通風性か、防風性か。

赤城おろしバリバリ,とまではいかないまでも季節風が身に染みる季節でございます。


 そんな時期だからこそ,ちょっと考えてみたいことが。


 競技場の快適性であります。タイトルにも掲げましたが,「風」をどうコントロールするか,という問題ですね。


 基本的に,フットボールの場合は(リーグ戦に限定して話をすれば,ですけど。)シーズンが12月初旬,もうちょっと絞り込めば第1週の土曜日までには終了しますので,表面的には防寒対策を真剣に考える必要はないような気がします。ですが,天皇杯であったり高校選手権,あるいはラグビーフットボールのゲームを考えると,どうしても防寒対策,特に関東エリアにあっては体感気温を一気に引き下げる「季節風対策」をどうするのか,という部分が競技場設計に織り込まれていても良いのでは?と思うのです。


 たとえば,この時期利用頻度が一気に上昇する国立霞ヶ丘や駒沢,あるいは秩父宮をイメージしてみます。


 確かに,メイン・スタンド方向を見れば屋根が付いています。いますが。最上段にまで上がったことがある方ならばお分かりか,と思いますが,屋根とスタンド上端との間には結構な空間が開いていて,風向によっては見事にスタンド方向へと風が吹き下りてしまうわけです。ましてや,バック・スタンドやゴール裏はシンプルな設計ですから,防風板どころか屋根もない。頼りになるのは冬のやわらかな日差しだけ,ということになります。時間が遅くなるとメイン・スタンドは日差しの恩恵を受けられないから,バック・スタンド方向へ移動しないと快適な環境が維持できないということすらあるわけです。そう,中田徹さんがスポーツナビのコラムで冬のスタジアム環境について書いていますが,中田さんが持っている不満は,そのまま私自身の不満でもあるわけです。


 さすがにオランダにまでは足を運んだことがないので,何とも言いようがありませんが。


 いわゆる,シューボックス・スタイルのイングランドフットボール・スタジアムが「造船所」とか「鉄工所」に見紛うようなスタンド構造になっているのは,防風性を意識した部分もあるだろうと感じます。イングランドはジワッと染み入るように寒いような感じがしますが,案外風が強い時期も多く,冬には「風冷え」が見事に生じる土地柄だったりします。そのために,雨を避けるための屋根も重要だったりするけれど,スタジアムを吹き抜ける風を避けるための防風板も同じように重要,ということのようであります。


 とは言え,このアイディアを無条件に落とし込むわけにもいかないな,と思う部分はありまして。お蕎麦屋さんのお品書きに「冷やしタヌキ」が追加されている時期のことです。


 「高温多湿」ですね。


 この時期を考えると,一概に防風性を高めた競技場設計を正解とは言い切れなかったりするように思うのです。スタンド上端と屋根を繋げてしまえば,恐らくこの時期には「蒸し風呂」という評価を受けてしまうはずです。そして当然,ピッチ・コンディションを考えればピッチに巧く日光や風を引き入れる工夫が必要になってきますから,恐らく「通風性」を意識した設計へと振っているのだろうと想像します。


 その通風性を犠牲にせずに,冬の環境をもうちょっと快適なものにできないものか。


 単純なシロート視点で言えば,屋根とスタンド上端の隙間を巧みにコントロールする,「導風板」を無段階で開閉可能なものにする,なんてアイディアが良さそうだな,なんて思うのであります。特に,ラグビーフットボールで使用する可能性があるスタジアム,その関係者の方には,防風板か防風効果もある導風板,お考えいただけるといいのですが。