2ステージ制よりも放映権戦略を。

何としても,地上波での露出を取り戻したい。


 リーグ事務局であったり,各クラブ担当者には,確かに危機感があるのだろうとは思います。競技場へと,「新たに」足を運んでもらうためにも,より多くのひとの「目」に触れることが重要であって,そのためには「選び取って視聴する」形のCSではなくて,地上波で取り上げてもらうことが大きな鍵となる。また,スポンサーへの訴求度を高めるためにも,メディア露出度を高める必要があって,そのためには地上波という存在は無視できない,と。


 なるほどね,とは思いますけどね。


 今回は,放映権戦略という過去のエントリを引っ張り出しつつ,放映権戦略について再び考えてみよう,と思います。


 さて。2シーズン制導入の背景として,スポンサーへの訴求度を高めるということがスポーツ・メディアさんでは指摘されています。チャンピオンシップの再導入によって,タイトル・スポンサーを新たに付ける,であるとか。


 では,かつてチャンピオンシップがあった時代のことを振り返ってみましょう。


 確か,リーグ・チャンピオンシップのタイトル・スポンサーはサントリーさんです。各ステージにもタイトル・スポンサーが付いていて,確かステージ段階でのスポンサーもサントリーさんが担当していました(もうひとつのスポンサーは,日本信販さんだったかと。)。Jリーグが立ち上がった最初期から長くリーグを支えてきてくれた会社です。では,Jリーグはサントリーさんに対して,どのような権益保護を図ってきたでしょうか。たとえば,競技場内で販売されるビールがサントリーさんだけであったり,競技場の敷地内でプロモーションを展開できるのがサントリーさんだけ,クラブのスポンサーが同業他社である場合であっても,リーグ・スポンサーを最優先させる,などという徹底した姿勢を取ってきたでしょうか。スポンサーの権益保護,一定程度以上のメディア露出を意識して,放映権ビジネスを展開してきたでしょうか。スポンサーにはなったけれど,プロモーションなどの側面でメリットがなかった,というのがホントのところではないでしょうか。トップ・パートナーとして,どれほどの金額が提示されるのか,外野としては知る立場にありませんが,投資に見合う効果を期待できない,という評価を受けても仕方ないのではないかな,と思うのです。

 
 2007年段階でも書いたことですが,CSに軸足を置く,その時期が早すぎたのではないか,という思いは変わっていません。むしろ,2007年段階に懸念した通りの形になっていないか,と思っています。放映権戦略で,決して小さくない判断ミスを犯していたのではないか,と思うわけです。


 CSは,すべての試合をカバーすることができる。大きなメリットではあるだろう,と思います。しかし同時に,フットボール・ネイションのリーグ戦などと同じ位置で「比較」されることになったのではないか,と思います。欧州を基準にして,Jの持っている商品性が評価されるようになった,とも言えるでしょうか。特定のクラブをすでに追い掛けているひとならば,欧州との直接比較をすることはないでしょう。むしろ,比較などに意味はない,と思っているかも知れません。けれど,特定の「マイクラブ」を持たないフットボール・ファンのひとたちに対して,フットボールの魅力をより強く感じられるのは,と投げかければ,恐らくJという答えは返ってこないかも知れません。プレミアシップであったり,ブンデスリーガ,という答えが返ってくる,そんな可能性が高いのではないでしょうか。競技場へと新たにひとを呼び込む,というのであれば,CSがゲートウェイになるというのはちょっとばかり,楽観的に過ぎる見方ではないかな,と思っていたのですが,2007年以降の流れを見る限り,地上波での露出が減少した,そのデメリットが観客動員やスポンサーへの訴求力低下という部分につながっている,と見るのも,それほどアンフェアではないかな,と思うのです。


 地上波での露出が少なくなって,リーグの将来に対して不安を感じ始めたから,もういちどリーグに注目してもらおう,スポンサーにも戻ってきてもらおうと意図するのであれば,そもそも放映権戦略という部分から見直すべきなのではないか。そう思います。