対ウェールズ戦(リポビタンDチャレンジ2013)。

ラグビー・ネイションズに近付くための,大事な一歩。


 その一歩を記すことができたのは,確かに「歴史的」なのかも知れません。でも,歴史的な一歩で止まっていては,ラグビー・ネイションズとの距離を縮めていくことはできません。エディーさんが掲げる“ジャパン・ウェイ”というコンセプトを攻撃面でもっと表現すること,攻撃面でのらしさを押し出すことで相手の強みを抑え込む,という戦い方へと近付いていくためにも,ラグビー・ネイションズとの真剣勝負がより多く組まれること(ラグビー・ネイションズとの距離を感じること)が重要だと思いますし,成功体験を積み上げていくことが大事なのだろう,と思います。


 土曜日の午後,秩父宮でのウェールズ戦であります。


 浦和駒場を経由して秩父宮へ足を運んだために,試合開始時刻がかなり近付いた時間帯にスタンドに入ったのでありますが,シックス・ネイションズを連覇したチームとのテストマッチとなると,いつもの秩父宮とはまったく違う雰囲気でありました。夏場の午後,となると,直射日光を受けることになるバックスタンドが満席というのはなかなかイメージできないのですが,この日は言うまでもなく満席状態,ディスプレイが設置されているテラスにも多くの観客が入っている状態でした。


 さて。試合をごく大ざっぱに振り返ってみますに。


 ウェールズを前半段階でノートライに抑え込めたこと,が1つめの目の鍵かな,と思います。


 ウェールズは立ち上がりの時間帯から,積極的に仕掛けてきていたように感じます。早い時間帯でトライを奪い,自分たちのリズムで試合を動かそうという意図があったように思うわけですが,ウェールズの早い時間帯からのラッシュに対して,徹底した守備応対を繰り返すことができていたのが大きい,と見ています。外野から戦い方を推理する限り,秩父宮での日本代表は自分たちが狙う攻撃をどう表現するか,という方向から戦いを組み立てるのではなく,相手が持っている強みをどれだけ丁寧に抑え込めるか,という方向から戦い方を組み立てていたように感じます。


 たとえば,相手ボール・キャリアに対してのファースト・ディフェンスを低く,厳しく仕掛けること,直後にサポートに入ることでボール奪取をも狙う。この段階でボール奪取ができないケースでも,相手が数的優位な局面に持ち込めないように守備応対を繰り返していく。高いエリアでのプレッシャーをしっかりと掛けられているから,大きくエリアを失うような形に陥ったとしても,数的優位な局面に持ち込まれて守備ブロックが大きく崩される,という形を最低限に抑え込むことができていたように思うわけです。


 守備応対面でゲーム・プランを徹底できたこと,が1つめの目の鍵だとすれば,2つ目の鍵は,やはりキッカーの精度ではないかな,と思います。五郎丸選手のキックが高精度で安定していたこと,それもロングレンジなPGであっても精度に狂いが生じていなかったことが,試合をリードして折り返す(6−3)ことのできた,その大きな要素であったように思うのです。


 後半,相手は再びリズムを奪いにきたな,と感じます。立ち上がりから積極的に攻撃を仕掛け,5分にはトライを奪います。この直後の時間帯が,3つめの鍵ではないかな,と思います。トライを奪われたあと,浮き足立つことなくしっかりとした守備応対から攻撃を仕掛けるきっかけをつかみ,トライを奪い返すことができた。のみならず,ウェールズを守備応対に追い込む時間帯もつくることができていました。前半は,守備面で相手の強みを徹底して抑え込み,相手のリズムを崩すと,後半は相手に引き寄せられたか,と思われたリズムを直後の時間帯に引き寄せなおし,自分たちの戦い方へと相手を嵌め込むことができた。理想的な戦い方ではなかったかな,と思います。


 この戦い方を,どのようにパシフィックネーションズ・カップへとつなげていくか,が現段階における最も大きな課題でしょうし,中長期的には,この成功体験をどう拡げていくか,が2019年から逆算しての課題になっていくものと思います。


 徹底した守備応対が,試合の流れを自分たちへと引き寄せる大きな鍵であるのは間違いありません。そこから,どれだけ自分たちの「攻撃の時間帯」を積み上げられるか。ステップを上がれば,より厳しい課題が見えてくるのだろう,と思いますが,厳しい課題を乗り越えていく先に2019があるのだろう,と思いますし,このチームには厳しい課題を乗り越えていくだけのチカラがある,と期待しています。