対大分戦(06−15)。

相手は間違いなく,徹底的なスカウティングを通じてゲーム・プランを立ててきた。


 ミッドフィールドではボール奪取を強く意識する,と言うよりもむしろパス・コースを限定するようなプレッシングを仕掛けていく。そして,1トップにボールが収まるタイミング,あるいは1トップから配給されたボールに対して厳しいプレッシャーを掛け,そこからロングレンジ・パスを前線,アウトサイドへと繰り出す。


 端的に言ってしまえば,少ない手数でボールをペナルティ・エリアへと持ち込む。そんなイメージを持っていただろうことが想像できます。


 そして,そんな戦術イメージにはまりかかった時間帯も確かにありましたが。
 何とか凌ぎきった,その結果としての1−0だったような感じがします。


 前後半ともに,積極的に立ち上がりから仕掛けていったのは浦和でした。
 ですが,その仕掛けが分厚さを欠いてしまった。


 相手のカウンターを警戒してか,全体のバランス,と言いますか意識が最終ライン方向に偏ってしまっていたような感じがします。1トップとシャドー・ストライカー,そしてディフェンシブ・ハーフとの距離感がちょっと遠目になってしまっているために,1トップにボールを預けた後のアクションがスムーズに引き出せない。また,ピッチサイズを最大限に活かす形でボールを動かせていないために,積極的なポジション・チェンジの中から相手守備ブロックを揺さぶっていく,という攻撃イメージが影を潜めてしまった。
 1トップがボールを収める瞬間,あるいはその先のタイミングを相手守備ブロックは狙ってきた。ならば,シャドーやディフェンシブ・ハーフがしっかりとした距離感を保ちながらサポートに入らなければ攻撃に厚みを持たせることはできないのだけれど,今節は“パス&ストップ”に陥っている時間帯が多かった。


 そのために,リズムをうまく構築できているような印象が薄かった。
 それだけに,パワープレーに走ってしまうのではないか,という懸念もあったし,その懸念が現実のものとなれば,それは相手のゲーム・プランに完全に乗せられる,ということも同時に意味する。
 そんなことを考えていたが,ハーフタイムを挟んでの戦術交代は,チームとしてのダイナミズムを取り戻す方向性でのものであり,ともすればセンターに偏りがちだったボールが,再びアウトサイドにまでしっかりと展開されるようになり,相手守備ブロックをしっかりと横方向に引き出せるようになっていく。


 そして,先制点(決勝点)奪取の場面では,本来浦和のミッドフィールドが見せていて良いはずの積極的なプッシュ・アップが見られた。ディフェンシブ・ハーフがイニシャル・ポジションから積極的に攻め上がり,攻撃面を支える。シンプルなパス・ワークと積極的なプッシュ・アップがかみ合うことで,効果的なフィニッシュへと結び付く。


 ・・・今節は,なかなかギアチェンジがうまくいかなかった,という感じであります。


 ディフェンス面では確かに高い安定感を感じますし,その印象は今節においても変わるところはない。のでありますが,最終ラインが相手の攻撃を受け止めてからの動き方が,いささか重かった。ハーフウェイ・ライン付近でのポゼッションから,ペース・アップを仕掛けていくとしても,1トップとシャドー・ストライカーだけが攻撃のリズムを作り上げていくわけにはいきません。ディフェンシブ・ハーフ,そしてアウトサイドがしっかりと機能することではじめて,浦和が本来持っているはずのスタイルがピッチに表現されるはず。


 確かに「勝ち点3」という結果を奪い取ったことは収穫だけれど,全体がしっかりと押し上げていくことからのギアチェンジ,以前タイトルに使ったフレーズを使うならば,“Change of the pace”をチームとしてもっと強く意識しておかなければならないし,パス&ムーブというシンプルな原則を再徹底しておかなければならないのではないか。
 今節の対戦相手は,なかなかにコレクティブですし,選手個々の戦術理解度も高い。そういう部分もあって,いまのチーム・パッケージが抱えている課題をあぶり出すかのようなゲームになった,というようにも感じます。