クラス2。

やはり地味だったのかな,と思いつつ。


 しかしながら,興味深いレーシング・マシンが多かったと思うのですがね。


 ちょうど鈴鹿ではWTCC第10戦が始まったタイミングでもありますし,今回もフットボールを離れましてレーシングな話,現行のS2000規定の元祖,とも言えるクラス2な話を書いてみよう,と思います。


 と,その前にグループA規定にちょっと触れないといけないのですが。


 グループAで,勝てるマシンが絞られてしまった,というのがクラス2規定が導入される大きなきっかけだったようです。と書くと,BNR32が引導を渡したのか,ということになりますが,実際にはBNR32も「ちょっと遅れてきたグループA最強マシン」でありまして,すでにシエラ・コスワースであったりM3でないとグループAでは勝負権がない,という時代になってしまっていたのです。そのために,より多くのメーカをレースに呼び込むためにはどうすべきなのか,が意識されるようになったのです。そのひとつの方法論が,2000cc・自然吸気エンジンを搭載する4ドア・モデルという,どのメーカにもありそうなマシンをベースとする,クラス2規定だったわけです。


 この車両規定が興味深かったのは,前輪駆動車を基準として考えられたものだったこと,です。


 1990年当時を考えてみても,欧州主要メーカでFRセダンを用意していたメーカはごく限られていて,より多くのメーカの参戦を促すためにはFFを基準とする技術規則の策定は必須要件だったのではないかな,と思います。恐らく,BTCCを運営していた団体も,可能な限り多くのメーカを呼び込みたい,という意識を持っていたのではないでしょうか。確か,1990年代のBTCCにはホンダやトヨタ,そして日産など国産主要メーカが顔を揃え,欧州主要メーカで見ればBMW(FRに対する最低重量面でのハンディキャップがあるにもかかわらず,有力コンテンダーであり続けましたね。)やプジョーオペル(UKですとヴォクスホール)などが参戦していました。


 そして,アルファロメオであります。


 彼らがBTCCに持ち込んだ155が,技術規則に大きな影響を与えることになるわけです。その影響とは,「空力付加物」についての規則策定,です。彼らはベースマシンとして,特徴的なフロントスポイラーとリアウィングを持つホモロゲーション・モデルを製作,このマシンをベースにBTCCマシンを仕立てる(ということは,レーシング・マシンでも空力付加物の使用が認められる)のですが,アルファコルセは装着方法に変更をかけてきます。フロントスポイラーを前方に張り出させるとともに,リアウィングにはゲタを履かせて,実質的な「大型ウィング」を取り付けたのと同じ効果を発生させよう(空力面でアドバンテージを得よう)としたわけです。技術規則の隙間を突く,というのはランチアでも取り入れられた手法ではあったのですが(インテグラーレのバンパー取り付け位置が微妙に前方になっていたり,ディテールな部分でちょいちょいやっていたのであります。),さすがにレギュレーションを拡大解釈している,という批判があり,最終的には空力付加物についての規定が新たに設けられる,という形に落ち着いたのでした。


 外見からすると,いささか地味な印象を与えるのですが,その中身は相当に作り込まれたレーシング・マシンでありました。たとえば,より多くの空気をエンジンへと取り込むためにシリンダーヘッドを逆転させ,排気ポートをバルクヘッド側へと向ける(リバースヘッド,などと表現します。)であったり,エンジンの搭載位置が低められていたり。ただ,なかなか「本気のレーシング・マシン」であることが外側には伝わりにくかったのか,なかなか日本では根付かなかったのも確かです。そんなハコレースですが,2013シーズンからはS2000規定マシンで再び戦われるとのこと。どんなマシンが持ち込まれるのか(恐らく,BMWはどういう形にしろ,参戦してくるかな,と思いますが。),楽しみにしたいと思います。