対大分戦(06−21A)。

ポゼッションを強く意識している組織戦術であればこそ,「距離感」がバイタルなのですが。


 その距離感が,連戦を通じて失われてきているような印象があります。
 そういう意味では,今節は「悪い方向で」2005スペックへと逆戻りしてしまったような感じであります。


 以前も書きましたが,リトリートを比較的強く意識しながら,ポゼッションをベースとしながら攻撃を組み立てていくという“2005スペック”の方向性は決して間違っていないと思っています。単純に守備を仕掛けていくポイントを浅く設定しているのか,それとも深く設定しているのか,という違いだけだと思っているからです。
 ということは,選手間の距離感はプレッシングを前方から厳しく掛けていくときと変化があってはならない(=求められている要素に大規模な変更などないし,あってはならない),ということを意味するはずです。
 にもかかわらず,「守備ブロックが最終的に相手の攻撃を受け止める」という部分だけに意識が飛んでしまうために,結果として中盤が攻守両面において機能を落としてしまう。ディフェンス面で言えば,相手ボール・ホルダーに対するファースト・ディフェンスが曖昧な状態になってしまうために,守備ブロックにかかる負担が重くなってしまう。また,攻撃面を考えると前線へのバックアップに入るタイミングがどうしても遅くなってしまうために,前線を厳しくチェックすることから攻撃の起点を構築しようというゲーム・プランを持っている相手に対して,絶好のポイントを提供してしまうことになる。“カウンター・フットボール”に対する弱点を露呈することになるわけです。


 2005シーズンの立ち上がりで露呈したアンバランス,その図式にしっかりと嵌ってしまったのが今節だったか,と感じます。


 ただ,今節においては戦術的なピクチャーにズレを生じた(=選手の意識に微妙な齟齬が生じた)こととともに,連戦によってネガティブなイメージをしっかりとクリアするだけの時間がなく,どこかに生じていた微妙なズレを結果として大きくしてしまったのではないか,ということも感じます。
 結果として,前線〜最終ラインの距離が必要以上に引き延ばされてしまうことになる。これでは,浦和のストロング・ポイントをピッチに表現することは難しい。しかも,相手はここ数節結果に恵まれていないとは言え,非常にコレクティブなフットボールを展開する,戦術的な理解度の高いチームです。ファイナル・スコアは2−1と最少得点差ではありますが,数字以上に「抑え込まれた」敗戦だと感じます。


 「前」への意識を強く持つ。


 決して悪いことではないし,必要不可欠な要素だとも思います。
 ですが,これは攻撃ユニットだけで成立する話ではないことも確かです。前線が前掛かりになっているときに,どれだけ後方が押し上げてやれるのか,という部分が,「前掛かり」をフィニッシュに直結させるためには重要でしょう。


 「意識」という点で,同じピクチャーを持っているようには思えなかったゲーム。
 そのファクタとして「連戦による疲労」があったのだとすれば,「疲労していない選手」を積極的に使っていく,という決断もなければならない。
 リーグ戦を考えると,今回に限らず「総力戦」が求められる時期が必ず訪れます。そのときに,固定メンバーで強引に押し切るだけでなく,チーム全体で勝ち点3を奪取するという強い姿勢を取れるように,今節の敗戦を十分に活かしてほしいと思うのです。