降格処分。

最大の被害者は,言うまでもなく長くクラブを追いかけ続けてきたサポータだろうと思います。


 そして,ほかのクラブのサポータだって,自分たちのリーグ戦,その権威がごく一部の連中のおかげで貶められたわけだから,被害者だと言えるかも知れません。


 恐らくこれだけのことでお察しのことでしょうが,今回はこちらの記事(SANSPO.COM)をもとに書いていこうと思っています。


 まず,共同さん配信の記事を読んでみますと,今回の処分内容は当初FIGC(イタリア・サッカー協会)調査スタッフが請求した内容に対して減軽された内容となっていますが,それでも相当なインパクトを与えるものであるように思います。2部リーグへの降格や,欧州カップ戦出場権,優勝の剥奪などは想定できたものの,勝ち点を最初から減点した状態から2006〜07シーズンを迎えるように求める,というのは非常に厳しい内容だと思います。とは言え,疑惑が表面化した段階でイタリアン・フットボールに対するネガティブな反応は相当なものがあったでしょうから,「一罰百戒」的に厳しい対応をとることでほかのクラブに対しての抑止効果を狙うと同時に,失われてしまった信頼を取り戻す第一歩としてスタンスを明確にする必要があったのだろうと想像します。


 今回の問題で,最も違和感を持ったのはクラブ首脳が,クラブが持っているパフォーマンス,あるいはポテンシャルに対して100%の信頼を置いていないのではないか,という部分であります。


 敢えて弁護するような目線で考えてみれば,フットボール・ビジネスが巨大化していく中で,欧州カップ戦に出場し続け,決勝トーナメントに進出することでビッグクラブとしてのプレゼンスを維持すると同時に,UEFAからの莫大な分配金によってクラブ・マネージメントをファイナンスの面で安定させる必要があるのかも知れません。


 しかし,フットボールを単純にビジネス的側面だけで考えるべきではない,と思います。


 フットボール・ビジネスの原点は,「スタジアムに足を運んでくれるひとを大事にすること」が原点だろうと感じます。それは単純に,ホスピタリティを充実させることだけにとどまらず,チームが安定した成績を収め続け,クラブが自分たちとともに成長路線に乗っていることを実感してもらえることだ,とも思っています。クラブとサポータ,ファンが良好な関係にあり続けることで,パートナーとの関係が良好なものとして意識され,結果としてクラブのマネージメントが安定していく。恐らく,ショートカットはできない話だろうと思うのですが,今回の問題を見ていると,クラブ首脳はクラブ・マネージメントの原点をどこかに置き忘れ,フットボール・ビジネスの厳しい現実だけを意識しながらショートカットばかりを探していたような感じがします。


 となれば,クラブに厳しい責任が課せられるのは当然のこと,と感じます。処分についての論評が各方面から出てきていることがこの記事でも紹介されていますが,どこかフットボールがもたらす「経済的なメリット」ばかりが強調されたり,我田引水的な香りがしたり,本来的な,リーグ戦が持っていたはずの権威をどう取り戻すのか,という視点が欠けているのは残念な限りです。


 フットボールを取り巻くネガティブな要素があるのなら,徹底的に吐き出させる絶好のチャンス,というくらいに考えていた方が,長い目で見ればいいのかも知れない,と私は思っています。