カスタマー視点で2014からのLMP1。

やはり,ファクトリーでないと勝負権が持てない。


 しかも,特定のパッケージを用意できないと,勝負権が持てない。LMP1に関する技術規則が変更される2014シーズン以降にあっても,基本的な形には大きな変わりはないだろう,と見ています。であるならば,ハイブリッド・システムの搭載を前提としないプライベティアにあっても,といいますか,エネルギー回生機能を搭載しないからこそ,より高性能なエンジンを搭載すること,可能ならばメーカの技術支援が不可欠ではないかな,と考えるわけです。


 カスタマー・シャシーの実力を証明するためにも,戦闘力を持ったエンジン獲得が最も重要な要素になるかな,と思います。このことをメーカ,と言いますかエンジン・サプライヤー側から見れば,技術支援の持つ重み,カスタマー活動がいままでとはちょっと違う段階に入ることを意味するのかな,と感じます。


 またまたフットボールを離れまして,オートスポーツさんのニュース記事をもとに,2014シーズンから技術規則が変更されるLMP1について書いていこう,と思います。


 まずは,童夢さんの新たなLMP1マシンであります。


 確か,童夢さんは2007シーズンに投入したS102を熟成させ,S102.5と呼べる状態にまで煮詰めていたはずです。この延長線上に,2014以降の技術規則に合致するS103(仮称)があるように思います。


 今回,童夢のボスである鮒子田さんは,ワークス参戦と同時にカスタマー・チームへのシャシー販売を意識したコメントをしています。LMP1クラスを戦うプライベティアというと,この記事にもありますが,ローラ・シャシートヨタ・エンジンを搭載するレベリオン・レーシングや,ARXシャシーにHPDエンジンを搭載するJRMなどが思い浮かびます(逆に言えば,この程度しか参戦していない,とも言えるわけですが)。彼らのようにLMP1クラスを戦おうと考えるプライベティアに向けて,シャシーを販売することを狙っているようなのです。


 そこで,童夢さんが読み込んでいると思う,2014シーズンからの技術規則,その要旨(英語・PDFファイル)です。


 2014シーズンから,排気量や吸気制限による性能調整ではなくて,燃料消費量による性能調整へと大きく変化します。ガソリン・エンジン,ディーゼル・エンジンともにタンク容量が小さくなると同時に,ハイブリッド・システムのエネルギー回生効率によって燃料消費率が細かく定められる形になったわけです。プライベティアについてはコスト削減策が導入されていて,最大排気量が5500ccに設定されていますし,ハイブリッド・システムの搭載は禁止されます。


 と見てきますと,プライベティアにあっても高効率なエンジン獲得は大きな要素であることが見えてきます。


 技術規則を読むと,プライベティアはファクトリーと同じタンク容量であることが求められていますから,高出力だけれど燃料消費率に問題を抱えるエンジンだと,ピットストップ回数増加によるタイムロスが想定されます。重量面でのアドバンテージは20kgにとどまっていますから,どれだけエンジンを高効率なものにできるか,ギアボックスのセッティングで効率が最も高い回転域を外さないか,などが求められてくるように思うわけです。


 もともと,LMP1はファクトリーの積極的な参入を促すような技術規則だったような記憶があります。レース屋さんにとって魅力的,というよりも,自動車メーカにとって魅力的な技術規則であることを意識してきている,と言いますか。それだけに,プライベティアがLMP1で勝負を挑むには厳しい条件が出てくるのは仕方ないかも知れません。それでも勝負を挑む,というのが童夢さんらしいな,と思うわけですが,であるならばなおさらに,戦闘力の高いエンジン確保は大きな要素だろう,と見ています。鮒子田さんはワークス参戦に向けてスポンサー獲得,というコメントをされているようですが,スポンサーと同時に強力なエンジン・サプライヤーが必要だろう(可能ならば,レーシング・ディーゼルでしょうか。),と思うところです。