2シーズン制、あるいはポストシーズン制。

リーグ戦に,カップ戦的な要素を持ち込みたいのだな,と。


 であるならば,カップ戦をもっと大事にしてほしい,と思います。指揮官の戦略,たとえば主力とリザーブ,その実力差を埋めるためにカップ戦を活用する,という戦略的な意図に基づいてスターターを組むことはベスメン規定によって難しくなっているし,かといって勝負を仕掛けるべくベストメンバーを組めるのか,と言えば,日程上の問題があってベストメンバーを組むことは事実上不可能です(どのカップ戦のことか,お分かりかと思います)。このようなカップ戦のマネージをしておきながら,リーグ戦の活性化のためにカップ戦的な要素を持ち込みたい,と。


 誤解を恐れず書けば,シャーレの重みは,カップの比ではない。このシャーレの重みを,何だと思っているのか。


 「勝ち点1」の意味を低下させ,「勝ち点0」が持っている重みを小さくするような競技規則がフェアと言えるのか。長いシーズンを通じて安定したパフォーマンスを発揮したクラブ,年間を通じて,勝ち点を最も多く積み上げたクラブは「配慮」されるべき存在などでは断じてないはずです。ポストシーズンという短期決戦,もうちょっと時間軸を広げれば,シーズンの半分を駆け抜けただけのクラブと同列に扱われる存在ではない。加えて書けば。優勝を決める基準,スケールには年間勝ち点を使わないのに,降格を決めるスケールは恐らく,年間勝ち点になるはずです。それならば,降格を決定するためにもポスト・シーズンが用意されなければフェアではない,という話にはならないのでしょうか。


 とは言え。どのような競技規則を設計するか,それはリーグ・サイドの専権事項であって,外部の意見に左右されるものではない,かも知れません。外野からはなかなか理解が難しい,クラブ・マネージメント面での大きな問題があって,どうしてもキャッシュを増やす必要がある,のも確かなのでしょう。


 であるとして,なぜ国際基準を指向するために止めた2シーズン制に戻す必要性,必然性へと論がつながっていくのでしょうか。この必然性を説明する前に,個人的にはすべきことがあるだろう,と思っています。いささか前置きが長くなりましたが(と言いますか,前置き段階で旗幟を鮮明にしておりますが),ポストシーズン制のことについて書いていこう,と思います。


  ちょっとばかり,歴史の針を巻き戻してみます。


 確か,リーグ初期に放映権を支えていたのはNHKとTBSだったか,と思います。彼らとの契約が満了するにあたって,NHKとTBSは放映権料の減額を打診してきたとか。Jはアメリカン・スポーツ的な側面を持っていて,放映権はリーグが管理,放映権料は各クラブへと分配するという方法論を採っているはずです。NHKやTBSが打診する,放映権料の減額を呑んでしまえば,各クラブへの分配金は減少してしまう。なかなか入場料収入がクラブ収入の柱になりきれていないクラブにとって,リーグからの分配金は大きな意味を持っています。そこで,リーグはCSとの契約に踏み切ります。


 CSはそれまでも「実質的に」全試合の中継をしてくれていたように思います。この姿勢をより強め,リーグ戦の全中継を押し出すようになった。ただ,リーグをどう一般へとプロモートし続けるのか,という側面からこの決定を見るならば,必ずしもメリットだけで語れるものでもないだろう,と思うのも確かです。分配金というキャッシュ・フローは確保できたかも知れないけれど,地元地上波などでの露出度が大幅に下がってしまったこと(制作では地元UHF局との協力体制があるものの,放送面での協力体制が敷かれているとは思えない),地上波キー局が試合中継からの実質的な撤退だけでなく,ダイジェスト番組を縮小,打ち切ったことで,露出が大幅に下がってしまった。のみならず,CSのコンテンツである,ということは当然,欧州主要リーグと同じ目線でJが比較されることにもなり,マイ・クラブを持たないひとにとっては,Jの「足らざる部分」ばかりが目に付くことにもなりかねない。プロモート,という部分で見れば,すでにJリーグを追い掛けているひとにとってはメリットがあるけれど,フットボールという競技の玄関口にいるひと,玄関に向かうかも知れないひとにとっては,間口を狭めるような形の戦略になっていた(端的に言ってしまえば,「タコ壺化」です。)ように思うのです。


 このことを,リーグ・サイドはどのように考えているのでしょうか。


 プロモート,という部分を甘く見てはいなかったでしょうか。欧州基準を指向すべき部分と,欧州基準とは違う方向を指向すべき部分がある,というのはその通りでしょう。であるとして,競技規則の部分で欧州基準を指向したのが問題だった,というのはどうでしょう。むしろ,放映権戦略という部分で「先走って」欧州基準に合わせてしまったところはないでしょうか。シーズン・チケットを買おうと思っても,あまりに長いウェイティング・リスト,その最後尾に並ばないといけないフットボール・ネイションと,シーズン・チケットの販売戦略に知恵を絞らないといけない国,それどころか,ひとつの試合のチケットをどう販売していこうか,知恵を絞らないといけない国を同列に扱って,CSを軸足とするという決定は,ちょっとばかり早かったのではないか。


 プロフェッショナルとしては,まだ20年を経過したばかりのリーグにあっては,判断の基礎にプロモートという側面は落とせないものと思います。リーグをさらに大きく育てるために,何をすべきか。地域に根差すクラブを,オレの(私の)クラブと思ってくれるひとを,ひとりでも多くすることであって,すべての出発点はこの部分に置かれるべきです。しかしながら,リーグの論理はどこか,キャッシュ・フローの最大化から離れられていない(重要な要素であることは確かですが,これだけを重視すればいいというものでもない)ように思うのです。そのために,プロモートという側面が落ちてきたことがあるのではないか。いまの話は,過去におけるプロモート戦略の失敗にあるものと個人的には感じますし,過去の失敗が現在においては解決している,とも思えない。どのようにしてリーグをプロモートするのか,その結論がポストシーズン(2シーズン制)導入とは,あまりに安易な結論ではないか,と。であるのみならず,恐らくは放映権料の目減りを最低限で抑え込む,あるいは何としても放映権料を上積みするための方法論ではないか,と思っています。