対大宮戦(09−GL#6)。

ショートハンドへ追い込んだことが,ポジティブにも,ネガにも作用した。



 そんな印象を受ける試合であります。

 ありますが,しっかりと「勝ち点3」を積み上げ,指定席切符を獲得したと。

 こちらにも評価軸を置いておかないとフェアではないかな,と思います。



 グループリーグ最終節,大宮戦であります。



 まずは,静的なパッケージから見ていきますと。



 今節は,4−4−2ボックスに近いパッケージだったようです。



 ここまでの1トップ(あるいは,縦のギャップをも意識した2トップ)を単純にスターターにあてはめてしまうと,縦の距離感からフィニッシュにつながる仕掛けを繰り出すことになって,その距離感がトップの個性を引き出すためには必ずしも最適解ではない,という判断が働いた,と感じるのです。



 戦術的な約束事,特に守備面での約束事を強く意識付けている裏返し,かも知れませんが,ゴールマウスからの物理的な距離がなかなか詰められず,最終的なフィニッシュへ,というシンプルな形になかなか持ち込めない。当然,時間帯によっては低い位置からのビルドアップを求めることになるでしょうが,ゴールマウスに近い位置で,シンプルにフィニッシュへと持ち込める距離を,と意図したように感じます。



 また,中盤がトライアングル(高い位置にセントラルを1人,という形)ではなくて,比較的センターへと意識を傾けてセントラルを2人配することで,ボックス・スタイルに組むという形に調整していたようです。



 では,ゲームを見ていきますと。

 早い時間帯での先制点奪取,という形にまでは持ち込めませんでした。



 いい形でフィニッシュにまで攻撃を持ち込んでいる。

 持ち込んではいるのだけれど,最終的な局面でボールをゴールマウスへと沈め切れていない。



 タッチラインに近いエリアで,ボールサイドを構築する。

 このエリアに相手を引き付けると,オープンサイドへと展開する。



 そのような戦術イメージを持っていたか,と思うのですが,前半段階での相手はプレッシングとゾーン・ディフェンスのバランスをある程度意識した守備応対を繰り返していたために,ボールサイドからオープンへ,という形がなかなか出し切れなかったところがあります。



 また,相手守備ブロック背後のスペースを突く,というよりは,相手守備ブロックを引き付けながらギャップを生み出していく,という形を徹底していたから,結果として相手の守備戦術と相当程度にぶつかり合う形になっていたように感じます。



 結果として,主導権を掌握している感覚は強いものの,主導権がフィニッシュという形になかなか結び付かない,という時間帯が続いてしまいます。

 ただ,相手守備ブロックにはしっかりと負荷が掛かっていた,とも言えるはずです。



 前半終了が見えてくる時間帯での先制点奪取は,それまでの攻撃がボディ・ブローのように相手守備ブロックに作用していた,という印象を受けるものでした。

 見る角度によっては,フィニッシュに関与した選手がオフサイド・ポジションに入っている,ようにも確かに見えました。ですが,アシスタント・レフェリーのジャッジは,オンサイド・ポジションからあのポジションに入った,というものでしょう。フラッグが指し示されることもなく,ポジションをセンター・エリアへと戻していく。レフェリング,という作用は確かにあったものの,効果的な時間帯に先制点を奪取した,と感じるものです。転換点,という側面からこの試合を見るならば,ひとつ目の転換点はハーフタイムを視野に収めようか,という時間帯での先制点,でありましょう。



 そしてもうひとつの転換点は,後半立ち上がりの時間帯,ということになるでしょう。



 サイドが攻撃の重要なポイントとして位置付けられているのは,前半の段階から強く感じられたところです。そのエリアで,「縦」への仕掛けを強めるところから相手のファウルを誘う。ここで,相手をショートハンドへと追い込んだわけです。

 そして相手がショートハンドの状態からどのようにゲームをコントロールし直すか,というタイミングに追加点を奪取できたことで,ほぼ試合の流れを決定付けます。サイド,特に左サイドからの攻撃が効果的に作用し,相手ゴールを陥れることに成功します。



 ただ,ゲームのリズムという部分では,不安定なスローダウンという印象もあります。

 緩やかにリズムを落としていく,という形に持ち込めなかったがために,相手にカウンターを繰り出される形にはまってしまい,カウンターを受けている時間帯にミスを誘発したことも手伝って,結果として2失点を喫することになります。

 カウンターへの対策は,このゲームにおける課題でありましょう。



 ・・・「勝ち点3」を積み上げ,セカンド・ラウンドであります。



 若手選手にとって,貴重な実戦機会となるはずのカップ戦。

 この舞台を確保した,というのは間違いなく,最も大きな収穫でありましょう。



 そのこととは別に,ゲームのリズムを,しっかりとコントロールできなかった。



 この試合での課題を簡単に言ってしまえば,このようなことになるでしょう。

 後半立ち上がりでのPK以降,相手はショートハンドです。

 数的優位をつくった状態でゲームを戦えるわけです。



 となれば,リズムを譲り渡す必要は,「基本的には」ないはずです。

 ですけれど,実際にはリズムが急激に落ちたような印象もあります。



 このリズムの変化量を,どれだけ小さく抑え込めるのか。

 ここまでの課題とはちょっと違った課題ではありますが,チームにとって結構重要なレッスンともなったゲームではないか,と感じます。