眩しかったバルコニー(ナビスコ決勝戦によせて)。

初戴冠,という事実が持つ眩しさかも知れません。


 羨ましいという想いよりも,どこか眩しかった。そして,その眩しさは伝統ある競技場,そのバルコニーの印象を変えていたようにも思います。


 天皇杯にしても,ヤマザキナビスコカップにしても。決勝戦を戦い終えると,表彰のために国立霞ヶ丘のバルコニーへと上っていきます。最初に誘導されるのは,“Last Loser”である準優勝チームです。何かをかみ殺しながら階段を上がり,表彰を受ける。記念撮影を終えると,再びピッチへと戻っていく。


 この戻っていくタイミングに,残酷なまでのコントラストが階段に映し出されます。


 高揚感に包まれた表情と,感情を押し殺した表情と。


 ここまでは,見慣れた決勝戦の風景とも言えるでしょうか。ですが,優勝表彰はいつもとは違って見えました。


 “Cup Winner”であることを示すカップを受け取る。その瞬間,バルコニーと観客席とを分かつ低い壁,その壁上に立ち上がると,高々とカップを掲げてみせる。その姿に呼応するかのように,何人もの選手がホーム・ゴール裏方向に向かって喜びを全身で表現する。


 クラブにとって初めてのタイトルを,自分たちの手で奪い取ってみせたという感情が爆発しているかのような姿が,コンクリート・ウォール,その上にあったように思うのです。


 アウトサイダーでもありますし,ゲームのことは書かないでおきます。であれば,ひとことだけ。


 勝負,という側面だけが大きくなりがちな決勝戦にあって,「らしさ」が存分に表現されたフットボールだったと思います。もちろん,その美しさは相手あってのこと。決勝戦の舞台に立った,2つのチームに敬意を表したいと思います。