時間が決定的に不足,ル・マン参戦を中止するという決断に至ってしまったことは残念と言うしかありませんが,トラブルを潰しきれていない,中途半端な状態のマシンで評価を受けてしまうよりも,トラブルを徹底的に潰してWECへとマシンを持ち込み,カスタマー・シャシーを手掛けるコンストラクターとしてしっかりとした評価を受けることを,私としても望んでいます。