敵将・関塚さんに思うこと。

ふと,ジェラール・ウリエと重ねて見てしまうところがあります。


 もともと,イングランドには不思議な縁があったウリエ。


 彼が指揮を執るまでのリヴァプールは,欧州でプレゼンスを誇示していた,その姿を失っていました。


 “ブーツルーム”という言葉で示されるように,指揮官は生え抜きから選ばれる,という慣習もありました。ビル・シャンクリーのアシスタントを務めていたのが,欧州でのプレゼンスを示すこととなるボブ・ペイズリー,というように。そんな慣習を崩してでも,レッズを再びプレゼンスを示すことのできる立場へと引き上げたい。クラブ首脳の意思が反映されていたのでしょう。


 彼が去り,ラファエル・ベニテスがファースト・チームを預かるようになると,長く遠ざかっていたビッグイヤーを再び高く掲げることに成功します。そして2007〜08シーズンにあっても,レッズは欧州カップ戦を戦っています。再び,欧州カップ戦を主戦場とできるクラブ,その基盤を築き上げたのがウリエ,という見方をしたとしても,決して過大評価ではないはずです。


 そんなことを思っています。


 今回は,ほかのクラブの話ですが,関塚さんのことなどを。


 確かに,リヴァプール時代のウリエと比較してしまえば“シルヴァーウェア”が決定的に少ないかも知れません。しかし,フロンターレがリーディング・クラブへの階段を駆け上がっていく,そのきっかけを与えた指揮官であることは揺るがしようがないようにも思います。就任初年度,それまでクラブが果たせずにいたトップフライトを達成すると,急速にリーグでのプレゼンスを高めていく。そして2007シーズンにはACLへ参戦し,決勝トーナメント進出を果たしてもいる。リヴァプールにおいてウリエが演じた役割を,フロンターレにおいて演じてきたように感じられるのです。


 また,敵将としての印象も鮮やかです。


 浦和を相手にするクラブは概して,ディフェンシブな戦いを挑んできます。組織的な守備戦術を徹底し,攻撃面ではリアクティブな戦術を採用する。少なくとも,浦和の攻撃力に対してかなり意識を振り向けているだろうことがうかがえる戦術を目にしてきたように思います。


 しかし,関塚さんは「真っ向勝負」を厭わなかった。


 彼らにとってのアウェイ,中野田にあっても攻撃的な姿勢を必要以上に抑え込むなどということはなく,むしろ攻撃的な姿勢を強めてさえいたようにも感じられました。その闘う姿勢がゲーム後の記者会見にまで反映され,ビックリするようなコメントを目にしたこともありました。


 フットボールであれば,勝者と敗者が分かれ,時に勝ち点1を分け合う。それだけに,マッチデイでは「勝ち点3」を奪い取るべき相手,その指揮官として意識するだけですが,マッチデイを離れれば“フットボール・フリーク”として関塚さんのチーム・ビルディングの手腕などをアウトサイドからではありますが,見させてもらっていました。


 いつか,シルヴァーウェアを争う舞台に,スーツ姿ではなくてジャージ姿を貫く指揮官の姿を再び見たい。そして,中野田でピッチサイドに立つ姿を。そのときが早く訪れることを,アウトサイダーとしても楽しみにしています。