最適解を感じられるシーズンに。
ラグビー・トップリーグも開幕することですし,ひさびさに楕円球方面のことを書いていこうかな,と。
さて,タイトルに掲げたフレーズ,結構書いていることですよね。
と言いますか,ほぼ常套句と化しています。ごく大ざっぱに言ってしまえば,数学や物理の世界での解答と,社会科学(経済学であったり,法律学であったり)での解答は,自ずと性質が違っていて,フットボールの世界では社会科学的な「条件次第で得られる回答は違ってくる」という考え方の方が合っているのでは?ということを「最適解」という言葉に込めているわけです。
ですが,ラグビー・フットボールでは自然科学的な「正解」を追い求めようとしているように感じられるのです。あたかも,「勝ち点奪取」に向けた守備ユニットや攻撃ユニットの構築,その方程式が提示されているかのような感じがするわけです。どこか,おかしいように感じられます。
大前提から考えてみますと。
各クラブが抱えている戦力に,まったく違いがない,などということがあるでしょうか。
大まかに相似形を描いているとしても,ディテールを考えればまったく同じということはあり得ず,必ず武器になり得る「突出した部分」を持っているはずです。例えば,クラブがその伝統として強固なFWを誇っていたとすれば,やはりパワフルなFWが集まってくるだろうし,BKの展開力を主戦兵器としてきたクラブならば,新戦力を補強するに際してどこか,いままでのイメージを増幅しようとするはずです。その突出した部分をどう周囲が活かすのか,というのが組織戦術を考える大前提として提示されなければならないはず。ブレイブルーパスにしても,最初から昨季のようなパッケージを構築していたわけじゃあない。高い機動力を持っているバックスのパフォーマンスを最大限に引き出すための戦術パッケージを考える中から,フォワードへの戦術的な要求がハッキリと見えてきた。その延長線上に昨季のパッケージがある,と考えるべきでしょう。
ならば,もっと「飛び道具」,いつもの言い方をすれば,戦力的重心やストロング・ポイントを意識させる,クラブごとにワンオフで設計された組織戦術が見えてきて良いはずです。
その意味で,2006〜07シーズンのラグビー・トップリーグは「クラブごとの最適解」を再認識できるのではないか,とちょっと期待しているのです。こちらの記事(asahi.com)で
という分かりやすい目標を掲げてくれた清宮克幸・サントリー・サンゴリアス監督や,コカ・コーラウェスト・レッドスパークスをトップキュウシュウから引き上げた向井昭吾さん,今季トップリーグへと復帰を果たした日本IBMビッグブルーを率いる大西一平さんなど,個性的な指揮官がそろっているような感じがします。彼らがここ数季,盟主として君臨している東芝府中ブレイブルーパス,また,昨季リーグ戦上位に付けているNECグリーンロケッツや三洋電機ワイルドナイツ,そしてトヨタ自動車ヴェルブリッツに対してどういう戦いを挑んでいくのか。
当然,ディフェンディング・チャンプを率いる薫田真広監督はさらなる進化を考えてくるだろうし,高岩監督(NECグリーンロケッツ)や宮本監督(三洋電機ワイルドナイツ)も虎視眈々とスタンディングの頂上を狙っているはずです。彼らの知略が存分にフィールドで表現されることを期待しているわけです。
クラブの個性が真正面からぶつかり合う中で,ラグビー・フットボールの魅力を存分に表現するシーズンになってほしい。ラグビー・フットボールにも魅力を感じている人間としては,そう思うわけです。