All Star Game.

オールスター・ゲームというと,やはりMLBオールスター・ゲームがイメージされます。


 ナショナル・リーグアメリカン・リーグを代表する選手が,1ゲームだけのためにスタジアムに集まる。確かに贅沢な感じはします。また,開催地にとってはオールスター・ゲームのベニューとして指名されるのは相当な名誉なのでしょう,シーズン開幕当初から積極的なプロモーションを展開しているし,ゲーム当日のフィールドは,芝目を特別なものへと変更したり,ダッグアウト前にグラフィックを描いたりと「オールスター仕様」のスタジアムへと変貌を遂げる。プレステージの高さを感じます。


 ですが,ちょっと冷静に考えてみると,野球だからこそオールスター・ゲームという形が破綻なく成立するんだな,とも思うのです。


 アメリカン・スポーツですと,基本的にオールスター・ゲームがあるのですが,NFLやNHLのオールスターは,MLBオールスター,あるいはチャンピオン・チームを決めるスタンレー・カップスーパーボウルプレステージに比較すると存在感がそれほどあるとは思えない。結局,どれほどパフォーマンスの優れた選手たちを集めようとも,“コンビネーション”が大きな意味を持つチーム・スポーツでは魅力的なゲームをつくり出すことはできない,ということなのではないでしょうか。


 アメリカン・フットボールは,戦術的な緻密さが求められる競技だと感じます。守備,攻撃の局面に対応するフォーメーションと戦術が巧みに組み合わされることで,攻撃,守備を組み立てられている。となると,チームがしっかりとパフォーマンスを引き出せるようになるまでに,ある程度の熟成期間が必要になるはずです。同様に,アイスホッケーも展開が非常にスピーディですから,パックをホールドしていない攻撃陣がどういう動き方をしているか,という部分で明確なイメージがないと,相手の鋭いディフェンスを回避しながらパスワークを展開することなどできない。戦術的な熟成がしっかりと求められる競技だろうと思うのです。


 となると,フットボールもなかなかオールスター・ゲームとの親和性が高くはない競技,ということになりそうです。


 ひとりひとりのパフォーマンス,あるいはポテンシャルが高くとも,戦術的なバインドがしっかりとかかるだけのイメージが共有されなければ,チームとしての連動性は生まれてこない。野球のように,チームスポーツでありながら個人での勝負の局面へと容易に分解できるような競技ではない。確かに野球にあっても“スモール・ベースボール”というアイディアに代表されるように攻撃,守備両面において組織性がしっかりと求められてもいるが,競技の本質として,「1対1」という側面が強いことは確かだろう。そういう,「1対1」が鮮明に描き出せるような競技ではない。チームでは大きいならば,ユニットという表現で良いかも知れない。そのユニットがフルに機能しなければ,局面を打開する個人のパフォーマンスが100%引き出されることはない。ハッキリと言うならば,ひとりひとりのパフォーマンスを集積することによって,単なる積算値よりもはるかに大きなパフォーマンスを引き出すことが求められる競技だろうと考える。チームとして最強,というのと,最強のパフォーマンスを持った選手の集合体,というのは似ているように見えて,実際には大きな違いがあるように思う。


 リーグが立ち上がった当初は,リーグ自体を積極的にプロモートするためにもオールスター・ゲームを開催する意味もあったかも知れない。しかし,オールスター的な発想が代表チームへと拡がっているようにも感じられるいまは,オールスターを開催することのデメリットを考えるべき時期に差し掛かっているのかも知れない,と考えたりもします。


 確かに,ひとつの「お祭り」としては面白いのかも知れません。


 ですが,フットボールという競技の面白さをリーグ戦(=ある意味では,チームとしての熟成度を真正面から競い合う真剣勝負)を通じて感じてくれるひとが多くなれば,いずれはその役割を終えるのかな,と感じる部分もあるのです。