プジョー、戴冠(ル・マン24時間耐久)。

準備不足で勝てるほどに,サルテは甘くない。


 ということでありましょう。


 R10からの正常進化なのだから,と思っていたかも知れません。知れませんが,新たな要素技術を落とし込んでいたとすれば,しっかりとした熟成過程を飛ばすわけにはいかないし,しっかりとした負荷を掛けてやらないと,レース・ディスタンスを乗り切れるのかどうか,見極めもできないはずです。


 ヨーストという手練れのレース屋がいながら,どこかに甘さを残した。アウディが見せたのは明らかに「隙」だったと思います。


 対してプジョーは,「正攻法」を貫いてきた。そんな印象を持ちます。


 であるならば,ポディウムの2/3を占めたとしても何の不思議もない。24時間をロジックだけで乗り切れるとは思わないけれど,少なくとも幸運をしっかりとつかんで離さない,それだけのしっかりとした準備を積み重ねてきたことは強く感じられます。


 今回は,フットボールを離れまして,屋号な話。webCGさんのニュース記事をもとに,ル・マンの話などを。


 簡単に,時系列で追ってみますと。


 プラクティス・セッションで好調さを見せていたのは,アウディでした。対して,公式予選でトップタイムを叩き出したのは,プジョー908です。この段階までを見れば,アウディプジョーが真っ向勝負,という形を期待するところです。


 ですが実際にレースとなると,プジョーが主導権を握ります。と言いますか,アウディがリズムを大きく崩していった,と言うべきでしょうか。


 島村さんのレポートにもありますが,ピットのシャッターが閉じられるというのは,マシンにかなり大きなトラブルが発生していて,そのトラブルを抑え込むのに大規模な作業が必要となる,ということとほとんど同じ意味を持っているように感じます。昨季までのアウディは,そんな姿をそれほど聞かなかったのですが,今季に関してはどうもイレギュラーなピットインが多かった,と。これでは,勝負権を手にすることはできないでしょう。


 対して,プジョーのピットワークは安定度を増したとか。レース屋が関わっているアウディ,彼らの姿も影響を与えたでしょうし,今季サテライトとして位置付けられたペスカローロもレース屋です。彼らの経験がどこかで生きていたのでしょう。


 プジョーは今季の経験が生きるでしょうし,アウディは今季の雪辱を期しているはず。どう来季に向けて動いていくのか。いささか気が早すぎる話ですが,注目してみたいところです。