ルイ・ヴィトンカップのようなリーグ戦。

ルイ・ヴィトンカップ」。もちろん,フットボールのことではありません。


 IACC級レーシング・ヨットを使った世界最大規模のマッチレースであるアメリカス・カップ,その挑戦艇を決める一連のシリーズをスポンサードしているのが,かのルイ・ヴィトンでして,挑戦艇決定戦を「ルイ・ヴィトンカップ」というわけであります。


 このルイ・ヴィトンカップ,相当な長期戦です。


 まず,すべての挑戦艇が総当たり戦を展開するのが第1ラウンドであります。このラウンドが終了すると,ちょっとしたインターバルがあります。各シンジケートはこのインターバルを利用してレーシング・ヨットのチューニング,場合によっては大規模な改造に入ります。そのため,各シンジケートの艇庫はちょっとした「ファクトリー」のように大規模なものなのです。


 例えばニッポン・チャレンジが初めてアメリカス・カップに参戦した1992年のことを思い返してみると,すこぶる順調にラウンドをこなしているシンジケートと,うまくヨットを熟成しきれないシンジケートでハッキリとした差があったように記憶しています。最終的に挑戦艇となったイル・モロ・ディ・ヴェネチアは,やはりパフォーマンスを決して下げることなく各ラウンドをこなしていきましたし,対してニッポン・チャレンジは風下マークに向かう「ストレート」を強く意識した船体設計だったためか,風上マークに向かっていくときのボート・スピードに決定的な問題を抱えていたのだとか。当時のコースは複雑なものでしたが,基本的にヨットレースは風上と風下,2つのマークを回航する形で争われます。つまり,レースの半分は艇を斜めに向ける形である,と言えるのですが,このときの速度が上がらなかった。勝負がシビアさを増していくにつれて,どれだけ素早く艇の改造がこなせるかなど,シンジケートの総合力が問われるようになっていく。「ラウンドロビン」(総当たり戦)を採用するなど,やはりどこかでフットボールと似ている部分があるような感じがします。


 ・・・で,長い前置きを経てフットボールに話は入るわけです。


 「遠くの祭り」の影響で結構なインターバルに入るリーグ戦,ちょうどルイ・ヴィトンカップのようだな,と思ったわけです。当初のプランとは大きく違ったリーグ戦順位に甘んじていたり,順位的にはある程度の達成度はあるものの,肝心な部分で勝ちきれずにリーグ上位をうかがうまでには至らないなどの状況に置かれているクラブも,言ってみればニッポン・チャレンジのような感じでしょうか。


 この中断期間をどれだけ有効にチーム再構築に使えるか,がリーグ戦順位下位に沈んでいるクラブにとっては至上命題になるだろうし,上位に付けているクラブにとってはさらなる戦術的な熟成,あるいはチーム全体のボトミング・アップを図るための重要な時期と位置付けているものと思います。


 リーグ戦としてはちょっと不思議な感じもするけれど,リスタート時にどういうクラブ像が見られるか,というのも結構面白いような感じがします。