ツール・ド・フランス。

なかなかメジャーにならない競技ですけど。


 ヨーロッパ(特に大陸)では,自転車競技と言えばロードレースでありますな。


 WRCなどでもそうですが,コース脇では観客の皆さんが熱狂的な声援を送っていますし,路面を見ると選手に向けたメッセージがギッチリと書き込まれている。そんなロードレースで,最も有名なのが“ツール・ド・フランス”だろうと思います。今回はちょっとツールのことなど。


 ニュース映像などですと,レース最終日,シャンゼリゼ大通りを疾駆する選手たちの姿がよく使われます。コンコルド広場方向からシャンゼリゼへとアプローチしていくわけですが,その映像を見ると,シャンゼリゼが緩やかな起伏を持っていることに気付きます。その緩やかな起伏が,最後のスプリントの舞台になる。絵にならないわけはないのですが,個人的には違う部分に魅力を感じていたりします。


 選手の総合力が厳しく問われる,という部分では,ツール・ド・フランスは非常に過酷なロードレースであると思います。タイムトライアル(TT)・ステージではスプリント能力が問われるし,山岳ステージでは強靱な心肺能力,フィジカル・ストレングス,そして高速でのヒル・ディセントを可能にするだけのバイク・コントロール能力が問われる。接地面積だけで言えば,モーターサイクルどころではないレーシング・バイクを操り,TVバイクでも簡単には追走できないような速度域にまで達するのですから。
 すべての要素を高い次元でバランスさせていなければ,総合順位を争うことはできない,非常にシビアなコンペティションがツール,という見方でも良いと思います。その意味で,マイヨ・ジョーヌ(Le maillot jaune)の重みはすごいものがあるな,と感じますし,かつてマイヨ・ジョーヌを独占してきたミゲル・インデュライン選手やランス・アームストロング選手の持っていたパフォーマンスは正直,想像の域を超えたところにあるような感じがします。


 また,スペシャリストに対してもしっかりと評価してくれる,という競技形態が良いな,と。


 総合順位を争うような,バランスの取れたパフォーマンスを持っているわけではないけれど,スプリント能力ならば十分に勝負権を持っている選手,あるいは山岳ステージに圧倒的な強みを持っている選手たちもまた,特別なジャージという“栄誉”に浴することができる。マイヨ・ヴェール(Le maillot vert)はスプリンターに対して贈られる特別なジャージですし,マイヨ・ブラン・ア・ポア・ルージュ(Le maillot blanc a pois rouge)は,山岳ステージを制した選手に対して贈られます。


 いまでこそ,大会スポンサーのロゴ・マークが目立ってしまいますが,この3つのジャージはツールの過酷さ,そしてそのツールで名を刻むという栄誉を端的に示すものかな,と感じます。


 ・・・と,まとめようと思っておりましたが。


ロイターさん配信の記事(Sports@nifty)を読んでビックリしましたね。


 過去のもの,と思っていた話がいまになって,ですからね。


 ドーピング問題と言えば,やはり1998シーズンのことを思い出します。


 山岳スペシャリストとして有名だったリシャール・ビランク選手。確か,マイヨ・グランペール(Le maillot grimpeur。“マイヨ・ブラン・・・”の別名であります。個人的には,こっちの表現の方が好きですね。)を6回受賞しているはずです。そんな輝かしいキャリアを誇る選手が所属していたチーム・フェスティナは,ドーピングに組織的に関わっていたことで除名処分を受けています。ビランク選手自身も,後にドーピングをしていたと言っていたように記憶していますが。


 そんな過去をちょっと,イヤでも思い出してしまうわけですよ。


 とは言え,まだ検査があると言いますし。ランディス選手の立場がどうなるか,はともかくとして,最高峰のロードレースなんですから,フェアな環境で勝負してほしいものでありますな。