スカイアクティブDでLMP2。

日産ですと,確か欧州日産が出発点です。


 ここでは何回か書いている話でありますが,欧州日産がニスモに話を通す形でVKの供給が始まったのだとか。このエンジンは新規開発ですから,まったく同じケースというわけではありませんが,このLMP2プロジェクトは北米マツダが主導して動かしているようです。スカイアクティブDが持っている潜在能力,恐らくはアウディであったりプジョーの存在も大きかったかな,と思いますが,レーシングな環境でスカイアクティブDのパフォーマンスを引き出し,市販車のプロモーションへとつなげよう,という意図もあるものと思います。


 それにしても,面白いプロジェクトが,欧州であったり北米が出発点になるケースは多いですね。ホントは高島町であったり鶴見であったり,このケースならば府中町方面が出発点でこういうプロジェクトが動き出してほしい(当然,本社がコミットするのであれば,LMP2ではなくてLMP1を期待してしまいますが。),とモータースポーツ・フリークとしては思うのです。


 今回はフットボールを離れまして,こちらのニュース(マツダモータースポーツ)をもとにちょっと短めに書いていこう,と思います。



 ごく大ざっぱに要約しますと,北米マツダマツダ本社,そしてスピードソース・レースエンジニアリング社が協同してスカイアクティブD(CX−5とアテンザに搭載されている2200ccのディーゼル・ターボ)をベースとするレーシング・エンジンを開発,LMP2シャシーに搭載して2013年のル・マン24時間耐久に持ち込む,とのことであります。このリリースで最も興味深く感じたのは,やはり“スピードソース・レースエンジニアリング社(英語)”というクレジットであります。ちょっと斜め読みしてみますと,1990年代後半(会社概要にもありますが,FC3S時代から,ということになりますね。)からマツダとの関係を継続している,フロリダ州に本拠を構えるレース屋さんであります。恐らく,開発の実戦部隊がスピードリソース,という理解でいいかな,と思います。


 たとえば,今季のデルタウィング・プロジェクトにおけるハイクロフト・レーシングのように,経験豊かなレース屋さんの存在はレーシング・マシンの開発にあって大きな意味を持つように思います。


 耐久レースは,スプリントとは違う難しさがあります。レーシングですから,当然に「速さ」は必要な要素です。けれど,速さ「だけ」では十分と言えないのも確かです。ル・マンであれば24時間,その他の耐久レースであれば12時間であったり8時間,という時間枠のなかで安定した能力を発揮できる,だけでなくライバルと互角以上の勝負を展開できるという「強さ」を同時に持っていることが求められるように思います。市販シャシーの能力を最大限に引き出し続けることのできるエンジン,トランスミッションに過度の負担をかけることのないエンジンでなければ,LMP2で勝負権を持つのは難しいでしょう。であれば,シャシーとのコーディネーションであったりトランスミッションとのコーディネーション,という部分で,レース屋さんの存在は大きいだろうと思うわけです。その意味で,マツダとの関係が深いスピードソースの存在は,かつてのマツダスピードのようなものではないかな,と見ています。


 現段階において,スカイアクティブDが搭載されるのはローラ・シャシーであります。LMP2規定に適合するシャシーはほかにもあります。そのシャシー屋さんが,適合エンジンとして“スカイアクティブD”をクレジットするようになるかどうか,は詰まるところ,来季の存在感にかかっているように思います。VKのように,レース屋さんが供給を望むエンジンになることを期待したいところですし,プライベティア支援で存在感を強めてほしい,と思っています。