主客転倒を直すために。

携帯版のスカパー!さんで掲載されている木村元彦さんのコラムでありますが。


 我らが指揮官が,イビツァさんが代表監督に就任したことを歓迎した理由を,間接的であるにせよ書いてくれているような気がします。


 代表チームは,各クラブから選手を借り上げることで構築される。最強のパッケージを作り上げるためには,必要なステップであることも理解しています。
 いますが,選手たちを必要以上に消耗させることを主目的にしているかのようなスケジュール設計が何をもたらすのか。浦和を追いかけている人間からすれば,チームのフレームをごっそりと抜かれるばかりか,コンディション低下というリスクを背負うわけですからハッキリ言って不満です。彼らフレームのコンディション低下が,チーム全体のコンディション低下を誘発する恐れがあるし,現実に低下していますからね(十分にこんな事態が想定されるのだから,指揮官にはスターターを固定する以外の選択肢も示してくれ!と思うのですが,それはそれとして)。JFAの担当者には,真剣になってスケジュール設計を考えてもらいたい,と心底思いますね。


 もうちょっと中立的な視点に変えてみても,結論はほぼ同じでしょう。


 8月の4連戦にしても,代表のスケジュールがもうちょっと機能的に設計されていれば回避できていたかも知れません。そして,この連戦の影響はクラブのみならず,代表チームへも間違いなく跳ね返る。しかも,その跳ね返るかも知れないゲームはインターナショナル・フレンドリーなどではなく,国際Aマッチの公式戦である。なぜ,重要なゲームを,消耗戦を戦い抜いたあとに設定するかのようなスケジューリングをするのか。


 2002年にしてもセカンド・ラウンド,その入口に立ったに過ぎないし,ましてやトロフィーを現実に争う段階などではない。アジア・チャンプという肩書きと,世界との勝負権には隔たりがある。どこから考えようと「挑戦者」だし,自分たちが挑戦者であるという意識を薄れさせた時点で(なくせば,論外でしょう。),勝負権は失われるというのが真剣勝負の世界ではないか,と思います。


 たとえ何かを成し遂げたとしても,その時点で結果は過去へと変わるし,将来も同じ結果が得られるという保証はどこにもない。


 そういうシビアさを基盤として,中長期的な目標が策定されているべきではないか。当然,効果的な強化施策を実際に動かすためにはバジェットが必要だけれど,そのバジェットのために本来の目標がおざなりにされては,主客転倒と言うほかない。


 本来意識しなければならないのは,“どう国際競争力を高めていくか(どういう方向性で「勝ちに行く」ための方法論を作り上げていくのか)”という1点のみであり,それ以外にはあり得ない。にもかかわらず,代表という存在の「表面的な商品価値」にばかり目を向けている。実質が伴わないところに,ブランドの信頼性は築きようがない。


 イビツァさんは,パートナーの重要性に配慮しながらも,プライオリティを明確にしたいという意思を持っているのだろうと思います。“スター・システム”がどうだとか,プリンシパル・パートナー,エキップメント・サプライヤーや代理店がどうだとかという話は極論してしまえば些末な(テクニカルな)話で,「強さを徹底して追い求める」ことこそがファースト・プライオリティなのだ,というシンプルな,それだけに忘れられやすい原則論をあらゆるチャンネルを通じて発信していく(し続けていく)つもりなのではないか。そして,同じような懸念を抱いていただろう指揮官が,恐らくはギドだった,ということなのかな,と。FA(より明確に言えば代表事業部)との関係が本来あるべき関係へと戻ってくれるかも知れない,という期待を込めて,ギドはイビツァさんの就任を歓迎したとも見えるのです。


 “Right Track”に再び乗るまでにはちょっと時間が掛かるかも知れないけれど,イビツァさんのコメントや,ギドのコメントを受けて木村さんが主張することは間違いなく正論です。その正論が通るようになることこそ,本末転倒を本来の姿に修正するためには大事だろうと思います。