戦い抜いたプレミアム。

純然たるレーシング目線で見ると,ハイブリッド・システムの根幹であるバッテリを,どれだけ良いコンディションで維持し続けるか,という部分が鍵を握るだろうな,と思っておりました。


 また,冷静に参戦体制に関するニュースリリース(トヨタ自動車株式会社)を読み返してみると,レーシング・マシン,特に耐久レースを意識したマシンならば最も重要であるはずのトランスミッションに関して,何らの記述もない。ということは,(パドル付きだったと記憶しておりますし,コントロール・ユニットは恐らくリプログラミングされておりましょうが)ツルシのATをそのままレース・トラックに持ち込んだということになる。そう考えていくと,今回の完走,かなりの快挙だとワタシは思うです。



 ということで,今回は十勝24時間耐久に参戦,総合17位で完走を果たしたデンソー・レクサスGS450hのことを,サードさんのレース参戦レポート(サード・オフィシャル)を参考に書いていこうかと思っています。


 まず驚いたのは,開発期間の短さです。


 サードの代表である加藤さんは,レポートの中で「ほぼ半年くらいの開発期間」という表現を使っておられます。このベースとなったGSハイブリッドが正式にリリースされたのは,トヨタのリリースをチェックすると3月16日です。となると,量産型ファースト・ロット,あるいは最終型プロトタイプがロールアウトした段階から今回のレース・プログラムは動き出していたようです。それにしても,実質半年でレーシング・フィールドでのポテンシャルが未知数なハイブリッド・システムを,24時間耐久でしっかりとレーシングし続けられるだけにまで煮詰めてきた,というのはホメて良いと思います。


 次に驚いたのが,ハイブリッド・システムと大きく関連するATの耐久性であります。


 確か,FRという駆動形式に対応したハイブリッド・システムは今回が初めてであり,トランスミッションも無段階変速式のハイブリッド専用だったかと思います。もちろん,ATフルードを積極的に冷却するディバイスなどを装備していたのでしょうけれど,レーシングに対応できるだけの耐久性を持っているのかどうか,という部分は正直,イメージすることができませんでした。
 ですが,ご紹介したレポートを読む限りにおいて,ミッションには大きな問題は発生しなかったようであります。かなりキャパシティの大きなミッションであるということが証明された,ということになりましょうか。


 今回の成功を通じて,トヨタはハイブリッド・システムがレーシング・フィールドで持ち得るであろうポテンシャルに自信を深めたものと思います。海外には,十勝のような24時間耐久レースがあります。ニュルブルクリンクや,スパ・フランコルシャンでありますが,これらのレースに持ち込んでもらいたいな,と感じます。また,最終的には同様のシステムをLMP1,あるいはLMP2マシンに搭載してアウディ・スポールやプジョー・スポールの有力な対抗馬としてサルテに,というのも期待したいところです。


 将来に期待を持たせる,面白いレーシング・マシンだなと感じます。