ゴーカート・フィーリング。

ひさびさに,屋号関係ど真ん中の話など。


 タイトルに掲げた「ゴーカート・フィーリング」。具体的にどんなイメージを持たれるでしょうか。個人的に感じるのは,例えばこんな感じです。


 路面状況をかなりダイレクトに伝える乗り心地を持ち,あまり左右方向に揺れ動く(=ロールが多い)でもなく,もちろん前後方向に大きく姿勢変化する(=ピッチング・モーションが大きい)でもない。


 もちろん,乗っているひとにはハッキリ分かるわけですけれど,案外外から見ているひとにも分かりやすい動き方だと思います。そして,その動き方をしっかり受け継いでいるのが,「ミニ」というブランドです。アレック・イシゴニスさんを中心として,いまでは自転車でも知られるアレックス・モールトンさんなど優秀なエンジニアが開発に携わった“クラシック・ミニ”と呼ばれるオースチン・セブンから,BMWが開発を担当している現在の“ミニ”であっても,どこかDNAと言うのでしょうか,似たような感じを持っているように感じます。国産コンパクトと比較すると,ステアリングのダイレクトさは,はっきり言って比較にならない。手首をスナップさせる程度の動きでもノーズを動かすことができる,でありながら車体が大きく姿勢を変化させることがない,そんな感覚を持たせてくれるようなライド感を持っています。


 ただ考えてみれば,何となく納得できるような気もします。クラシック・ミニからBMWミニへと引き継がれていったライド感は,UKという土地柄が育んだもののようにも感じるのです。


 UKの道路環境を特徴付ける最も分かりやすい要素が,“ラウンドアバウト”と呼ばれるロータリーだと思います。絶対的な交通量が少なく,信号待ちの時間がもったいない,というすこぶる現実的な理由が普及した背景なのでしょうが,このロータリーはUKのひとたちがクルマに求めるものを決定付けているように思います。


 それまで結構なスピードを出していたのを,ゆっくりと減速しながらラウンドアバウトに近付いていきます。自分の右側を確認し,ラウンドアバウトを走っているクルマがないことを確認すれば,ラウンドアバウトへとクルマを進めてもオッケーです。必ずしも,「静止」する必要性まではありません。そこからは自分が目指す出口までクロックワイズな定常円旋回をするわけです。そして,目指す出口の手前で左へ出ますよ,という合図を出しながら脱出,という感じであります。


 これ,乗り心地を重視したクルマだと結構苦痛な時間だろうと思います。


 クルマは間違いなく左方向に荷重がかかるわけですよね。左側が沈むというか。あまりに沈み込みすぎると,気持ちよくラウンドアバウトで運転できなくなってしまうわけです。ステアリングを切った角度,舵角よりもクルマが外側を回ろうとする,いわゆるアンダーが強すぎても,逆にクルマが内側に切れ込もうとするオーバーが強すぎても,定常円旋回を快適にこなすことは難しい。ニュートラル,あるいはちょっとだけアンダー傾向,アクセルワークでノーズを内側に振っていくようなセッティングがいい,ということになるわけです。加えて言えば,市街地からちょっと離れると「酔っぱらいが道を造った」と言われるほどに曲がりくねった,しかも起伏まで付いているA級国道とは思えないような国道がかなりあるわけです。となると,乗り心地には少々目をつぶってでも路面追従性を上げたセッティングを好むようになる。どうやら,そういうことのようです。


 ミニはBMWがコントロールしているブランドですから,いずれ高速安定性の高いミニが出てきたりするのかな,と感じないでもないですが,製造拠点がオックスフォードにあり,偉大なる先輩のイメージを上手に現代的なスタイリングと融合させたスタイルを持っている以上はあまり大きくライド感を変更するわけにもいかないでしょう。


 工業製品であっても,やはり周辺環境には大きく影響される。当たり前のことですが,そんなことを改めて感じさせる話かな,と思います。