ドゥカティ、完全制覇。

「趣味性の強いメーカ」。間違った認識ではありません。


 しかし。かつてはちょっと誤解をされてもいました。


 “デスモドローミック”という技術的な特徴を持っているものの,一時的には技術的な新機軸を打ち出せずにいたために,「過去のメーカ」と思われていたわけです。不思議なことに,この時期のドゥカティは「赤」と結び付かないんですね。MHRは確かに赤を基調としたバイクですが,900SSあたりは赤じゃあない。


 ですが,888あたりから,ナショナル・カラーである“ロッソ・コルサ”が前面に出てくるようになり,916に至っては最強のSBKとも評価できるほどにレーシング・フィールドでの存在感は大きかったわけです。


 そして今季,ついに最高峰クラスで「高み」に立ってみせた。


 ということで,今回もフットボールとはまったく関係ない,雑記であります。ロッソ・コルサを纏うスクーデリア・フェラーリ,ではない,もうひとつのロッソ・コルサであるドゥカティのことなど。



 バイク・レーシングの最高峰である,motoGP。


 最大排気量に関する制限はかかっているものの,エンジン形式に関する制限はありません。そのために,各メーカが個性的なエンジンを持ち込んでいます。ここでドゥカティは“L型4気筒”を開発,レーシング・フィールドへと持ち込みます。もともと彼らは,シリンダー挟角90°のV型2気筒,いわゆる“Lツイン”を主戦兵器としてWSBKを戦っていたわけですが,その血統を重視しながらさらなる高回転を狙う,という開発コンセプトだったのだろう,と想像します。


 そしてフレームは,彼らのトレードマークでもある“トレリス・フレーム”であります。


 要するに,「パイプをハシゴのように組んだフレーム」ですから,ちょっと古典的な印象を与えるかも知れません。ですが実際には,最適な剛性バランスを引き出しやすいレイアウト,という見方もできるフレーム構造なのです。必要に応じてトラスを増減させたり,あるいはマシン幅を狭めるために徹底的にエンジンに沿った形へとフレームを作る,というツイン・スパーではなかなか難しい要請に応えやすいわけです。しかもドゥカティはエンジンをストレス・メンバーとして位置付けてもいるから,フレームを必要以上に大きくする必要がない。スリムな車体をつくりやすいわけです。CADによって必要にして十分なフレームを組める,ということは「軽量」でもある。主流であるアルミ・ツインスパーのメリットを消し去ったとも言えるでしょうか。


 とまあ,潜在能力で言えばかなりのものがあり,参戦初年度から相当な「速さ」を持ってもいました。それだけに「強さ」が付いてくれば,と見ていたわけです。それが今季だったと。エースであるケーシー・ストーナー選手は今季,(まだ2ラウンドを残してはいますが)322ポイントを獲得,2位に付けているヴァレンティーノ・ロッシ選手とは92ポイントもの大差を付け,ツインリンクもてぎでの日本ラウンド終了時でライダーズ・チャンプを決めています。


 そして,フィリップ・アイランドではコンストラクターズ・タイトル,チーム・タイトルを獲得し,名実ともに「完全制覇」を達成しました。


 今季は,ちょっとチカラ関係がシフトしはじめるかな?なんて思うきっかけかも知れません。ドゥカティが戴冠したのもそうですが,これまでちょっと沈んでいたスズキ・ファクトリーが大幅に躍進をはじめてもいます。ヤマハ,ホンダの牙城に割って入ってきたと見てもいいでしょう。いまから来季の話をするのは・・・,でありますが,「戦国時代」のはじまりであるような印象を持ったりもするのです。