FCWC2008(M4・Semi−Final)。

端的に,LDUキトは“リアリスティック”でした。


 相手を冷静にスカウティングしているのは当然として。相手に自分たちのフットボールを展開させつつ,同時に重要なポイントでのコントロールは失わない。そして,ボール・コントロールを奪ってからの仕掛けは,機能主義的であり,同時にシンプルなものでした。


 FCWCもカップ戦ですから,「結果」だけが求められます。であれば,チーム・バランスを(程度の差こそあれ)現実主義的な方向へと振り向ける必要もあるはずです。LDUキトはこの部分で徹底された印象を持ちましたが,パチューカは必ずしも,リアルな要素を意識してゲームに入っていたとは思えないところもあります。


 意識の差が,ファイナル・スコアに表現された部分もあるように思えます。FCWCでありますが,横浜国際の話をする前に,国立霞ヶ丘の話をしておくことにします。


 まずは,パチューカから。


 自分たちのフットボールを徹底する,という姿勢には敬意を持っています。持っていますが,相手は仕掛けのリズムを寸断するポイントを絞り込んでいました。そのポイントで,攻撃を断ち切られてしまった。しかも立ち上がりの時間帯,緩やかに立ち上がりながら相手の出方を探るのではなく,積極的に仕掛けることでリズムを掌握しようとしたことが,結果として相手の逆襲を受けるきっかけになってしまった。


 ショートレンジ・パスがリズムを作り出す大きな要素,というのはアル・アハリとの初戦でも感じられた部分ですが,微妙な精度のズレや,タイミングのズレなどを相手は的確に突いてきていましたし,そこから鋭く逆襲を仕掛けてもいました。


 リズムをつくっているはずなのに,実際にはリズムを失うきっかけになってしまってもいる。


 実際の点差は2ですが,細かい部分での差は結構あるようにも感じました。


 対して,リガ・デ・キトであります。


 「カップ戦」を戦うための文法,のようなものがあるとして。その文法を,しっかりと踏襲しているような印象がありました。


 まず,相手であるパチューカの仕掛け,そのスタイルを冷静にチェックしていたようです。ショートレンジ・パスで攻撃を組み立て,リズムをつくる。そのリズムを最も効果的に崩せるポイントで鋭くプレッシングを仕掛け,縦にシンプルな攻撃を仕掛けていく。


 先制点奪取の基盤となった,ひとつのゲーム・プランであるように思えます。


 もうひとつ。高い位置でのプレッシングを回避されたケースでも,しっかりと守備ブロックが相手の仕掛けを抑え込みにかかる。


 徹底した守備応対を基盤にして,鋭くカウンター・アタックを仕掛ける。その守備応対は,時間帯に応じて高い位置からの積極的なプレッシングを仕掛けるものと,相手を巧みに守備ブロックへと追い込んでいくようなものとを,巧妙に切り替えているかのようなものでした。このことを仕掛けから言えば,“カウンター・アタック“を基盤としているのは間違いないのですが,時間帯に応じてフルコート・カウンターの局面とハーフコートの局面とを巧みに使い分けているように感じられました。


 ・・・カップ戦は,フットボールという競技が持っている本質を明確に示すところがあります。「相手よりも多くのゴールを奪うこと」です。ボール・ポゼッションなどのスタッツは必ずしも,ゲームの主導権が誰の掌中にあったとのか,明確に示すものではありません。このゲームは,まさしくそんな印象を残すものでした。