Vリーグと下部組織。

下部組織から,ファースト・チームへ昇格する。


 フットボールならば,ごく自然なこととして受け止められるだろう話です。しかしながら,多くの競技では「下部組織」がないケースが圧倒的です。そのことを考えるならば,堺ブレイザーズのケースは大きなインパクトがある話かな,と思いますし,個人的にはもっとインパクトを与えてほしい,と思う話でもあります。


 今回はフットボールを離れまして,市川さんのコラム(スポーツナビ)をもとに書いていこう,と思います。


 まったくもっての勉強不足なのでありますが,堺ブレイザーズは活動開始の翌年から,ジュニアチームを立ち上げていて,すでに11年目なのだそうです。11年目にして,下部組織から直接ファースト・チームへ,という形ではないとしても,ジュニア育ちの選手がVリーガーとなるというケースが出てきたのだそうです。市川さんも指摘していますが,新日鐵堺が実業団としての活動ではなく,地域密着型のスポーツクラブへと軸足を移したこと,地域の競技環境に対する危機感などが,ジュニアチーム,と言いますか下部組織の整備のきっかけになったものと思いますが,裾野を広げながら,同時にトップレベルの選手を積極的に見出していく,という形がバレーボールでも見えるようになったのは少なからぬインパクトがある話であるように思います。


 当然,すべてのチームが堺のようなアプローチを取れるか,というと難しい部分も多いでしょう。


 市川さんもコラムで指摘されていますが,コーチング・スタッフがどういう立場になるのか,など,人的資源に関わる部分の話はそのまま財政的な基盤につながっていく話ですし,下部組織を整備することがどのように親会社に対するメリットとしてつながっていくのか,具体的なプレゼンテーションができなければ,ファースト・チームだけでもなかなか運営が難しくなっている状態にあって,下部組織の積極的な整備,プロフェッショナル・レベルの選手たちと同じ環境でジュニア選手やユース選手の育成・強化をする,というのは理想論ではあるけれど「空論」として評価されてしまう可能性も決してゼロではありません。


 であるとしても,やはり個人的には「地域に開かれた存在」を実業団であっても意識してほしい,と思います。地域を巻き込む,というときに,下部組織を整備するだけが地域に開かれた存在とは思っていなくて,もっと多くのひとに支えられる形に緩やかにであるとしても移行していく,という形をセットにしていてほしい,と思うわけです。たとえば,ファースト・チームを動かすのが従来通りの親会社であるとして,その下部組織を運営するにあたっては親会社がさらなる負担をするのではなくて,地域に基盤を持つ会社であったり自治体,そして地域に住むひとたちが財政的にちょっとずつでも支えていく,そんな形が構築できるならば,欧州型のスポーツクラブと日本的な実業団,その2つを掛け合わせるような形が見えてはこないかな,と思うのです。会費を払ってスポーツを楽しむひとがいたり,地域の若き選手たちを支える,という形でスポンサーになろうとする会社があったり。そういう意味で,支える基盤も裾野が広がるといい,と思うのですね。すべてを親会社が100%負担するのではなくて,もっと地元,というか,本拠を置く地域に頼ってきてくれるならば違った姿が見えてくるかも知れない,と思うわけです。


 堺のケースは,パイロットケースであるのは間違いありませんが,いろいろな発展型を想像させる,そんなパイロットケースでもあるように思っています。