対名古屋戦(14−GL#7)。

相手が置かれた立場を,自分たちの優位性へと転換すること。


 このような課題をグループリーグ最終節に際してセットしていた,と推理(仮定)するならば,この課題への回答は一定程度描き出せた,と同時に課題(とは言え,差し引くべき要素もある,と思いますが。)も見えた,と評価すべきではないか,と感じます。グループリーグ最終節,な名古屋戦であります。ヘルタ・ベルリンへの移籍が発表された原口選手にとって最後の公式戦でもあり,単なるグループリーグ最終節,というだけではない意味があったように思うのですが,こちらについては原口選手のことを含めてあらためて書いておこう,と思っています。今回は,試合そのものについてまとめておこう,と思います。


 さて。おおざっぱに試合を振り返ってみますに。


 ゴールを奪う,という要素だけは埋められなかったものの,ごく立ち上がりの時間帯から主導権を掌握することができていたように感じます。先制点を奪取した局面を振り返るに,縦への意識,機動力とシンプルなパス・ワークによって相手守備ブロックが見せた隙を的確に突くことができていたように感じます。その後,スコアをイーブンな状態へと引き戻されるものの,前半終了を意識する時間帯に再び得点を奪い,リードを築いた状態で試合を折り返します。


 この段階で課題を見るならば,やはりスコアをイーブンな状態へと引き戻された局面ではないか,と思います。攻撃面でリズムを引き寄せられている,という感触は強かったと思いますが,今節はリスク・マネージメントという部分でちょっとルーズな部分を見せてしまった,という印象です。ボール・コントロールを相手に奪われたあと,ボール・ホルダーへのアプローチが仕掛けられなかったことで,守備ブロックがバランスを整えるための時間を用意できない。バランスが悪い状態で相手の縦に対する対応を取る形に追い込まれ,アプローチを外されてしまうと決定的な局面を相手に作らせることになってしまう。昨季の課題,とも言うべき要素ではないか,と思いますが,今節はそんな課題が前半段階で見えてしまったように思います。


 後半立ち上がりからの時間帯を振り返ると,今季序盤に見えた課題,ゲーム・クロックが45;00から再び動き出し,60;00前後を表示するまでの時間帯,相手が狙う戦い方に引き込まれてしまってなかなか後手を精算できない,という課題が今節にも見えていたように感じます。リードを築いている状態ですし,ペースを落とす,という判断はコンディションなどを考えれば決しておかしなものではありません。しかしながら,チームとしての意識が相手の戦い方に対して「受ける」ような状態に無意識的であるにせよ,嵌り込みかけてしまったように思うのです。失点,という事態は回避できたものの,どのようにして相手のリズムから自分たちのリズムへと引き戻していくか,チームとしてイメージを明確にしておくべき要素であるように感じます。


 この流れを変えるきっかけとして,戦術交代が機能した部分も決して小さくはないかな,と見ています。


 最初にダッグアウトが仕掛けた戦術交代は,平川選手に代えて関根選手,というものでした。縦への鋭さを意識付ける,たとえば相手守備ブロック背後のスペースを狙う機動性を高める,というメッセージを打ち出すことによって,単純に相手の攻勢を「受ける」のではなくて,ボール・コントロールを取り戻したあとのイメージを明確なものとする。チームが自律的に戦い方のギアチェンジができれば理想的,ですが,ベンチワークによって戦い方に変化を加えることも必要な部分,でしょう。その意味で,この戦術交代は今節における鍵,そのひとつだったように感じます。


 戦術交代,という意味で言えば,山田選手の投入もポジティブな要素ではないか,と思います。浦和のアタッキング・ミッドフィールド(インサイド・ハーフ),ここまでの主力が持っている個性とは明確に違う個性をピッチに表現してくれていたのではないか,と思います。戦術的な枠組みから見ると,必ずしもポジティブな部分だけではない,かも知れませんが,少なくとも明確に違うリズムを刻むことができている。このリズムをどのようにして「浦和が狙う戦い方」のアクセントとするか。指揮官にとってはチャレンジングな課題,かも知れませんが,この個性をアクセントとして取り込めるならば,戦い方の幅は大きく広がるのではないか,という印象(期待)があります。


 さてさて。冒頭の話に戻りますと。


 相手の動向にかかわらずセカンド・ラウンドへの進出を決めるためには,今節での「勝ち点3」奪取が必要とされていた相手の立場を,自分たちの優位性へと転換することを,今節における課題とするならば,しっかりとこの課題をクリアすることができた,と見てもそれほどアンフェアではない,と思います。反面で,立ち上がりから自分たちの狙う戦い方へと相手を引き込む,という意図が明確に感じられる戦い方であったがためか,リーグ戦では抑え込むことができていた課題,昨季の課題であったり今季序盤での課題が再び見えたことも確かではないか,と思うのです。自分たちが狙う戦い方を表現することと,リスクを的確にマネージする,という部分とをどのようにバランスさせるか,中断期間にさらなる煮詰めを,と思っています。