鍛えるべきは誰か。

直球で理解すべき部分と,変化球的に理解すべき部分があるような。


 少なくとも,アルセーヌ・ヴェンゲルさんとサー・アレックス・ファーガソンさん,そしてジョゼ・モウリーニョさんの間で時に展開される「口撃」を盛り上げの参考にしていただきたくはないものですな。


 そりゃあ,“エンターテインメント”としては面白いかも知れません。プロフェッショナルの世界ですから,ちょっとした因縁のようなものもスパイスになる,かも知れません。ですが,このエンターテインメントに引きずられるように,マンUガンナーズ戦やチェルシーマンU戦,あるいはガンナーズチェルシー戦が(不必要にモチベーションが上がってしまうことによって)大味なものになってしまうのはもったいない。


 しかし,こういう「口撃」の部分が必要以上にクローズアップされてしまうのは,メディアさんの方にも大きな責任があると思いますね。


 彼らに,“on the Pitch”の話を聞くことよりも,“off the Pitch”でのエンターテインメントのようなものを求めているフシがあるし。それでも,イングランドの連中はフットボールという競技を見慣れているからいいけれど,必ずしも見慣れているひとばかりではないときに,メディアが“off the Pitch”のことばかりを聞きたがるようだと,S級ライセンス講習会で「記者会見の進め方」を学んだとしても,実質的な意味があるのか疑わしいことになってしまう。


 というようなことを,杉山さんのコラム(「カンポをめぐる狂想曲」:gooスポーツ - NumberWeb),その最後の方を読んでいて正直感じるわけです。イビツァさんがいわゆる“フットボール・マッドネス”だろうことは,カンタンに想像できる話です。日本代表,そのユニフォームをまとうに足るポテンシャルを持った選手を見つけようと,あらゆるスタジアムに出没しているのをTVでよく抜かれていますし,FCWCでもギド・ブッフバルト前監督と丁々発止やり合いながら横浜国際で観戦している姿が映っておりましたし。


 ならば,なぜ,記者会見でストレートに“on the Pitch”の話が出ないのか?ということです。


 杉山さんも時折,「欧州の最新トレンドを単純にベストだと信じてはいませんか!?」と聞きたくなることがありますが,それでも日本代表として選出されているプレイヤーの個性,あるいは選出まではされていないけれど同等のポテンシャルを持っているフットボーラーの個性を重視しながらシステム論を展開しています。自分なりの視座を持っている,という言い方でもいい。そういうひとが相手だったからこそ,イビツァさんもディテールに踏み込むような話をしたのではないか。レクチャーしがいのあるヤツに違いない,と踏んで。


 ひとりひとりにしてみれば,恐らく杉山さんのような考えを持っている記者さんが多いのかも知れません。でも,J's GOALさんにアップされている記者会見コメントを読む限りでは,必ずしも核心に触れるような質問が多いとは言えない感じです。記者さんが,フットボール・フリークとしての視線を持っていれば,そしてその視線をストレートに監督さんへとぶつければ,もっと記者会見が面白いものになるのではないか。ケースによっては,「真剣勝負」になるかも知れないけれど,“off the Pitch”と言うのもはばかられるような(・・・な)質問で場が凍りつくよりは10倍・・・は少ないですね,100倍以上マシでしょう。


 ホントはS級ライセンス講習会での「記者会見の進め方」は,本物の記者さんを交えて進めるべきもの(=記者さんもケースによっては鍛えるべき),なのかも知れないな,と思ったりします。