優先順位とカップ戦の魅力と。
結論から先に書けば。
「無理筋」ですね。
クラブにとって,優先順位が明確な時期です。
降格を回避しなければならないクラブ,あるいはリーグ制覇を狙うクラブ。彼らにとっての優先順位は,「リーグ戦」に置かれる。当然です。そんな時期に,戦力を分散させかねない「新たなカップ戦」に注力することは難しいでしょう。チームとして狙うべきものを希釈化させないためにも冷静な判断が必要,とも言えます。さらに言えば,最も厳しい時期に計算できる戦力を確保しておくためには,スターターを効果的にバックアップできる可能性を持った選手をしっかりと,ピッチに送り出しておくことも求められるはずです。
それ以前として。
どういう形であるにせよ,ピッチに立った選手が「敗退」を意識してプレーするか。
個人的には,正反対だと思っています。スターターへ割って入るための絶好機と捉えているだろう,と思うからです。
コーチング・スタッフの判断,そして実際にピッチに立ったフットボーラーを尊重した言葉とは思えません。問題意識を持つのであれば,もっとほかの要素に持つべきでしょう。
ということで,各スポーツ・メディアで比較的大きく扱われていますが,報知さんの記事を引っぱり出してみることにします。
・・・思えば,昨季も同じようなことでエントリを上げております。
そもそも,「この時期だから」付きまとう話なのだと思うのですがね。
だからと言って,「では秋春制に移行しましょう。」などと言うつもりもなく。秋春制を持ち出す前に,リーグとカップ戦との関係,その交通整理をする方が先決課題ではないか,と思っております。
こちらのエントリと,いただいたコメントをもとにちょっと突っ込んだこんなエントリでありまして(ちょっと長めになっておりますが,よろしければ合わせて読んでみてくださいませ),基本的にはこの段階で考えたことは,ほぼいまも変わりありません。
ポイントだけを抜き出して書くならば。
そもそも降格圏からの回避,あるいはリーグ戦制覇が現実的な射程に収まってしまうリーグ戦終盤ではなくて,緩やかに上位と下位が分かれてくる(つまりは,目標を失いがちなクラブが出てくる,「中だるみ」)時期を狙ってカップ戦初戦を設定できるように,プロフェッショナル・リーグの開幕戦と天皇杯予選の開始時期を可能な限り接近させるべきだろう,と思っているわけです。
モチベーション・クラックが生じにくい時期を狙って,天皇杯初戦を設定してみては?ということですね。
ちょっと思うに。
リーグ戦の認知度が高まれば,自然とリーグ戦の持つ権威が高まっていくものと感じます。
リーグ戦は,瞬間風速で勝ち抜けるほどに簡単なものではありません。まして,走り抜けられるほどの短期戦でもありません。であれば,クラブの持つ「底力」が明確に試される,と思うのです。
となれば当然,カップ戦の持つ意味は小さくなる,かも知れません。知れませんが,カップ戦はリーグ戦とは違う魅力を持っているとも思います。
結果を出せなければ,トーナメントを駆け上がっていくことはできません。
フルタイムを戦ってスコアレス,あるいはイーブン。となれば延長戦が待ち構えているし,それでも均衡が崩れなければ,ペナルティ・シュートアウトで雌雄を決する。ある意味,徹底しています。
そしてカップ戦は,誰かが潰れたことで先に進むことができる,なんてことがない。自分たちで勝利という結果を引き出さない限り,先に進むことができないわけです。他力の絡む要素がほとんどありません。他力の要素が絡むとすれば,トーナメント・ドローでの「クジ運」でしょうが,これにしてもFAカップのように1ラウンドが終了するごとにドローしてしまえば,先を読むことは難しくなります。
「相手よりも多くのゴールを奪うこと」という,フットボールが持つ魅力を感じる舞台として,カップ戦は好適だろうとも思っています。
たかがスケジューリングですが,プロフェッショナルが参戦してくるタイミングひとつで,カップ戦が持っている「緊張感」は相当に緩んでしまいます。
QF,あるいはSFあたりにまで上がってくると,リーグ戦とは微妙に違う緊張感が支配するフットボールを見ることができます。違った魅力を持つトーナメントが,3回戦,4回戦が実施されるタイミング,そしてそのタイミングが作り出してしまうアヤで軽視されていくのはもったいない。コーチング・スタッフを不要に縛りかねないベストメンバー,なんてことを言う前に,やるべきことは相当多くあると思っています。