商品価値。

もうちょっとハッキリした言い方をすれば,「フットボール・ビジネスの源泉は何に求められるのか?」ということでしょうかね。


 フットボールをビジネスという側面で見れば,どれだけピッチ上で展開されている“フットボール”という商品を高く顧客に対して販売するか,ということが最も重要な目標として設定されるはずです。プリンシパル・パートナーなどに代表されるスポンサーは最も重要な大口顧客(当然,BtoBにおけるクライアント)ということになります。


 ですが,もうひとつ。


 一般顧客に対する目線,BtoCな発想も同時に重要であるはずです。


 ブランドの重みを作り上げているのは,BtoBでの関係ではなく,実際に商品を手に取り,評価してくれる一般顧客の皆さんであるはずですし,提供している商品の魅力が落ちてしまえば,彼らの評価が落ちてしまうのは当然であります。それはすなわち,長きにわたって築き上げてきたブランドの威光を自ら傷つけることと同じことになりはしないか。


 となれば,フットボール・ビジネスの中核に置かれなければならないのは,「チームの強さをどのようにして維持,発展させていくのか」という点にあるはずです。商品価値の中核は,チームの強さにこそある。チームが強さを持っているからこそ,一般顧客からの信用が維持でき,BtoBの関係を良好に維持することができる。間違っても,その逆はあり得ない。


 かつて,浦和のボスであった犬飼さんが就任当初明確にしたことはこのことだったはずです。


 クラブとしての魅力を端的に表現するのは,強いチームだ,と。強いチームがすべての始まりであり,源泉だと。これは,JFAと代表チームとの関係にも十分に当てはまる話だと,私は思っています。


 マーケティングが悪いわけでもなければ,セールス・ディビジョンが悪いわけでもない。最も問題なのは,「強いチームを追い求める」という,クラブ,FAならば持っていて当然のはずの前提が見えてこないこと,その点にこそあるのだろうと思います。大住さんのコラム(サッカークリック)では,強化と事業という言葉を使っていますが,本当は強化の場面をしたたかに事業(ビジネス)としても使えるようになることが求められているのではないか,と思ったりします。