MotDを期待してみる。

学生身分でもあり,なかなかマッチデイに足を運べなかった私としては。


 フラットでの楽しみはやっぱり,BBC1の“マッチ・オブ・ザ・デイ”(Match of the Day)でありました。


 “ダイヤモンド・サッカー”の元ネタを提供していた番組,と言えば,ピンとくるひとも結構おられるのではないでしょうか。今回は,そんな話など。


 1998年から1999年にかけて,私はリアルタイムでこの番組を観ていたわけです。土曜日の夜,缶ビールを片手にBBC1。ある種のお約束でありました。


 この番組,オープニングからして,なかなか気分なんですよね。


 ブーツ(スパイク)のヒモを締め上げ,床を踏み鳴らす映像と,ロッカールームを退出する時刻であることを知らせる鐘の音を合図に,オープニング・テーマが流れはじめる。MotDに関するウィキペディアの記事(英語版)をちょっと見ると,放映開始になったのは1964年(=つまりは東京オリンピックが開催された年)だそうですから,UKのひとにとってはもはや「お約束」なのでしょう。でも,私にとってはお楽しみのはじまり,という感じがして,結構見入っていた記憶があります。


 当時,番組を仕切っていたひとはDesmond Lynamという方で,このひとが大まかな流れを作ったあとに,解説を加えるコメンテーターであったギャリー・リネカーさんやアラン・ハンセンさんへと引き渡される。となると,MotDの本題である,ダイジェストになるわけです。とまあ,プレミアシップを生中継する番組ではなくて,いわゆるダイジェスト番組ではあるのですが,決してゲームの流れが理解できないようなダイジェストにはなっていないのが大事なところです。ゴール・シーンは確かに重要なのだけれど,ゴール・シーンだけを切り取ったような編集をせず,ゲームの鍵を握っただろうプレーはカットされずに流される。もちろん,シッカリとしたダイジェストの対象になるべきゲームは2ゲームのみ,なのですが,BBCがMotDで取り上げるべく選んでくる2ゲーム,なかなか鋭いものがあるのです。


 そのためか,一時はUKの民放であるITVにダイジェスト放映権が渡ってしまったのですが,現在は再びBBCがプレミアシップのダイジェスト放映権を確保し,MOTDでアラン・ハンセンさんやアラン・シアラーさんの解説が楽しめるようになっているわけです。そうそう,いまMotDを仕切っているのはリネカーさんであります。


 ・・・こういう番組があっても良いかな?と思うのであります。


 確かに,ゲームそのものを中継することも大事ではあるのだけれど,その日のゲームを落ち着いてみてみるというのも悪いものではありません。ワールドカップの開催期間中,NHKはダイジェスト番組を放映しておりましたが,そのJリーグ版を作ってほしい,と思うのです。“Jリーグ・タイム”ではちょっと時間が短いし,解説をするひとがもうひとりくらいいてもいいかな,と思うのです。ひとりが提示した試合の見方に対して,違った見方を提示する,あるいはひとりが見落とした,と言いますか,あえて取り上げなかった部分を取り上げて,こういう部分に意味がある,と拾い上げる。こういうやりとりを通じて,フットボールの見方がより深まるかな,と思うのです。何より,番組を取り仕切るだけではなくて,時にはコメンテーターに鋭い質問をぶつけるなどがあってもいいわけで。


 同じことは,民放にも言えるわけです。もうちょっと,Jリーグそのものにシッカリと焦点を当てた番組を,と思うのです。場合によっては,プレミアシップのようにダイジェスト放映権を別途作ってもいいわけですしね。


 かつて“ダイヤモンド・サッカー”を担当された金子勝彦さんや,その後継番組を担当された久保田光彦さん,あるいは倉敷さんなどでも良いかも知れません。NHKならば,やはり山本浩さんでしょうか。彼らがアンカーを務めて,コメンテーターが基本的にふたりくらい控えている。で,ちょっと違う見方をするなかからゲームの面白さを解き明かしていく。


 スタジアムに実際に足を運んだひとでも,見ていて何かしらの発見がある,逆に行っていないひとでもゲームの流れがつかめるような番組,ホントにあったらいいな,と思うわけです。