スバルWRC撤退によせて。

三菱で言うならば,ギャランからランエボ


 エンジンやドライブトレーン,サスペンションなどのコンポーネントに対する変更を最小限にとどめながら,ボディサイズを最適化する。同じようなアイディアを,採用していました。そして,その前提には「実戦部隊」であるプロドライブのアドバイスが大きな要素としてあったようです。低重心であることや,シンメトリカルなレイアウトが取れることなど,レガシイでもすでにアドバンテージとなる要素はありました。ですが,ボディの大きさは操縦性にかかわってくるし,低重心を実現できるがゆえの排気系の取り回しは,パワーを引き出すにあたっての障害になる。そんな,「実戦」を考えてのアドバイスがあったのではないか,と思うのです。


 GC型のインプレッサ,ですね。ここから,ランエボインプレッサWRX(sti)の不思議な関係がはじまるわけです。


 最初にWRCから距離を置いたのは,ランエボでした。そして今度は,インプレッサもWRCから距離を置く,ことになるかも知れません。


 FCWCのことも書こうとは思いますが。こんな屋号を掲げているからには,書いておきたいと思います。WRC撤退に関するスバルさんのリリース,であります。


 正直なことを言えば,もったいないと思います。


 インプレッサがノッチバック・ボディではなくハッチバック・ボディを採用したのは,どこかにWRCを意識していたから,だと思います。現状のWRカー規定を冷静に考えれば,必ずしもベース車両のディメンションが決定的な意味を持つわけではありません。サスペンション・ジオメトリーの変更が可能ですから,ボディ(前後長)を切り詰めると同時に,トレッドを広げるという対応ができる。ならば,ハッチバックが有利になる,とも言えるわけで,恐らくプロドライブはGC型開発当時と同じく,アドバイスをスバルへ持ち込んでいるはずです。


 であれば,やはりもったいないと感じるわけです。でありますが,もうひとつ正直なことを言えば,「撤退時期が前倒しされただけ」という感情もあるのです。


 要因は,2010シーズンから導入される新たな車両規定です。


 WRCを戦うマシンを,“S2000”と呼ばれる車両をベースに製作するという決定がなされています。2000cc(NA)エンジンと4WD,というパッケージをベースに,ターボやインタークーラを装着した“S2000プラス”へと変更するというものです。ここでの問題は,スバルは“S2000”マシンを持っていない,ということです。むしろ,S2000とライバル関係にある“グループN”車両を参戦させています。WRカーがグループNをベースとする,とされたところで,S2000プラスと同じだけの戦闘力を持たせるためにはサスペンションへの大幅なモディファイを必要としますし,そのイニシャルコストが新たにかかることになります。ただでさえ,安定的な資金供給が難しくなっているタイミングに,新たな初期投資をするだけの価値があるのか。そんな判断が働いたとしても,不思議はありません。


 いままで重要な,そして強力なコンテンダーとしてWRCを戦ってきたスバルが舞台を下りるのは寂しいですが,FIAは国産メーカよりも欧州メーカを選んだ。そんな思いもあるだけに,1年早い発表を聞くだけのことかも知れない,とも思うのです。