横浜FM対柏戦(準決勝)。

相手の強みを消し去るために,どう自分たちの戦い方を微調整すべきか。


 恐らく,柏の指揮官であるネルシーニョさんは対戦相手の強みを抑え込むための方法論,そのための戦い方の微調整を徹底してきたのだろう,と感じます。


 決勝戦の舞台でもある,国立霞ヶ丘で行われた準決勝,横浜との柏の試合であります。


 取り立てて千駄ヶ谷エリアに足を運んだつもりもないのですが,不思議とキックオフ・タイムが近付いていくと,足は霞ヶ丘方向に向いてしまっておりました。もちろん,夕刻から違う約束がありましたから,延長戦に入ってしまうと結論までは見届けられなかったのですが,そんな心配はこの試合に関しては杞憂でした。


 さて。自分が追い掛けているクラブのことで,2012年のフットボールなエントリを締めくくれればよかったのですが,なかなかそういうわけにもいきません。ちょっとだけごあいさつを。


 今年は例年になくエントリ数が下がってしまったにもかかわらず,足を運んでくださった方,相変わらずごひいきをいただいている方におかれましては,感謝の言葉だけでございます。ありがとうございます。不思議と(とは言いながら,例年の傾向ではありますが),敗戦原稿なエントリの方が多く読まれているようでありまして,恐らく書き手の思いが敗戦原稿だと乗っかりやすいのかな,と思いながら,そんな原稿を少なくしてくれたチームに感謝,な思いがするシーズンでありました。


 来季はアジアの戦いが入ってきて,過密日程を戦うことになりますから,チーム・コンディションをどう維持するか,が大きな課題になってきます。今季,シーズン中盤から終盤に差し掛かる時期に失速を経験したのは,主力固定によるコンディション悪化が影響しているはずです。チームとしての落ち込みを最低限に抑えるためには,主力へのリザーブの突き上げが必要であるはずです。ファースト・チームを作る戦力,その戦力が数字上何人,ではなくて,チームの基盤として計算できる基盤を可能な限り大きくすることが,来季に向けては求められているのかな,と思います。


 インテリジェンスも,そして機動力も必要なフットボールですから,簡単に基盤が広がるというのは難しいかも知れませんが,その難しさに向かっていくシーズンなのかな,と思います。そんな来季を楽しみにしつつ,2012年最後のエントリを書いていこう,と思います。


 横浜を追い掛けているわけでもなく,柏を追い掛けているわけでもない外野が感じたこと,でありますが,「戦い方」と言いますか,試合にどう入っていくか,という部分が大きな鍵を握っていたかな,と思っています。


 この試合での柏は,リーグ戦を戦っていたときの戦い方と,この試合を戦うための方法論を微妙に変えてきたように感じます。もちろん,出場停止を受けていたフットボーラーが複数いたこと,そのためにベストなパッケージを組めなかったことも影響しているでしょうが,戦い方の重心を,ボールを相手からどのようにして奪うか,奪ったあとにどうシンプルに縦を突くか,という部分に向けていたように感じます。ショートレンジなパスを繰り出すための距離感,コンパクトさというよりは,相手に窮屈さを感じさせるための距離感であってコンパクトさを狙っていたように見えるのです。そして,ちょっとラグビー的な言い方をしますが,接点では厳しさを徹底していたように映ります。守備応対が,相手を追い込んでいくという言葉ではなくて,ほぼボールを奪うと同じ意味であるような,そんなチームとしての守備意識でした。そんな戦い方でリズムを奪い,先制点を奪う。その後,意識が自陣方向に傾いてしまったのか,相手にリズムを掌握される時間帯も見えましたが,守備意識,ボールを奪うという部分での意識が落ちることはなくて,“one-nil”のコントロールを貫くことに成功します。


 対して横浜を預かる樋口さんは,自分たちの強みから戦い方を組み立てたのかな,と思います。相手の強みを潰してリズムをつかむのではなく,自分たちの強みを徹底的に押し出すことで,結果として相手の強みを抑える戦い方を選んだ,と言いますか。


 この試合にあっては,ネルシーニョさんの方法論が嵌ったように確かに見えます。カップ戦にあっては,戦い方をどこまでカップ戦仕様に微調整できるか,がひとつの鍵となっているように感じる部分もありますし,その意味で言うならば,柏はカップ戦の定石に従って手堅く試合を動かそうとした,と見ることもできるかな,と思うのです。と同時に,自分たちが用意してきた戦い方へと相手を引き込んでいく,という「意思」の部分で,どこか横浜は柏の後手を踏んだようにも感じます。気圧された,というレベルの話では当然ないのですが,試合後のコメントからも読み取れるように,自分たちがイメージしていただろう戦い方との違いに,「戸惑った」時間帯があったのは確かのようです。


 それでも,「自分たちの時間帯」を引き寄せたのは確かなことです。先制点を奪われたあとの時間帯,窮屈さが緩んだ時間帯が見えた。その時間帯,横浜が狙ってきただろう攻撃の形が確かに感じられました。けれど,ゴールというピースを埋めることができなかった。


 横浜と柏との間に,明確な差があったかどうか,純然たる外野としては判断が難しいものがあります。けれど少なくとも,いくつかの小さな要素に,確かな僅差はあったかも知れません。どういうプランを描いて試合に臨むか,という戦い方の部分であったり,相手を自分たちの戦い方へと引き込んでやる,という意思であったり。それらの僅差が積み重なって1−0という結果を導いた。外野は,そんなことを思うのです。