放映権戦略。

まだ,基盤は思うほどには大きくないのでしょう。


 また,CSの浸透度という問題も存在します。見てもらえるひと,その絶対数が地上波と比較すれば大きいわけではありません。確かに,CSでの中継カバー率は非常に高いものがありますし,“フットボール・フリーク”目線で言えばありがたいものがあります。リアルタイム,ということは物理的に困難であるにせよ,すべてのゲームを中継できるという強みはBSや地上波ではあり得ないアドバンテージです。


 しかし,一般的には地上波露出であったり,BSでの中継が大幅に減少したことで,かつての勢いを失った“セミ・マイナースポーツ”という印象を与えかねないようにも思えます。競技場が帯びている「熱」を一般に訴える機会が失われるということも意味します。


 Jリーグの持っている商品価値を高めるという部分や,広告効果という要素を思えば,放映権をCSメインで考えるという判断は「時期尚早」であったと言わざるを得ないのではないでしょうか。


 ということで今回は,ニュースリリース:Jリーグスポンサー契約 2008〜2010年 継続決定(Jリーグオフィシャル)をもとに,メディア戦略を考えてみようと思います。


 2007シーズンがパートナーとの契約更新時期に重なった,という好意的な解釈も成立しますが,個人的にはどうしても「放映権」問題と関連して映ります。


 そもそも,Jリーグはパートナーの権益保護に対してそれほど積極的な組織ではありません。この点に関しては,「商品価値とパートナーシップと。」というエントリで扱っております。


 さて。そんなこと以上に問題なのは,(特に地上波での)「露出が少ないこと」です。


 メディアの選択肢は飛躍的に広がっていますが,まだ地上波放送には大きな影響力がありますし,彼らにとって魅力的な商品でなければ,パートナーに対する営業戦略も立てられません。FIFAやUEFAが強固なパートナー契約を締結できる背景には,ワールドカップ欧州選手権,欧州カップ戦がメディアにとって魅力的なスポーツ・コンテンツ(商品)である,という事実があるはずです。TVを通してこれらのトーナメントを見ているひとが多ければ,自動的にピッチサイドにあるADボードやLEDディスプレイに目が行きます。競技場に足を運んでいるひとに対して,競技場内(たとえば,中野田で言うならば南広場)などで大きなプロモーション活動をすることも重要な意味を持ちますが,どれだけ多くのひとの目に触れるか,というのはシンプルであるようでいて最も重要な意味を持つはずです。


 Jリーグはそもそも,十分に成熟したフットボール文化の中で放映権ビジネスを展開できる状況にはありません。プロフェッショナル・スポーツとして,まだ積極的にTVを見てくれるひと,そしてスタジアムへと足を運んでくれるひとを広げていかなければならない段階であるはずです。「放映権料」という要素も確かに重要でしょうが,それ以上に「どれだけ多くのひとに見てもらえるか」,見てもらうのみならず競技場へと足を運んでもらえるか,という部分からのメディア戦略も重要な要素であるはずです。メディアは競技場へとひとを導くための玄関口である,ということを考えていたならば,単純にCSを軸足にするという判断はできなかったと思うのです。


 誰もがアクセスしやすい,地上波での露出度アップをまだ意図しなければならない段階だと思うのです。にもかかわらず,中継数は大幅に減少しているし,ダイジェスト映像ではADボードなどという以前の問題としてプレーそのものに対する扱いも小さい。ひとの目に触れていない。そう,パートナーに思われてしまっては,契約更新は難しい。どうも,そんな印象が拭えないのです。


 リーグサイドは9社,あるいはそれ以上との契約締結の可能性を示唆しているようですが,メディア戦略がシッカリと構築されないと今回のような問題は再び発生する可能性はあるように感じられます。